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第9話 所有権の放棄①

お前が堕ちるなら…… オレはお前を離すしかない お前の果てを…… 変えれなかった 兄を恨むと良い…… …………お前は…… 夕飯を終え、自室に戻った康太は 「仕事がたまってるから、やらねぇとな力哉に負担になるかんな 少し別行動になるけど良いかな伊織?」 と、現実を告げた 「僕も執行部と、仕事がありますから、多少の別行動は仕方ないですね……。 でもなるべく一緒にいる時間は作りましょう…と、言っても多少は我慢しないといけないのが現実ですかね…」 「でも…夜は一緒に居られるかんな…多少我慢するかんな」 「僕達は生きていかねばなりませんからね…多少は僕も我慢します でも何かあったら、必ず言って下さいね!」 康太は頷いた 榊原は康太を抱き締めた そして榊原に 「伊織、オレはリビングで馬のチェックをして仕事に入る。」 と、告げた 「なら僕は作ってもらった書斎で仕事をします。」 榊原は康太にキスして 「淋しかったら呼べば良いですよ」と、念を押した 康太は頷きリビングに向かった 榊原は書斎のドアを開け、部屋へ入った 自室のリビングで馬のチェックをしていると、ドアがノックされた 一生が部屋に入って来て、康太は驚いた 「何時もベタベタって訳にはいかねーか…流石に…」 一生は、康太の部屋のリビングに誰もいなかったら帰るつもりだった…。 覗いたら、康太が座って馬のチェックをしていて、横に榊原はいなかった 一生は、康太の横に行き、ソファーに座った 「明日、行くんなら俺も数に入れとけ 聡一郎も隼人も入れねぇと、僻まれるぞ 勝手に俺等の前から消えんな!そう言っただろ?」 康太は苦笑した 「勘が良すぎだ一生……」 と呟くと、一生は康太の頭を叩いた 「俺等は共にある…だろ?」 「そうだな…」 「そう言えば、応接間で言ってた血が足りねぇって?」 「弥勒が子を成さないのは…血が足りないからだ…。 紫雲もそうだ。 彼等は血を遺す運命…なのに…子を成さない…。 すると…次世代が歪む… どうしたものかと…。」 「アイツ等は…康太に惚れてるだろ? 本当は…お前しか要らない…そんな人間同士を夫婦に…お前はした…。 お前を感じねぇと結ばれないなら…お前を感じさせるしかねぇんじゃねぇか…」 康太は一生を見詰めた 「一生…オレには伊織がいる…」 「ならば旦那に相談しろ!勝手に一人で行くんじゃねぇぞ!」 「伊織に言わずに…我が身を差し出せば…永遠に伊織を失ってしまう…」 「なら言わねぇとな。」 「一生…」 「情けねぇ顔すんな!」 一生は、康太を抱き締める背中を擦った 「最近、力哉が牧場の仕事を見てくれてるんだ だから、お前の馬の事もアイツと片付けられねぇ事はねぇ お前の署名のいるのはお前がやれ 雑務は俺と力哉で片付ける。 だから、お前はお前のやるべき事をやれ! 免許も隼人と一緒に取れ。 俺等もサポートするからな 」 一生は、康太の頭をグリグリ撫でた そして冷蔵庫から飲み物とコップを持って来ると、テーブルの上で注いだ 「ほれ。飲め。」 「明日から夜は隼人の勉強を教えてやってくれ。」 「今、聡一郎に絞られてる…。 此処へ来るとお前に甘えるからな…勉強にならねぇからな でも後で来ると思うぜ。」 康太は頼もしい一生の存在に……何時も救われる この男は誰よりも康太を見ていて、解ろうと努力している。 康太と、共にある事だけを視野に入れ、康太の気持ちを誰よりも理解して動いてくれる 康太は一生を抱き締め…一生の肩に顔を埋めた 「一生…ありがとう。 