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第8話 落ち込む

学校が終わって帰宅の徒に着こうとしている康太の目の前に黒いベンツか停まっていた 康太は走ってベンツに近寄ると、車から瑛太が下りて来た。 榊原は執行部で忙しく、別行動だった 一生達は康太の肩を叩くと、力哉の車に乗り込み帰って行った 康太は瑛太の車の助手席に座ると、瑛太はドアを閉めた 車を走らせると、瑛太は前を見たまま康太に声をかけた 「康太…今日君、神野の果てを視たでしょ?」 「最近…隼人の覇道が乱れてたから… 視たら…神野と小鳥遊が喧嘩してて… 隼人は怯えていたんだ。」 康太の言葉に…瑛太は…それでか…と、納得した 「やはり…人はオレを化け物でも見た様な目で見るんだな…。」 康太は自嘲めいた笑いをした 「瑛兄も、嫌か…オレに見られるのは?」 瑛太は車を路肩に止め、康太を持ち上げ膝の上に乗せた 「私は何時もお前の瞳の前では無防備に総てを晒してはいないか? 兄だけではないぞ。 伊織も一生も聡一郎も隼人も…お前の前では総てを晒している…… お前の瞳は驚異ではない 化け物でもない 自分をそんな風に言うのは、兄は許さない… お前は真実をねじ曲げないだけだ… お前の瞳こそ…真実なのだ…それは抗えはしない現実なのだ…違うか?」 康太は兄を見詰めた… 「瑛兄……」 瑛太は康太を撫でた 「お前は気にする…だから気になって来てしまった…。 でも今回は来て正解だった。 お前の好きなプリンでも食べに行くか?」 「瑛兄…ごめん…」 「気にしなくて良い 所で、神野の恋人って誰なんだ? 私の知ってる人かな?」 瑛太が呟いた 「瑛兄は……神野の恋人を知らないんか?」 「アイツは自分の事は、言わないからな…」 「瑛兄って……小鳥遊さんって知ってたよな?」 康太が言うと、瑛太は小鳥遊を思い浮かべ 「隼人のマネージャーの?知ってるよ」 と、何気無く言い…………えっ……ひょっとして!と察知する 「神野の恋人って小鳥遊ですか! まさか…男ですか…あの女好きが…嘘…みたいだ」 瑛太は唖然となった 「神野は高校時代から好きだったんだ… でも認めたくなくて…女遊びしまくって… 父親が亡くなった時に…小鳥遊を好きって…認め…強姦めいた繋がりで自分のにしたみたいだ。 その負い目で…正直になれなかったみたいだからな…まぁ犬も食わねぇ痴話喧嘩だ…。」 康太はさらっと言った 瑛太は…たらーんとなった 「瑛兄、まだ仕事があんだろ? 家まで送ってくれれば良い。」 「気にしなくて良いんだぞ?」 「少し疲れた…家で休みたい…」 「そうか。ならば家まで送っていってやろう 」 瑛太は飛鳥井の家へ走って行くと、家の前で康太を下ろし…会社へ走っていった 少し疲れた康太は溜め息をついた そして…家へと歩いて行った 玄関のドアを開けようとしたら、後ろから手が伸び、腰を抱かれた 後ろを見ると榊原が立っていた 康太の顔は綻び…嬉しそうな顔を向けた 「瑛太さんに送ってもらったの?」 榊原が康太に聞くと、康太は頷いた 「神野から電話があったみたいで…気にして…来てくれた…」 ドアを開け、靴を脱いで部屋に入ると、榊原は康太の鞄を持ち、肩を抱いた 康太は階段を上ると、3階の自室に向かった 榊原が自室の鍵を開けると、康太は制服のままソファーに寝そべった 榊原は康太の横に座り、康太の髪を弄んだ 「どうしたの?着替えないと…皺になりますよ?」 「伊織…」 榊原は康太を持ち上げると膝に乗せた 「落ち込んでる?」 