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第5話 弥勒

朝、瑛太がキッチンに行くとスーツを着た康太と、制服を着た榊原が朝食を取っていた 瑛太は「別行動なのか?」と、康太へ問い掛けた 玉露を悠太から出してもらい飲んでる康太が、伊織は忙しい…と、答えた 榊原は、補足して 「午前中は合同祭の打ち合わせで抜けれません 午後からは康太と合流します。」 と、解りやすく瑛太に説明した 「瑛兄…心配すんな オレはもう大丈夫だ…」 瑛太がは、…そうか。と、静かに頷いた 「瑛兄は、弥勒を知ってるか?」 「名前だけなら…」 「今、力哉に向かいに行かせてる 逢うと良い 総代として知っておいて損のない人間だかんな 父ちゃんなんか遅刻覚悟で弥勒に逢うつもりだもんよー …母ちゃんも弥勒に逢うから遅刻」 瑛太は両親を見た 父 清隆は苦笑して、母 玲香は沢庵をポリポリ食べていた 康太の沢庵好きは…受け継がれし遺伝… 一生と聡一郎と隼人は遅刻しないように榊原を、連れて登校して行き 遅刻組だけが家に残った 力哉が弥勒を連れて家にやって来ると… 飛鳥井の家族は唖然となった Tシャツにジーパンと言う出で立ちに、陽に焼けた逞しい、イケメンだったからだ 「康太、待たせたな!」 ニカッと笑う男は高名な妖術師…と言うより 何処にでもいるような…青年だった 言うなり康太を抱き締め…グリグリ頭を撫でる 「痛てぇよ弥勒…」 文句を謂うと弥勒は笑って「名前で呼べ」と催促した 康太は弥勒を、見た 名前は…呪術師の弱点…それを此処で呼んで良い筈などないだろう… 「構わぬ。俺を紹介しろ」 弥勒に言われ康太は弥勒を紹介した 「弥勒高徳 オレが山に修行に行った時に、紫雲龍騎と釜を共にした修験者だ 紫雲は陰陽師、弥勒は呪術師 二人は飛鳥井の為に……」 と言いかけた時に弥勒は康太を止めた 「俺等は康太の為に動く…だ 飛鳥井に康太がいなくなれば…護るに価もせぬ…だ。」 弥勒は康太を抱き上げ、不敵に笑った 「この家の結界は…紫雲自ら来たのか… クソッ!出し抜かれた… ならば俺はお前の家族や兄に糸が着かぬように術を施してやろう」 弥勒高徳は、一癖も二癖もある呪術師だった そして瑛太に向き直ると、手を差し出した 「我妻、澄香は貴殿の妻、京香の姉になる 我らは義兄弟になる…以後ヨロシク頼む 」 ニカッと笑われ、瑛太は弥勒の手を取った 「康太、東矢は1ヶ月の修行で山に籠らせる… 今は山を登る為に体力作りをさせている 2年経ったら、お前に返そう」 「すまねぇな…」 「お前の頼みなら必ず俺は聞いてやる それが俺の存在理由だ それにあの時…お前に出逢わねば…今の我らは存在せぬ 紫雲も、俺も、忘れてはおらぬ」 康太は何も言わず笑った 「弥勒、そろそろ行くか!」 康太が言うと弥勒は康太を離し、お辞儀をした 「瑛太、今度飲もうぞ!」 弥勒は瑛太に次の約束を取り、凄い印象で… 飛鳥井の家を後にした 遅刻組は、どっと疲れて会社へ出勤して行った 力哉の車に乗り込むとトナミ海運へと向かった 弥勒は運転する力哉を見て、微笑んだ 「本当にお前は…自分へ還すのが上手い…」 弥勒が呟く 「弥勒、それが定めなのだ…」 「定めなら…何故…俺は…お前へ還らなかった?」 「お前は血を遺す定め…澄香と犯りまくって子を残せ…」 「お前が顔を出すなら燃え上がって…昨夜は燃えたな…ちょくちょく顔を出せ」 「ならば式神を飛ばして覗いてやんよ! お前と紫雲が時々覗くかんな!仕返しだ」 康太が笑って言うと弥勒は 「式神を飛ばせるのか?」 と問い掛けた 「飛ばせるが…お前の覇道を辿れば… エッチ位は覗けるがな… 最近、手抜きだろ?」 