オレはお前達がいてくれるから… 生きていける…。」 「飛鳥井の家族も、伊織も俺等を受け入れてくれてるからだ。 どれか1つでも妨害が有ったら、俺等は共にいられねぇ。 お前と共にいる俺等を認めてくれているからだ。 だからお前は、幸せ者なんだってば!」 康太は何も言わず一生を抱き締めた 仕事部屋から榊原が出ると、一生は康太を抱き締めていた 康太と一生の繋がりを考えれば、妬けたりはしないから不思議だった 「お前はさっさと免許を取りやがれ ………でも、お前の運転は…考えるだけで、俺は怖い…乗るのは遠慮したい…」 一生がそう言うと康太は一生の口を摘まんだ 「そんな失礼な事を言うのは、この口か!」 康太が怒る… 榊原は一生の頭をコツンと叩いた すると人懐こい笑顔で笑った 「旦那、康太が苛める~助けろ」 榊原は、一生の隣に座った すると康太が腕を伸ばし、榊原に抱き着いた 「隼人と聡一郎は?」 榊原がその場にいない名を呼ぶ 「聡一郎が、隼人の免許の勉強を教えてる 俺は康太の仕事のサポートを力哉と一緒にするから、早く免許を取りやがれ…って言ってた所だ!」 「聡一郎だけに任せられないですね 順番に隼人と康太の勉強を見るしかないですね」 一生は、榊原の仲間を認めてサポートする姿勢が好きだった 四悪童である自分達も、康太の友達である 自分達も、認めて動いてくれる…優しさが嬉しかった 「なぁ旦那…康太を弥勒や紫雲の前で抱けるか?」 一生は康太の悩みを榊原に話してやった 榊原は一生を凝視した 「康太の匂いを嗅がねば…抱けない人間がいる… そいつ等は康太を感じないとセックスしない… そうすると…子供は出来る筈なんかねぇわな 康太が応接間で言っていた血が足らねぇって…それだよ 血が交われば結び付きが強くなるからな 血が足らなきゃ子供か作れない 結果、未来が歪む…って言われたら、お前はどうする?」 「弥勒?」 「紫雲も…らしいぜ 」 「康太さえ触られなければ…抱き続けられます。 康太に触れれば…見せるのも嫌です。 康太は僕のモノです 僕は誰にも康太を触らせたくはない! 臭いだけなら良いが、康太を差し出せと言うのなら…… 未来の歪みなど関知はしません! 歪んで無くなれば良い!」 榊原の本音の言葉を受け、一生はそこまで本音を出してくれるのか…と嬉しくさえ感じる 「見せるだけだ。ならどうだ?」 「見るだけなら、多分…抱ける。」 「ならば、その時になったら、康太に協力してやってくれ…」 「承知した。」 榊原が返事をすると、一生は、 「ほら見ろ!旦那と何でも話し合え!相談しろ!」 と康太の頬を伸ばした そこへ隼人が走ってリビングに入って来た 「こーた!聡一郎が鬼だ!」 隼人は康太に逃げて抱き着いた その後に、聡一郎が入って来た 「明日までに覚えないと、ご飯抜きだからね!」 聡一郎が鬼になってて…康太はたらーんとなった 「オレは伊織に学科は教えてもらお…」 と、康太は榊原に掴まって言った 「良いですよ イキたいのなら答えなさい…ってやってあげますから 入れて欲しいのなら……答えを言いなさい。って久々にやりますか?」 と、こっちの方が絶対に怖いっ…発言をさらっと言った 康太は首をふって後ずさった… 榊原は、声を出して爆笑した 隼人は「伊織に教えてもらうのは…エロいかも…」と腹を抱えて笑い 一生は「ホント最近平気で下ネタ言いまくり…」と呆れられ 聡一郎は「それ良いですね。隼人やってあげましょうか?」