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その後ー1
松浦と双海が二人で会う様になって、早3ヶ月が経った。
まだ3ヶ月、されど3ヶ月。
休みが全く合わない二人が逢えた回数は4回。
そんな中でどうやって先に進めと言うのか。
「はあ…」
勤務中は必ず被っている帽子をため息をつきながら取る。
回送のバスを営業所まで運転し、停車させた。
後は洗車をして次の時間まで休憩だ。
「ため息なんて珍しいな。いつも元気なのに」
職場の先輩である北田がバインダーで双海の頭を叩いた。
「いて。キタさん、もー、暴力反対ですよ」
「そんなんじゃ事故するぞ。悩み事か?」
昼間の営業所。事務所の机には事務員が揃えてくれた甘いお菓子が勢ぞろいしている。
バスの運転手は何かと緊張する時間が長いので、精神的にも疲れが出やすい。
そんな彼達の疲れを少しでも軽減しようと甘いものを置いてくれているのだ。
北田はシュークリームを摘むと大きな口でかぶりついた。
「…悩みっちゃ悩みですけど…」
「さては女だな。お前最近おかしいし」
「えっ!!本当ですか?!」
双海が慌てると、北田は少し呆れた顔をする。
「お前、誘導尋問に弱いなー」
まんまと罠に引っ掛かった双海は、コーヒーを片手に洗いざらい話す。
『彼氏』は『彼女』にしてしまったけど。
(松浦さん、ごめん…!)
「はー、3ヶ月に4回だけ?!ラブラブな時期にそりゃ辛いな!」
一番楽しい時でもんなー、うちなんかもう退職後の夫婦の様な関係よ、と北田は笑う。
「笑い事じゃないんですよう…」
北田は今度はエクレアをつまんで双海に聞く。
「おおすまん。しかしいつの間にお前、お客さんとそんな…」
「いやもうそこはいいですから…」
このままだとまた誘導尋問に引っかかりそうなので、双海は話を変えようとした。
「まあマメにメールや電話するしかないだろうなあ。休みたい時があったら言えよ。オレと休み変えてやっから」
結婚したら、オレに感謝しろよーと笑う。
(結婚ねえ…)
まさか『彼氏』とは思うまい。
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