弥勒は康太を情けない顔で見た 「……康太…。」 「夫婦は血を交え1つに深まる… 手を抜けば…己に溝を生じさせる 手は抜くな… そして人のエッチは覗きに来るな!」 康太はニカッと、笑った 「手は抜かず子供を作りまくるが… 覗くなは……聞けねぇな 唯一の楽しみだからな」 康太は嫌な顔をして諦めた トナミ海運へ向かう前に力哉がアポ取っておいてくれたから、受け付けに顔を出すと直ぐに社長室に通された 戸浪海里は康太を社長室のソファーに座らせると、康太の連れている連れは誰かと尋ねた 「若旦那…呪術師、弥勒をご存知か?」 康太が聞くと戸浪は、名前だけなら…と答えた 「彼は高名な弥勒院の当主だ」 戸浪は弥勒に「始めまして、戸浪海里です」と頭を下げた 「若旦那、何故オレが呪術師と居るか解るか?」 康太の質問に戸浪は首を傾げた 「オレは最近、命を狙われた しかも妖術で…弱らせて…死へ導かれる所だった…。」 康太の言葉に戸浪は、慌てた 「誰がその様な事を!」 康太は静かに告げた 「戸浪海運から暗殺の依頼は出ていた… オレを消す気だったか?若旦那」 戸浪は康太の顔を真剣に見詰め 「ご冗談を…。 私が君の死を望みなどしない 死を望むより…君と共に生きたと願っている」 と胸を張り…言い張った 康太は「若旦那が暗殺の絵図を書いた…と、言うのは冗談だが トナミ海運から飛鳥井康太の暗殺の依頼は出されたのは事実だ オレは早く片付けて残りの学園生活を楽しみてぇかんな!弥勒を連れて来た」 と真実を戸浪に告げた 「何故…康太君を!誰がその様な事を!」 戸浪は呪術などと姑息に動く輩は許せなかった 「弥勒、若旦那に…触手は?」 「康太…この部屋の闇を祓え…話しはそれからだ 」 康太は言われ鞄から剣を出した 「若旦那、絶対に動くな!」 言い置き、康太は鞘を抜く 鞘を抜かれた刃は紅蓮の焔も燃え上がらせた長い刀へと姿を変えた 康太は印字を斬ると地面に刃を着け、足を開き気合を入れた 地面に康太の気が流れ紅く燃え上がった その刀を天空に上げると、康太は天を斬り、風を斬り…闇を祓った 康太は刀を鞘に戻すと、鞘に吸い込まれた刀が短刀へと姿を変えた それを鞄にしまい、康太はソファーに座った 弥勒はそれを見て微笑み 「さぁ闇は祓った! 本題に入ろうか康太」 本題に入った 康太は戸浪を射抜いた 「少し前にオレの手で切ったトナミの元副社長と手を組み、トナミを我が物にしょうとした絵図を描いた者がいる 大東物流社長が目の上のたん瘤であるトナミ海運を弱らせ吸収合併しようとしたんだよ それと同時に飛鳥井康太の暗殺の依頼を出した 若旦那の所にも呪術が施され…良くこんな部屋で仕事が出来たと弥勒は、感心している…」 康太が東矢の果てを見て知った事実を戸浪へ告げた 「私も呪われていた?」 戸浪は呟いた 「少しずつ弱らせて…最近…疲れが抜けない時はなかったか?」 「私も歳ですから…疲れが抜けないのかと…」 戸浪は苦笑した 「お前は妻や子供にも…素を見せない… 愛人の藍崎にも、素を見せない…疲れるのは仕方がないが…… 自分の状態を把握しとくはトップの人間の努め… そろそろ…重い仮面を外せ…若旦那…」 康太が呟くと戸浪は 「私は君の前では素でいますが? まだ装ってますか?」 「……オレの前では素だな… オレの前でだけで良いのか?」 「君の前でだけは素の戸浪海里でいさせて下さい 後は…不器用なので…装わせて下さい…」 康太は爆笑した 「弥勒、戸浪はオレの大切な友だ 救いたい。力を貸せ!」 康太が言うと弥勒は不敵に笑った 「俺は高いぞ 高いだけではなく、気に入らぬ仕事はせぬぞ!」 