と爆笑した 夜更けまで…康太の部屋は笑い声が絶えず… 家に帰って来た瑛太の耳にも届いた 飛鳥井の家に火が点り…明るくなった 康太は飛鳥井の灯り 彼をなくさない為には…その命すら差し出してしまうのだ… 瑛太は康太の笑い声を聞きながら…眠りに落ちた 翌朝執行部の仕事で、榊原は朝早く出掛けた 康太は榊原を見送り……応接間へ向かった 一生も聡一郎も隼人も応接間に集まり 3人は康太が動くまで、楽に寛いでいた 10時を回る頃、康太は立ち上がり家を出た 玄関の鍵をかけ、戸締まりを確認して家を出る すると学校とは正反対の方へと歩き出した 居場所が解ってるかの様に、その歩は淀みない 康太は住宅街を抜け、繁華街に向かって歩いていた そして、マンションの前に止まると…… 窓を見上げた 高級マンションを、康太は見上げ果てを見ていた ベランダに上半身裸の悠太が現れた 「ゆーちゃん。手伝って!」 女性の声に呼ばれ悠太は部屋に戻り、洗濯物を干す為に、再びベランダに出て来た 悠太は洗濯物を干した後、視線を感じて下を見た すると………兄が…見上げていた 視線が合うと……悠太は動けなくなった 「悠太どうしたの?」 部屋の中へ帰って来ない悠太に焦れて女性がベランダに出て来る 女性は、悠太の視線を追い……康太を見た 「弟さん……?」 女性が聞くと、悠太は首をふった 「兄…」 女性は悠太のお兄さんなら、あの小さいのじゃないと思い、どの人?と聞いた 「真ん中でこっちを見ている人…」 悠太に言われ見ると……やはり小さい男の子が立っていた 「彼は弟でしょ?」 「兄です。」 「嘘…」 女性は……なら目の前の彼は幾つなのか… 今更ながらに聞いてみた 「悠太は幾つなの?」 「中3…」 「嘘…」 女性は若いと思ったが…それ程若いとは思わなかった 康太は…悠太に背を向け歩き出した 「良いのかよ?康太 」 「良い…悠太の果ては変えられなかった あの日ネズミの国に行ってれば良かったのに…この出逢いは悠太を変えてしまう…」 康太は早足で歩いた 「康兄…待って…」 悠太が康太を追って走って来た 聡一郎は、近寄る悠太を……殴った 「てめぇ下半身ばかり暴走しやがって…」 聡一郎らしからぬ言葉を吐き出した 康太は兄として悠太に引導を渡した 「飛鳥井を棄てろ悠太…オレはお前の所有権をたった今放棄する。 お前は好きに生きろ…オレはもう要らない…」 康太は、悠太を棄てて…歩き出した もう振り返る事はなかった 一生は、康太の肩を掴み…止まらせた そして近くにあるファミレスに康太を引き摺り…入って行った ソファーに座らせると聡一郎は注文をしドリンクバーでジュースを運んできた 「康太…本気か…? 本気で悠太を棄てるのか?」 「所有権の放棄を家族に伝える… 悠太は居場所が無かったのかもな… だから女に自分の居場所を求めた… ある意味オレの所為かもな だったら好きに生きさせるしかねぇじゃねぇか」 康太の電話が鳴り響き、康太は電話に出た 『康兄…何処にいるの…ねぇ話をしてよ!』 一生は携帯を取ると話始めた 「悠太、お前は何故学校にも家にも帰らず… 女の所に入り込んでヒモみたいな暮らしをしてんだ? 康太はお前の所有権を放棄した。 お前は好きに生きろ。 飛鳥井を棄てて…好きに生きろ…って 事だ」 「一生君…俺は飛鳥井を棄てねぇ!」 「なら棄てなきゃ良いわじゃねぇの? お前の所有権は放棄された。 お前は母親にもそう言えるのか…じゃあな」 一生は電話を切った 康太は立ち上がると「母ちゃんの所へ行くわ…」と、告げた 「ならば俺達も着いて行く。 聡一郎、タクシーを呼べ」 聡一郎は店員にタクシーを呼んでくれと頼んだ 店にタクシーが呼びに来ると、四人はタクシーに乗った 飛鳥井建設の前で四人は車を降りると 受付嬢に母 玲香は今在勤か?