「疲れたのと…人に化け物でも見るような目で見られると…傷付く…」 「康太、僕を見て。」 榊原に言われ、康太は顔を上げた 「僕の康太でしょ?君は。」 康太は頷いた 「君は僕の顔だけ見てれば良いんですよ。 他を見るから…余計な事を考えちゃうんです」 榊原は、そう言い唇にキスを落とした 康太は笑った 「伊織、ありがとう。」 「違うでしょ?」 「伊織愛してる」 「僕もですよ」 榊原は康太に唇を重ねた 康太は榊原の背中に手を回した その時、3階の自室のドアがノックされ、ドアの方を見ると、一生と聡一郎と隼人が立っていた 一生が「ここの鍵はかってねぇんだな…」 と、言うと榊原が 「ベットの方は鍵を掛けるけど…ここは君達が何時でも出入り出来るように…ね。」 榊原は康太を抱き締めたまま、そう答えた 一生は榊原の手の中の康太を見て、溜め息をついた 「やはり…落ち込んでたか…」 一生は康太に近寄ると榊原の膝の上の康太を抱き締めた 「おめぇは考えすぎなんだよ」 一生が康太の頭をグシャグシャに撫でた 聡一郎も康太に近寄り、頬にキスをして 「君には僕達も伊織もいる…」と、抱き締めた 隼人は「明日…神野に噛みついてやるのだ!」と、怒っていた 康太は隼人の頭を撫で「ありがとうな隼人…」と言い… 一生や聡一郎にも「ありがとう…」って伝えた 一生は康太に、俺等は共にある…そうだろ?康太…と告げた 康太は何度も頷き、微笑んだ 愛する人に守られ… 愛する人が…心配してくれる そして共にあろうとしてくれる… 「さてと、着替えたら飯を食いに下りるとするか!」 康太は立ち上がった そして一生達に「着替えるから待っててくれ!」と、榊原と共に寝室に入っていった 寝室に入ると、康太は制服を脱いだ そしてラフな服に着替えた 榊原は康太と自分の制服をハンガーにかけると、自分も着替えた 榊原は康太に「もう大丈夫?」と問い掛けた 康太は榊原に笑顔で応え 「お前がいて、アイツ等がいる オレは大丈夫だ。」 言葉を紡いだ 榊原は頷き寝室のドアを開けた 「さぁ下に降りるもんよー。 まずはアイスでも食うかんな!」 康太はサイドボードの上のPCを取ると、一生達を待った 一生は康太の横に行き、そのPCを取り上げた 「部屋代分は仕事する。会社にも行く。 牧場も手抜きしねぇ。だろ?康太!」 康太は一生を、見詰め…笑った 聡一郎も、「暇な時は会社に行きます。君は早く隼人と免許を取りなさい!」と康太の肩を抱いた 隼人は康太の手を引き「オレ様と競争だぞ!康太!」と笑い 榊原は、康太を見守り…微笑んだ そして何時も思うのは… 君を守る…総てになろう… と、言う、想い 一生、聡一郎、隼人も同じ想いならば… 共に有ろうと…榊原は願う… 君のいる場所を…守ると…誓う… 何があろうとも… 僕等は…君と…共に…あれば良い… 康太は一生の、背中にこなきジジィ宜しくおぶさり一階に降りた 途中…二階の悠太の部屋のドアに目を遣り… 「一生…アイツは部屋に帰って来てる?」 と尋ねた 一生は「いいや…姿すら見てねぇわ…」と、答えた 康太は…目を瞑り…そうか…と呟いた そんな康太を見て聡一郎は 「悠太がもし…ガキを作ったら…僕がその子を貰います。君は…悩まなくて良い」 と、康太に告げた 康太は聡一郎を見て笑った 「聡一郎が子育てすんのか?」 「康太んとこで育てます でも僕の子供として戸籍に入れて四宮を継がせてやります。 僕の子供は…多分無理です…。 康太の目にも…そう写ったのでしょ?」 「でも聡一郎は幸せな生活を送れる…オレ達と共に…。」 「ならば、良いです。