「金か?」 「金に執着はねぇよ」 「ならば何だ…」 「お前がキスしてくれたら動いてやっても良い!」 「永久に縁を切ってやろう」 康太は一蹴した 「わぁっ~それは止めて!」 弥勒は笑っていたが瞳は一点を見詰めて微動だにしなかった 「康太…」 「何だ?」 「お前の秘書は…戸浪の血筋か…」 「解るか?」 「ならば、腕によりをかけねばな。」 弥勒は立ち上がると、呪術を唱え戸浪へ印を切った 「康太、この建物に結界を張れ 俺はその結界に蜘蛛の糸を張る。 それなら海からの運気も阻害はせぬ 海神も登れる…それで良いか?」 康太は頷き、笑った 「お前の大切な手中の珠を穢させはせん」 「若旦那、屋上へオレを連れて行け」 康太は戸浪に、指示を出した 「私も一緒で構いませんか?」 「若旦那はその目で、オレと弥勒の仕事を見届けろ 呪術の世界を知る機会かもな…」 「ならば、此方へ。」 戸浪は立ち上がり、康太と弥勒を屋上へと案内する事にした 廊下に出ると戸波の秘書の田代が帰って来て、康太と弥勒の姿に驚いていた 「康太…その男から瑛太の気を感じる…」 弥勒が田代を凝視する… 「弥勒、田代は瑛兄とは学友 オレが此処に居れば…心配で学友に連絡を取る… すると瑛兄の気を感じるのも不思議ではない…と、言う事だ」 弥勒は、ふむ…成る程…と納得した 戸浪は秘書に屋上へ上がる事を告げた 田代は…戸浪より先に走って行き、屋上のドアを全開に開けて待っていた 康太は田代に荷物を預け、鞄の中の剣だけ取り出した そして鞘も田代に預け、康太は屋上の真ん中へ立った 紅蓮の妖炎を上げる刀が弥勒に共鳴して鳴いた 康太は刃を地面に着けると、円を書き走る その円の中に、五芒を描き印を斬る 地面が紅蓮の炎に包まれ燃え上がった 「 覇っ!! 」康太が覇道を送ると… 紅蓮の炎は消えて行った 弥勒は康太の正面に立つと 康太の張った結界に蜘蛛の糸を出した… 結界に吸い込ませ搦み付かせ、消えて行った 「腕を上げたな…康太」 「オレの腕じゃない 百年の巻物がオレの中で育っているからだ。」 「それはお前の一部 使いこなすはお前の力量!さぁ帰るぞ」 康太は嬉しそうに弥勒を見て、田代から鞘を受け取り刀を鞘に納めた そして鞄の中へ入れると鞄を受け取った 「午後から田邊の腹心中の腹心を血祭りにせねばな!」 弥勒の言葉に戸浪は、田邊の所へ行くのか…と、問い掛けた 「何故…田邊さんの所へ?」 戸浪が聞くと、弥勒は 「飛鳥井康太の暗殺依頼は二件 戸浪の方からと…田邊の方から… そして二人とも…呪詛の標的だったと言う訳だ」 戸浪に解りやすく教えてやった 「血の滲む修練を送った康太の学園生活を邪魔するモノは、絶対に許したりはせぬ!」 弥勒は、燃えるような瞳を戸浪に向けた 戸浪はその瞳を受け 「私も同席しても構いませんか?」 と申し出た 弥勒は「好きにしろ!」と言い捨てた 「これこら向かわれるのですか?」 「康太の伴侶が共に行く それまで腹拵えだ」 「でしたら、私が饗しましょう。」 戸浪は田代に隣のホテルに部屋を取るように言い付けた。 康太は「若旦那も田代も一緒に食おうぜ…」 と、笑顔で誘った 弥勒は康太に抱き着いた そしてヒョイと康太を抱き上げると、歩き出した 戸浪はその後ろに着いて歩いた 田代が運転する車に乗り込みホテルへと向かう ホテルの正面玄関に車を停めると、ベルボーイに車のキーを預け田代は走った 弥勒は康太を抱き上げたまま、ホテルの中へ入って行った 田代はフロントでキーを受け取ると、「どうぞ、此方へ」と弥勒達を案内してホテルの中へ入って行った 田代が部屋を開け、部屋の中へと招き入れる 弥勒は康太をソファーに座らせると、その横に座った 「戸浪海里…お前は良く気付く奴だな 流石康太の見込んだ男だ お前の頼みなら聞いてやるから、用が合ったら俺を呼べ」 弥勒は、戸浪に名刺を放り投げた 「高いんですよね?」 