と問い掛けた 受付嬢は役員の在勤表を見て 「出社されています 今お聞きするので待ってて下さい」と言い玲香に康太の訪問を伝えた すると玲香は直ぐに部屋へ来るように伝えた 康太達はエレベーターに乗り、最上階まで向かった そして、母 玲香の部屋のドアをノックした 玲香はドアを開けると、康太達を招き入れた 「話しは何なんじゃ?康太? どうしたのだ?」 元気のない康太へ話し掛けると、康太は玲香を見上げた 「母ちゃん、すまねぇ…悠太の所有権を放棄する。」 「何故じゃ?」 「オレが所有してると…悠太は落ちて行くばかりだ…。 所有権を移すしかないと思う オレは…悠太の女を食い物にするような行為が嫌だ… このままだと…軌道修正も出来ない処へ行ってしまう… オレは離す悠太を。 本当は海外に行かせて勉強させるつもりだったが、悠太の果ては変わってしまった 当分…アイツの顔は見たくない…」 「康太…」 「やっぱ…オレは神じゃねぇからな…未来は変えられなかった… 悠太をネズミの国へ連れてって未来を変えようとしたんだが…変えられなかった。 すまねぇ母ちゃん…悠太の軌道修正をしてやってくれ…」 「家にも帰らず女三昧か…アホよのぉ」 「腹には悠太の子供がいる…」 「嘘…あやつは中3だぞ!」 「オレは見えてる果てを変えようと目論んだが果ては変わらなかった… オレは所有権を棄てる事でしか悠太を救えない」 「康太…」 「オレは今後一切、悠太に関しては何も言わない。了承してくれ母ちゃん」 「仕方あるまい…」 康太の電話が鳴ると、康太は着信を見て、玲香に渡した 玲香は携帯を手にすると通話ボタンを押した 「悠太、康太は所有権を放棄した。 もう康太は何も言わぬ。 康太に変わって今後は我がお前を育てるとしょう。 女と別れて参れ。 それが出来ぬのなら…飛鳥井を棄てられよ」 『嘘…』 「学校も行かず女のマンションで暮らすような不埒な輩は飛鳥井には要らぬ。 何処でも好きな所へ行けば良い…。 我のいうことが聞けないのなら、飛鳥井を捨てて何処へでも行けば良い。 還って来るなれば覚悟を決められよ!」 玲香は言うことだけ告げると電話を切った 「康太、悩むでない。」 「母ちゃん…すまねぇ」 「お前の所為ではないわ」 康太は悲しげに笑った 「なら母ちゃん、学校へ行くかんな」 「あぁ行って来るがよい!」 玲香は康太を送り出した 康太は何とか気持ちの踏ん切りを着けて、玲香の部屋を出た エレベーターに乗り一階まで降りると、そこには悠太がいた 康太は無視して悠太の横を通り過ぎる 悠太が近寄ろうとすると、一生や聡一郎や隼人に、阻まれ近寄ることすら出来なかった 悠太は最上階まで行くと、瑛太がドアから出て来る所で…瑛太は悠太を凝視した 「悠太?何処へ行くのですか?」 瑛太が聞くと…悠太は玲香の所へ行く…と、告げた 悠太は悲しい位に萎れ、トボトボ歩いていた 瑛太は放っておけなくて、悠太と一緒に…玲香の部屋へ行った 玲香の部屋のドアをノックすると玲香が現れ、ドアに立つ人間に目を向けた 玲香は「康太の次は悠太か…」と呟いた 瑛太は、康太が来ていたんですか?……と聞き 「今、何処にいるんですか?」と玲香に尋ねた 「もう帰ったわ。 悲しんで…瑛太がおったら号泣だったかも知れぬな…。 おらんで良かった。 我は康太の涙は見たくはない…」 「母さん…康太は何しに来たのですか?」 「悠太の所有権の放棄の為に来ておったのじゃ。」 と、玲香は信じられない現実を告げた 「康太が悠太の所有権を放棄…何故ですか?」 瑛太には信じられなかった あれ程…弟の為に康太はして来た… 康太の絵図に…悠太は乗らなかったのか? 何故…? 