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【番外】舞踏会にはペット同伴で(7)

翌日。 俺が出社すると、いつも通り早野さんは既に仕事を始めてた。 服装も元に戻って、ぎりっぎりオフィスカジュアルのラフなやつ。 黒縁メガネも復活してる。ちょっと残念。 俺は向かいの空席に腰を下ろして、デスクに頬杖をつき、ディスプレイの合間から早野さんを眺める。 「早野さーん、もうスーツ着ないの?」 「あー?……あたりめぇだろ……」 手を止めずに俺を一瞥して、早野さんはまた目の前のディスプレイに視線を戻した。 「似合ってたのにー。かっこよかったですよ?また見たいなー、早野さんのスーツ姿」 「ふん。ばかやろ」 事務室の入口が開く音がして、高橋くんが「おはようございます」って挨拶するのが聞こえた。 ふと見ると、高橋くんと一緒に西嶋さんが出社してきてた。 あ、どかなきゃ。ここ西嶋さんの席だ。 そう思って立ち上がったけど、なぜか西嶋さんは今俺がいる列じゃなくて、ひとつ奥の列を歩いてきてる。 「神崎、バッグそこに置いといてくれ」 机越しにビジネスバッグを俺に寄越す。 「へ、あ、はい」 西嶋さんはビジネスバッグの他にもずいぶん大きめのバッグを持っていた。 「行くぞ、早野」 言うなり、西嶋さんは早野さんの腕を取ると強引に引きずって連れ出そうとする。 「は?いや、ちょっと、何すんだよ!おい!」 抵抗しながらも、否応なしに連れていかれる早野さん。 あっという間に事務室から引きずり出されていった。 早野さんがいなくなっちゃしょうがないから、俺も自席に戻って仕事を始める。 西嶋さん、早野さんをどこにつれてったんだろ。 あ、そういえば今日進捗会議じゃん。相談うけてた松原さんのプログラム、早いとこ疎通確認まで持ってかないと。 ソースコードを眺めること数十分。 さっきまでいた早野さんたちの席辺りがざわついているのに気がついた。 いや、どっちかというとどよめき? 何事?なにごと?なんか楽しそうだよ? もちろん俺は早野さんのところにすっ飛んでいった。

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