俺は高いぞ…と弥勒が言っていたのを思い出し口にする 「俺は気に入らねぇ仕事は引き受けぬ そしてどうしても遣らねばならぬなら…俺は高いぞ…と言う事だ。 戸浪は気に入ったからな、お前の気持ち分で仕事をしてやるよ 俺に着ける値段は、その人により違う 康太なんてタダだ 俺を呼び出し…踏み倒すんだぜ しかもチューもさせやしねぇ!」 康太は仕方なく…弥勒の頬にキスを落としてやった そして、鞄から分厚い封筒を弥勒に渡した 「何?今日はサービス良すぎ。」 弥勒は子供の様に笑うと、康太の頬にキスをした 「これはオレからだ!弥勒」 「源右衛門ではなく…康太から?」 「そう。オレから!」 「感激しすぎだ!」 弥勒は嬉しそうに笑い、ジーパンのポケットに封筒を入れた 「そう言う時もある。」 康太は、笑って食事をガツガツ食べた 昼を少し回った頃、榊原から電話が入った 「康太、今何処ですか?」 と、心配して聞いてくる榊原に康太は 「学校で兵藤と待ってろよ! そしたら迎えに行くかんな!」 と言い置き電話を切った 「弥勒、我が伴侶が呼んでる。行くぞ!」 弥勒は立ち上がると康太に続いた 康太は力哉の車に乗ると、弥勒も乗り込んた 戸浪は力哉の走り車の後ろを追って、桜林へと向かった 「社長…力哉は運転テクニックは侮れませんね! 私も負けてられません!」 田代がアクセルを踏むのを戸浪は苦笑して何も言わなかった 桜林の正面玄関に向かうと榊原と兵藤が立っていた 停まった車の窓を叩くと、榊原は後部座席に乗り込んだ 兵藤もそれに続いて後部座席に乗り込んだ 弥勒が助手席に座り、生まれもっての政治家の気を持つ人間に、瞳を凝視して見た 「康太、彼は?」 隣に座った兵藤貴史に興味を持ったみたいだ 「兵藤貴史だ!」 康太が教えると弥勒は 「兵藤?…あぁそうか。 お前は丈一郎の気を引き継いでいるのか」 と、納得したみたいだった 弥勒は納得したが、兵藤は驚愕の人見で康太を見た 「貴史、そちらの方は、弥勒院だ」 「弥勒院?弥勒院厳正?」 兵藤は、弥勒の父の名を上げた 「違う。その息子…だ。 真名は今度な。」 康太が言うと、弥勒は兵藤に手を出した 「妖術師、弥勒…だ。お見知り置きを。」 兵藤は弥勒の手を取った 用は無くなった…とばかりに、康太は榊原にすり寄った 「伊織、ご飯食べたか?」 康太が尋ねると、榊原は未だだと言った 「ならば、事が終えたら飯を食おうぜ!」 榊原は何も言わず頷いた 車に乗り込んだ兵藤に康太は 「貴史…何処へ向かえば良いんだ?」と問い掛けた 「お前の大好きなホテルニューグランドへ行け! そこに部屋を取っておいた」 「力哉…そこへ…」 康太はそう言うと気分でも悪いのか… 榊原に抱き着いた 弥勒の顔も険しかった 「康太…あと少しで…カタが着く…絶えれるか?」 康太は頷くだけで何も言わなかった… 榊原は心配そうな顔で康太を抱き締めていた 弥勒は榊原に声をかけた 「伴侶殿…濱田の横に大元が居るのだろう… 俺がいて取り込まれる事はないが… その相手に近寄れば…気分が悪く出る事もある…支えてやってくれぬか?」 榊原は黙って頷いた ホテルニューグランドの正面玄関に車を停めると、鍵をベルボーイに預け、康太達はホテルの中へ入って行った 兵藤が受け付けカウンターに 「濱田政親の甥、兵藤貴史だか叔父の部屋に案内を願います」 と、鷹揚な態度で到着を告げた 受け付けは伺ってます…と、告げ係の者に連絡をした そこにはやはり総支配人が現れた 「ご案内致します…。 