「康太が悠太の為に始めた桜林祭で、伊織も康太も仲間も動いておる時に 悠太は家にも帰らず、学校にも行かず女の所でヒモみたいな生活をしておったそうじゃ 康太は悠太を軌道修正出来ないのなら手離す…と、言いに来たのじゃ 康太に辛い現実を見せおって…… 康太で無理なら、我が出るしかないではないか。」 玲香の言葉に瑛太は康太へ想いを馳せる 「康太は朝から悠太を見に行ったのですか? どんな気持ちで…悠太の姿を…見に行ったか… 悠太は考えなかったのですか? 康太で軌道修正出来ないのなら…所有権は放棄するしかない…… そんな悲しい決断を…康太にさせた…何故? お前は康太の絵図に乗らなかったのか?」 瑛太は胸が痛かった 精一杯…康太は悠太を愛していた… 「康兄に…飛鳥井を棄てろ…って言われた」 玲香は悠太を殴った 「当たり前じゃ。お前は幾つじゃ! 飛鳥井に居場所がないから、女の所へ出向いたんだろ? ならばもう…康太はお前は見ない…。 康太はもう…お前は見やせんぞ。 今すぐ女と別れて家に帰れ! これは命令じゃ。 飛鳥井を棄てるなら出て行け。 出て行かぬなら別れて戻れ。解ったな!」 玲香は厳しい現実を悠太に告げた 瑛太は静かに悠太を見ていた 悠太は現実を…今、想い知る 瑛太は悠太に「飛鳥井に君の居場所はなかった?」と問い掛けた 悠太は「そう言う訳じゃない…」と答えた 「なら何故…君は…外へ居場所を移すのだ?」 「……瑛兄…」 「康太の愛で守られて、君は何時か飛鳥井の設計士になるのではなかったのか…」 悠太は瑛太の顔を…見た 「康太は所有権を放棄したなら…もう君には近寄らぬ。 君に関心すら抱かない…君とは無関係になる それが所有権の放棄だ。 君は何時も康太に守られ、その存在を感じていた筈だ。 だが康太は所有権を放棄した……。 君はそれに堪えられるのか?」 「もう康兄は俺を見ないのか?」 「君が自ら招いた現実でしょ?」 悠太はガクッと崩れて床に座った 「飛鳥井を棄てるには、君の年では無理でしょ? 女と別れて、母さんに軌道修正してもらいなさい。」 悠太は頷いた 「ならば、明日からは会社に仕事に来なさい。 学校が終われば仕事に来る。 それがお前の飛鳥井での存在理由。 嫌なら寮にでも出て行け。」 母は厳しい言葉しか投げ掛けなかった 「俺はもう…康兄のモノにはなれないの?」 瑛太は悠太を立ち上がらせ……殴った 殴られた悠太は壁へ弾き飛ばされた 「弟の軌道修正は兄の務め。 私は何時も康太が道を違えたなら、こうして殴って正して来た 君を殴らなかったのは、康太が君を正すから! だが所有権が移ったなら容赦はしない。 君は…自ら、康太の腕の中を放棄したのだからな…」 瑛太は言い切った 玲香は静かに涙していた 「康太はな、私に言った… オレは神じゃねぇからな悠太の未来を変えられなかった…ってな。 お前はネズミの国に行っておれば…と、悔やんでおった。 康太は絵図を引いてお前を…起動に乗せた… だが…未来は変えられなかった…と、言う訳だ。 お前の果ては変わった。 康太の絵図は無駄になった…仕方がないわの…」 「康兄に逢いたい…話をさせて…」 悠太は訴えた 玲香はどの子も我が子だった… 変わりなく…どの子も愛していた 「ならば、今晩は、家に帰ると良い。」 玲香は静かに言った 「もう家に帰る…」 と、悠太が言うと 「お前のもっておる鍵では家にも入れぬわ 夜まで此処で仕事をしろ。 そしたら家に連れ帰ってやるわ」 と玲香は言い放った 「鍵を変えたのか?」 悠太は唖然と呟いた 「我が家はリフォーム中じゃ。 鍵は替えると言わなんだか?」 