僕は君と共にあります 何があろうとも、飛鳥井康太の果てを見届ける。それが僕の役目。」 聡一郎が言うと、一生が 「頼むから、早く一階に行こうぜ。 背中の康太が重いんだ!俺は!」 と、叫んで、笑いながら階段を降りた 一階に着くと、聡一郎が一生の背中から康太を持ち上げ榊原に返した そして聡一郎は隼人の手を伸ばし引き、応接間のドアを開けた開いた 開いて全員が唖然とした 「嘘…」康太が呟いた 聡一郎が「広すぎやしませんか…」と言う 飛鳥井家の応接間は…倍の広さに変貌を遂げていた 応接間の壁をぶち抜き庭を潰し、応接間の横にサンルームを作った 硝子張りで窓を全開にすれば、壁はなくなり 窓を閉めカーテンを閉めれば、完全な室内になる 観葉植物をふんだんに置き、空間に安らぎを取り入れている これは源右衛門の創る空間だ 康太は広くなったが、何時もの位置のソファーに座った 康太の横に座った一生をそっと抱き締める すると一生はニカッと笑った 康太達が寛いでいると、玲香が帰って来て、応接間を覗いた 「どうだ?変貌を遂げたであろう。此処は。」 玲香が笑って話しかけた 「母ちゃん、じぃちゃんの部屋はもう瑛兄が?」 「まだじゃ。瑛太の子は一人じゃからな、2LDK辺りで良いじゃろ? 元康太の住んでた部屋と倉庫を片付け総代の部屋は完成する 源右衛門の部屋はリフォームの為に、我が亭主の部屋におる 亭主は我と一つ部屋に戻り、新婚当時の熱愛な日々じゃ」 と、玲香は笑い飛ばした 「母ちゃん…客間は?」 「客間は奥の倉庫を片付けて作る予定だ だがまだ出来ぬからな、誰か泊まるなら総代の部屋がもうじき出来あがる そしたなら瑛太は移るからな、瑛太の部屋が空く あの部屋は客間にしても良いように広く作ってある 仕方があるまい 苦肉の策じゃ 駐車場は、お前等の車を置くだろ? 潰す訳にはいかぬからのぉー」 康太は、そっか…と、呟いた 「今週末に、伊織のご両親に来ていただき、新居の祝いをする。 本格的に清四郎さんがこの近くに来る 康太が頭に立って、縁を呼び込め 総てはお前に任せる。 我等はお前の想いのままにそれを形に成す…よいな康太」 「解ってんよ…母ちゃん。 隼人の事務所の土地も近いうちに見に行く もうじき戸浪の仕事が終わるから それを待ってんだよ そしたら棟梁と遼一を離して、棟梁に榊原の家を、遼一に隼人の事務所を任せるつもりだ そして何より、一生と聡一郎が仕事を手伝ってくれる こんな心強い事はねぇかんな」 康太はニカッと笑った 玲香はそうか、ならば心強いな…と呟き微笑んだ 「駐車場に軽自動車だが、使える車を二台置いておいた 鍵は、玄関上の鍵置き場にある 必要な時に使うがよい お前等の名前で保険は入ってある 康太は免許を取ったら清四郎さんがプレゼントしてくれるそうじゃ。 頑張って免許を取るのじゃ 伊織の車は瑛太が買ってくれる、待っておれ」 用件だけ言うと玲香は立ち上がった 「ならば、夕飯の仕度にかかるわな」 玲香は、そう言い応接間を後にした 康太はサンルームの床に寝っ転がり、空を見ていた 手を伸ばし…星を詠む 「血が…足らねぇのか…?」 康太は呟いた 一生達は……ギョッとして康太を見た だがこう言う時の康太には近付かない 何かを見ている邪魔をする人間は…いない 一頻り空を見て、康太は立ち上がった 「アイス食おうぜ隼人」 康太はシャランシャランと鎖の音を立てて、歩いてキッチンへと向かった

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