康太様、ご気分が優れませぬか?」 心配げな総支配人がいた 「大丈夫ですから…部屋へ案内して下さい」 康太が言うと、どうぞ…と、歩き出した 「このお部屋で御座います。」 総支配人は、このホテルで一番デカい部屋に康太達を案内した 戸浪は…部屋に入ろうとすると…倒れそうな気持ち悪さに襲われた… 結局…戸浪は部屋へは入れず… 今回は見送る事になり、帰って行った 部屋の中へ入ると、濱田政親と側近二人が…お供に着いていた その姿を見ると…康太は倒れた 榊原が崩れる康太の体を…抱き止めた 榊原は、倒れた康太を誰も座っていないソファーへと座らせ…抱き締めた 弥勒はドカドカと、部屋に入り濱田の前に座った 「貴史、鍵をかけろ!」 慇懃無礼な弥勒の姿に…濱田は不快感を覚えていた 貴史はドアに鍵をかけた そして弥勒の横に座ると、兵藤の叔父の顔を見た 弥勒は立ち上がり康太の方へ行き、文を唱え康太の体に気を入れると… 康太は目を醒ました 康太は起き上がると、首をコキコキ動かした 「う~気持ち悪い…。 弥勒、断ち斬ってくれ…。」 康太が弥勒に言うと…弥勒は… 「訳も解らず…は、出来ねぇだろが! 少し待て 兵藤貴史、お前の叔父だろ…説明しろ!」 と兵藤の尻を叩いた 兵藤はどう言って良いか解らず…戸惑っていた 康太は立ち上がると…濱田の前のソファーに座った 「濱田…久し振りだな…。」 「これは…何なんだね…」 濱田は不愉快そうに康太へ訴えた 「飛鳥井康太を殺してくれ…と、呪詛屋に頼みやがった奴がいんだよ。 それでオレは危うく殺されかけた… しかもオレを殺せと依頼した奴が…お前の横に座ってるから…気絶した…」 康太が説明すると嘘…と濱田は呟いた 「それが嘘じゃねぇ現実なんだよ。 濱田は、妖術師、弥勒院を御存知か?」 濱田は……弥勒院…?と、思案した そして一件の腕の良い、妖術師を思い浮かべた 「弥勒院厳正…?」 「その息子。腕は親父を凌ぐ。」 「その妖術師がどうした?」 「濱田政親…お前にも呪詛がかかっている… だから……弥勒に頼んだ。 オレを呪い殺そうとした桐生院は…呪詛を跳ね返した時点で…全滅した。 じわじわ桐生院の呪詛はお前を蝕むぞ… それでも良いと言うなら…オレは弥勒と一緒に帰るとしょう…さぁどうする?」 康太は濱田に迫った… 濱田は…横の二人に…目を向けた 「兵藤貴史が出なければ…お前は思うまま…操れた 傀儡にするつもりだった…。 オレがそれを阻んだからな…呪い殺される所だった…。 お前の横に座っている…男だ さてと、弥勒、帰るか? 濱田はじわじわ殺されたいみたいだからな」 康太は立ち上がった すると弥勒も立ち上がり 榊原は、康太の側へ支えるように立った 「貴史…そう言う訳だ。オレは帰る。」 康太は、うぇーっ…と吐き気を我慢して、辛そうだった 兵藤は、慌てて康太を止めた 「弥勒さん。少ないですけどお納め下さい。 それで、叔父に掛けられた呪詛を返して下さい。」 兵藤は、弥勒にお願いした 弥勒は金は受け取らなかった 「俺は今、康太の依頼で、康太に依頼代を貰った ブッキングは御法度。 受け取れねぇんだ お前が何時か俺の手が要るならば…貸してやろう。だからそれは引っ込められよ!」 弥勒に言われ、兵藤はお金を引っ込めた 弥勒は現状の悪さを危惧すると 「さてと…これ以上は康太が持たねぇ。 遣るとするか! どの道、呪術は己に返るしかあるいて! 濱田の側近から発せられてる呪術を斬れば、側近と呪術者は息絶えるしかねぇ!」