悠太は、あっ…と、思い出した 瑛太は康太に電話を入れた 中々電話に出ない康太に想いを馳せる 少し電話を鳴らし続けると、康太は電話に出た 電話を出た、瑛兄…の声が…儚い 「康太、今どこだ?」 『もうじき学校。』 「康太、兄と話さぬか? 兄の手は…要らないのか?」 瑛太は優しく康太に話しかけた 「今からそこへ向かう。待ってなさい。」 瑛太は電話を切ると、玲香に 「康太を見てきます。」と、告げ部屋を出て行った 桜林学園に着くと、康太は一生達といた 一生達は瑛太の姿を見ると、校内へ入っていった そして康太は瑛太のベンツに乗り込んだ 瑛太の車が、学園を通り抜け走り出す 瑛太は静かなカフェの近くの駐車場に車を停めると 康太を連れてカフェへと向かった 外の涼しげな位置にある席に座ると、瑛太は軽いランチを頼み、プリンも頼んだ 「会社で悠太に逢った お前は悠太の所有権を放棄したのか?」 瑛太は康太に問い質した 「悠太の果てが変わった…オレの失態だ。」 「どうなる予定だったんですか?」 「ネズミの国に行った日、あの日が悠太の分岐点だった。 オレは悠太の絵図を書いて軌道に乗せた だが悠太は乗らなかった 悠太は飛鳥井で居場所が無かったのか…? 悠太の果ては変わった… もう元へは戻せない 此処で手離さねば…悠太は外へ抜ける そしたら悠太は居場所すら失う… オレはそれは避けたい ならばオレは引くしかない…」 「康太…私はさっき悠太を殴って来ました…… 軌道修正は兄の務め。 悠太は女に母を求めたのか…?」 「悠太は外にオレを求めた。」 「……?外に康太を……意味が解りません?」 「オレを抱けないから…抱ける器を求めた そして女の胸に母を求めていたのもある。 子供の悠太をオレは母親から引き離した… オレは罪を重て、悠太を潰した」 ……悠太は康太を欲していた? 「悠太の女は子供を産む… だが飛鳥井には引き取れない… 引き取れば…飛鳥井は終焉に向かうしかなくなる……」 瑛太は言葉をなくした 「オレの子供は四人 瑛兄の子供は、瑛兄の分身 オレの子は瑛兄の分身を助け、明日を築いて行くのだ… その中に…悠太の子は含まれてはいない… 飛鳥井に子供を残せない… だがオレには……あの子は要るが…… この子は要らない…… なんて選別は出来ない。 ならばオレと無縁になるしかあるまい 」 無縁ならば… 飛鳥井の為に切らねばならぬ想いが痛かった 総ては飛鳥井の為…家の為 康太の飛鳥井での存在理由は、辛い現実ばかりだ… 「オレは家に帰って、じぃちゃんと相談する どの道、夜には話し合いだろ? オレを飛鳥井の家に送ってくれ瑛兄 」 「食べたらな。食べなさい康太。」 瑛太は康太の頭を優しく撫でた すると…康太は瑛太の顔を…まじっと見詰めた 「どうしたのだ?康太 」 「瑛兄が優しいから…オレを許すから…」 「お前は何も悪い事はしていない。 お前は飛鳥井の家の為にしている… 総ては飛鳥井の為に……お前は傷付いている 兄として、傷付いた弟を慰めるのは当たり前ではないのか?」 康太は優しく慰められ包まれる 「瑛兄…」 瑛太は康太の涙を拭った 悠太を切って平気でなどいられる訳などないのだ 康太は瑛太とランチを食べると、飛鳥井の家に送ってもらって帰って来た 家に入ろうとすると、電話が鳴り着信を見ると榊原からだった 康太は電話に出て、伊織…と言うと 榊原は、今どこにいるかを聞いた 「オレは家にいる 今日はもう…学校には行けない 家にいる お前はお前の仕事をしろ オレはオレの仕事をしている 伊織、オレは仕事をしてるんだ これから、じぃちゃんの所へ行かねばならねぇ。」 「康太…僕に君以上の大切なモノなんてない」 「後で話す。