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【番外】甘えホーダイ月額キス31回(4)

「もう、もう寝る時間です。俺寝ます」 「ふふふ。ずいぶん早いな」 上機嫌な槙野さんの顔を見ないようにしながら、かつ槙野さんにこれ以上見られないようにしながら、必死に訴えて、解放してもらった。 歯みがきして、寝るの! もう、寝るしかないの! 洗面所の鏡も恥ずかしくてもうダメ。 一所懸命後ろ向いたり下を向いたりして、鏡にうつる俺を見ないようにした。 歯を磨き終わって、悩んだ。 槙野さんがまだリビングから出てこない。 先に寝室行って寝ちゃう! っていう選択肢はあるけど、やっぱり槙野さんなしで、一人で寝るの寂しいよ。 どうしよ。 どうしよ。 どうしよ。 「おかえり神崎。意地悪してごめんな」 優しくなった槙野さんが、眉尻を下げた笑顔で迎えてくれた。 ……無理なのです! 俺には、槙野さんから離れるなんて無理なのです! さみしいと弱っちゃう、メンタルがか弱いわんこなのです。 恥ずかしいとか言いつつも、結局槙野さんのところに戻ってきた。 赤い顔しておそるおそる隣に座ったら、槙野さんは俺を優しく抱きしめてくれた。 抱きしめて、温かい頬を重ねて、耳元でそっと囁いてくれた。 「神崎が可愛くて可愛くて堪らないから……つい、あんなことも言いたくなる。もちろん本音だぞ? 神崎はああいうこと言われるの好きじゃないって分かってるんだけど、照れて困ってる神崎も好きなんだ……。ごめんな」 槙野さんはいつも俺をどきどきさせてくれる。 照れて困ってる俺なんか、見たって誰も興味が湧かないだろうに。 槙野さんはそんな俺も好きだって。 でも、好きの度合で言ったら、槙野さんが俺の事想ってくれてるのよりも、俺のほうがもっと槙野さんのこと、好きだ。 そんなの、言ったもん勝ちじゃんって、言われちゃったらそれまでなんだけど。 「何考えてるんだ?」 「俺も槙野さんを好きなこと、何て言ったら伝わるかなって」 そう言ったら、槙野さんは微笑んで俺を抱きしめてくれた。 もう充分伝わってるって。 「ね、槙野さん。寝よ? ちょっと早いけど」 ぎゅっと抱き返すと、俺と槙野さんの心臓の、ちょっとだけ速い鼓動が分かった。

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