と言葉を発し 弥勒は康太の背中目掛けて…覇道を送った 覇道を受けた康太と、呪術師ならの術を断ち斬る… 康太に向けられた覇道が…跳ね返り… 濱田の隣に座る男を貫いた 男は…心臓麻痺を起こしたかのように…静かに…倒れた… 康太は踏ん張り…覇道を遣り過ごした 「医者を呼べ…その前に俺等を他の部屋に移せ」 兵藤は、自分が泊まる筈だった部屋のキーを弥勒に渡した 「事件性は出ては来ぬだろう 片付いたら呼べ。 呪詛を祓ってやる…でないと確実に死ぬぞ… そこの男の様にな… 呪術師が死せようとも放たれた呪術は必ずや違える事無く濱田の心臓を止める筈だからな!」 弥勒は康太と榊原と共に部屋を出た 部屋から出るのを確かめてから、兵藤はフロントに救急車の依頼をした 救急車が到着した時には…もう息を引き取っていて 事件事故の両面から規制線を張った 警察が事情を聞きに来て、鑑識が入り大掛かりな捜査が行われた なんせ…現総理…と言う事もあり有耶無耶には出来ないと県警の威信を掛けて捜査していた 鑑識の結果かなりお酒も体内から出て心臓麻痺を起こした…と、言うことでカタがついた 総てが片付いた後、部屋を変えて康太と榊原と弥勒を呼んだ 濱田の顔は憑き物が堕ちたような顔になっていた 弥勒は濱田にかかっている呪詛を外し 今後、呪詛が掛からぬように妖術を施した 「濱田政親…頭がスッキリしただろ?」 弥勒が言うと濱田は頷いた 康太は濱田に 「弥勒は呪詛を外す妖術師…今後何か有ったとしたら…弥勒を使うと良い。」 と、気持ち悪さが、やっとなくなりスッキリした顔で言った 「貴史、これで邪魔物は排除した オレの絵図の邪魔をするモノはいなくなった オレの関与は此処までだ。 後はお前が上手く遣れ」 兵藤に仕事の完遂を告げた 兵藤は、弥勒に差し出した封筒を榊原に差し出した 「これは榊原の労力代に足りねぇけどな…受け取れ。 お前には…辛い想いをさせた…」 榊原は、封筒を前に…困っていた 「伊織、貰っとけ!兵藤の気持ちだ。」 榊原は兵藤の差し出す封筒を受け取り、一礼をした 「さてと…帰るとするか!」 力哉は疲れきった顔をした康太達を先に飛鳥井の家に送り届け、その後で、弥勒を送る事にした 康太は力哉の車の中で…目を瞑っていた かなりの体力を消耗しているのが解る 飛鳥井の家に着き康太と榊原を下ろすと、力哉は弥勒を送る為に車を走らせた 先に車から下りた榊原は康太を支えるように歩き、飛鳥井の家の鍵を開けた。 玄関に上がると、瑛太が出迎えてくれた 「康太、伊織、お帰り。 康太……まっ青ですが…… 大丈夫なのですか?」 榊原は、返答に困った、何と謂って良いのか‥‥ 康太は心配性の兄を心配させず 「瑛兄…話は明日で良いか? 今日は疲れたかんな眠りてぇんだよ!」と謂った 「食事は?」 「全部吐いた…今日はもう良い…寝る…」 康太はふらふらと階段を上がって行く… 榊原は、慌てて康太へ着いて上がって行った 榊原は3階の自室まで康太を支えて行くと、寝室に入り康太のスーツを脱がせた 着替えさせて、着替えを脱衣所にあるドラム洗濯機に入れた 今回の部屋には…浴室の隣に脱衣所と洗濯機もあり、下まで洗濯に行かなくても良かった リビングにTVも冷蔵庫もあり… 贅沢をさせてもらってるな…と親の有り難みを噛み締めていた 寝室に戻ると、康太は眠っていた 制服を脱いで着替えてベットに座り…康太の頭を撫でると…康太は目を醒ました 「伊織…一緒に眠ろう…」 康太は榊原に腕を伸ばした 榊原は康太を抱き締めたベットに横たわった 康太は榊原の胸の中で寝息を立てた… 愛しい…人の寝息で…眠りに誘われる… 榊原も…何時しか眠りに落ちていた

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