総てを話す オレはお前に隠し事などしねぇ。 だが飛鳥井の家の為に動く時は、事後報告になる時もある。 そう言う時は許せ伊織…」 「なら、後で話して下さい。 教室に君達の姿がなくて、戻って来た一生達の中に君の姿だけなかったから…心配になりました。 悠太の事で動いてましたか?」 「お前の洞察力はすげぇな。そうだ。 帰ったら総て話す。 お前に隠し事は一切しない。 愛するお前に、隠さねばならす事は1つもない 」 「……帰ります。待ってて下さい!」 榊原は、言いきり電話を切った 康太は玄関を開けると、玄関の上り框に腰を下ろし、榊原を待った 帰って来てると言えば、帰ってくるのだ…あの男は。 少し待っていると、物凄い勢いで玄関の鍵を開け、ドアが開けられた そして玄関に入った榊原は、上り框に座る康太を見付け、康太を抱き締めた 「心配させて…」 「すまん…伊織 」 「先に僕を慰めなさい。源右衛門の所は後で…」 榊原は康太を立ち上がらせると、階段を上って自室へ向かう 自室のドアの鍵を開け中へ入ると、寝室へ康太の腕を引き連れて行く 寝室の鍵をかうと、榊原は康太を抱き上げベットへ放り込んだ 榊原は制服を脱ぎながら、ベットに膝を乗せた 「帰って来て、康太の顔を見るまで、心配で…堪らなかなかった 」 「学校は?」 「放課後、戻ります。」 制服も、下着も総て脱ぐと、榊原は康太の制服も何もかも脱がせ…全裸にした 榊原の性器は…既に赤黒く勃ち上がっていた ゆっくりとベットに上がり、体を重ねる 合わさった体は…互いを求め…引き返せれなくなる 激しい接吻を貪り合いながら、榊原の指は康太の尖った乳首を弄る 康太はそれだけでイキそうになった 「あぁ…ダメぇ…イッちゃう…」 乳輪を弄る指の淫靡な動きに…腰も動く 腰を動かせば…榊原の鍛えられた腹に擦られ …刺激が直撃になる 榊原は枕元に置き忘れてあった康太のハンカチを取ると、康太の性器に結び付けた 「嫌ぁ…伊織ぃ…おかしくなるぅ…」 榊原は康太の足を広げ、ローションを垂らした 「挿れる前にイクと、後が辛くなります…」 榊原は康太を這わせお尻を高く上げさせると、穴を目掛け貫いた 後ろから繋がり、康太の体を持ち上げ榊原の膝の上に乗せ腰を動かす 康太は仰け反り、イカせて…とねだった 背後から抱かれ貫かれた体が激しく上下する 榊原の肉棒で串刺しになり身動きの取れない康太は、成すが儘… 榊原が康太の性器に縛り付けたハンカチを外すと……康太の性器は精液を撒き散らした 「ぁ…ぁぁん…伊織…ヒドイ…」 榊原も康太の中でイッた…ピクピクと震える性器を榊原は引き抜くと…… 康太を仰向けにして、白濁が零れる穴の中へ、再び挿った 「どうして酷い? イクなら一緒が良いでしょ?」 康太の中で…ドクンっと大きく育つ榊原の肉棒に…康太は榊原に抱き着いた 「一緒がイイけど…辛かった…イケないのは辛い…」 康太のうるうるの瞳が榊原を、見詰める すると康太の中の榊原が、硬くヒクって動いた 「…んっ…また来るぅ…伊織…大きいのがまたクルぅ…」 康太の身体は、榊原に掻き回させないとイケなくなっていた 後ろの刺激を受ければ…自分の性器を擦らなくてもイケる様に…開発されていた 康太は激しくなる快感に榊原にしがみついた 康太は…散々、榊原を身体で慰め…疲れ果てていた 浴室で身体を洗われ、体の中に残っている榊原の精液を掻き出され… 榊原の膝の上に乗って湯船に浸かる頃は…… 瞳が…閉じてしまう位…疲れていた 「伊織、話をすかんな」 康太が言うと、やっと満足したのか、康太の唇にキスをして湯船から上がった 浴室から出ると、互いに体を拭き合い 康太の髪をドライヤーで乾かすと、自分の髪も乾かした 康太はラフな私服に、榊原は制服に袖を通し 支度が済むと榊原は康太を抱き上げ膝の上に乗せた そして悠太の話を全部、榊原に話した 榊原は総て聞き、康太の想いに胸を痛めた 「さてと、じぃちゃんの所へ行かなきゃな 伊織は学校に行かなきゃななんねぇんだろ? 」 「源右衛門の所まで一緒に行ったら、康太も行くんですよ学校に 」 「えっ…何で?」 「桜林祭は走り出してますよ。 康太がその目で見なくてどうするんですか?」 「……なら制服着るかんな」 「着させてあげますよ 」 榊原は笑って、服を脱がせた そして紅い痕が残る膚に、制服を着せた 胸にはお揃いのネックレスが光ってた 肌身離さず着けてる神器の着いてるネックレスが、康太の制服の中へ消える 康太と榊原は自室を出ると一階の父、清隆の部屋のドアをノックした この部屋に今は源右衛門が住んでいる 部屋のドアが開くと、源右衛門が立っていた 「入れ。」 部屋に促され、康太と榊原は入る 清隆の部屋のソファーに座ると、康太は口を開いた 「悠太が軌道を違えた。 オレはそれを阻止出来なかった…。」 「所有権を放棄したか?」 源右衛門は康太を見て言った 「オレは悠太を叔父、隆彦の様な設計士にしたかった…。 オレは絵図を描いて軌道に乗せた… だけど、オレは悠太の果てを阻止は出来なかった。 このまま行くと飛鳥井の未来図が狂う。 それを阻止するには…オレは悠太と無縁にならねばならない。 オレは悠太の所有権を放棄する。 それをじぃちゃんに言っとかなきゃな…」 源右衛門は目を瞑り、黙って聞いていた 「仕方あるまい。 お前の果てと、現実が狂うなら切り捨てねばならない。 それが飛鳥井の為、家の為。違えれはしない」 「オレの子供はもうじき総て形になる頃だ 大切な時期に、何故こう言う事がおきるのか…」 「仕方があるまい。 総て意味があるのだ 悠太の子供も産まれるには意味がある だがお前の果てに歪みが出るのなら、仕方があるまい… 悠太の所有権を放棄するしかあるまい で、悠太はどうなるのじゃ?」 源右衛門が悠太の果てを聞く 「悠太は…此処でシメなければ、男も女も、節操がない。 このままでは何時か刺される。 瑛太の容姿に蒼太の気質。 モテるのを良い事に、節操なしだ だが反省して学校に戻れば悠太は化ける。 そしてオレは悠太を生かして、もっと化けさせる。 結局、オレは所有権を全部は手離さない ケジメだ。 此処でケジメを着けねば、何度失敗しても出来ちまった子はオレが引き取ってくれる… みたいな甘えが出る。 だからな、一度手離す 」 「あれの子供の行く末は?」 「四宮聡一郎が、子供を引き取り四宮興産の社長に据える。 その定めの為に生まれて来る子だ。」 「聡一郎は子は成さんか?」 「彼は、子孫は遺したくないから、子供は作らない 出来ないのではなく、作らない。 呪われた父親の血を…受け継がせる気はない それが聡一郎の想い。」 「ならば、必然だな。」 「必然です。ですが悠太にはお灸が必要。」 「ならば今夜、泣かせるしかあるまい 」 「じゃ話はそれだけだ。 オレは学校に行く。」 「…お前等は血が濃すぎじゃのう 」 源右衛門は笑った 血を交えば、情は深まる…互いを見失わない絆は深まる 「オレが女なら子を成すのだがな…」 「子はなくとも、お前等の繋がりは強い それでよいではないか 」 源右衛門はガハハッと笑った 康太と榊原は源右衛門に一礼して部屋を後にした

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