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第10話 所有権の放棄②

康太は榊原と共に学校に向かった 学校に戻ると一生達が待ち構えていた 「遅せぇよ!康太 」 一生がボヤく 「伊織を癒すのに時間がかかった 」 「そう言うのは夜やりやがれ!!」 一生がボヤく 聡一郎は、一生を黙らせ康太と共に歩き出すと、一生は仕方なく後に続いた 榊原と共に生徒会室に向かうと、兵藤が康太に手を上げた 「時に康太、中等部の執行部の部長はどうしたよ? 新学期以降、休んでるらしいな 」 横に座った康太に兵藤は声をかける 「貴史、耳を貸せ。」 康太が言うと、兵藤は康太に耳を寄せた 康太は兵藤の耳にヒソヒソ…ゴソゴソ…カクカクシカジカ… 兵藤は、頷いて康太の肩を叩いた 「猶予は明日までだ。 残り10日で中、高合同桜林祭、本番だ。 くれぐれも違えるな。 ゼッケンはもう出来た。 後は管理プログラムをお前が作り、軌道に乗せてくれ 」 「解ってる。 総てはオレの想いのままに。 それがお前がくれるオレへの桜林祭だろ?」 「そう。解ってんじゃん」 兵藤と笑い、康太の頬にキスをした 「悠太が出席する合同練習までにプログラムは完成させとく。 合同祭前に生徒を動かしてみるからな。」 「了解。ならば今日は解散だ。」 兵藤の掛け声で、会議は解散になった 席を立ち上がると、榊原は康太の側により生徒会室を後にした その夜は多分号令がかかると想い、康太は応接間にいた 一生や聡一郎、隼人も応接間にいてサンルームの床に寝転がって、ゲームに興じていた 康太は榊原の膝に馬乗りに乗って、榊原に抱き付いていた 康太は榊原にキスを贈る すると榊原は康太と額を合わせ、見詰め合っていた 「伊織、背中がムズ痒い…ちょいとかいてくれ 」 康太が言うと榊原は、笑って背中をかいてやった 康太は服の釦を外し、服を腰まで落とした 「虫に刺されてる?」 榊原は紅い痕の散る背中を見た そして手で擦る 「何もなってませんよ ?」 榊原の腕が背中に回り…額を合わせ見詰め合う様は…… ベットの延長線にいるかの様に淫靡だった その時、応接間のドアが開き………… 瑛太は苦笑して 玲香は、康太の艶のある姿を初めて目にした 乳首のピアスもヘソのピアスも玲香には初めて目にする康太だった 清隆は…どうしたものか…と、焦り 悠太は…兄の…姿を、見詰めていた 「あっ、父ちゃん。 母ちゃんも、瑛兄も、不良少年悠太も、お帰り 」 康太が言うと、玲香は 「最中か?そう言うのは部屋で遣りなさい」 と、目のやり場に困ったわ…と、苦笑した 「母ちゃん、一生も、聡一郎も隼人もいる空間で…犯る趣味はねぇよ。 背中をかいてもらってたんだもんよー」 言われて見てみれば、ガーデンテラスに寝そべりゲームをしている一生や聡一郎、隼人の姿があった 康太は榊原の上から降り、服の釦をかった 一生は康太の横に行き 「お前らはエロいんだよ!んとによぉ」 と、怒った 康太は笑っていた 笑って足を組むと、さぁ始めようぜ。と、本題に入った その顔は、甘い康太ではなく飛鳥井家の真贋、そのものだった 一生の後ろに源右衛門も座っていて、瑛太も玲香も清隆も悠太もギョッとしていた 「じぃちゃんもいんのに犯るかよ。」 康太は笑った 玲香は「もし最中でも、お前等は夫婦。 仕方あるまいて。しかも新婚じゃからのぉ」と、笑った 玲香は暗に康太と榊原がいて、二人がいてセックスするのは当たり前だと、認めているのだと、皆の前で告げたのだ 聡一郎は「覇道が詠める康太が、皆が来るのを解っていて、服を脱ぐ方がおかしいと何故解らないのかな…。 敢えて人前でイチャイチャしない康太が、何故服を脱ぎ伊織と淫靡な空気を醸し出しているか、何故誰も解らないんですか?」 と、怒りを露に言葉を発した 玲香は「そうだわな。驚いてしまった。 まさにそれが康太の目論みとも知らずにな…」 と現実を告げた 康太は笑って何も言わなかった 「さてと飛鳥井玲香、本題に入られよ!」 康太は母、玲香に丸投げをした 玲香は溜め息を着き、仕方あるまい…と、始めた 「康太が悠太の所有権を放棄した だからな、こうして皆に集まってもらったのじゃ!」 玲香が言うと、悠太は康太の前に土下座をした 「悠太、総てがもう遅い! 決め事は曲げられねぇ!」 「俺がバカだった!康兄…許して!」 悠太は謝った だが康太は…悠太を見なかった 悠太に目を向けなかった 「オレがお前の為に贈った桜林祭を捨てて、お前は愛欲の日々か… 子供が出来てもオレはもらわねぇぞ。 オレの子供はもう決まっている。 お前の子供が加わったら…飛鳥井の終焉は加速する。 そしたらオレは伊織と一生達と共に、この家を出る。 オレの子供に悠太、お前の子供は今後も含まれる事はない。 オレの絵図に乗らなかった、お前は、もうオレのものじゃねぇ。 総てが遅くて、総てお前の招いた事だ。 オレに土下座すんじゃねぇ もう遅い。それが現実だ!」 康太は玲香を見続けて、悠太は見ることなかった 源右衛門が立ち上がると、康太の前で土下座していた悠太を持ち上げた 「土下座は誠意に非ず 」 源右衛門のキツい言葉を食らわされる 榊原は、珍しく悠太に声をかけた 「悠太は中、高合同桜林祭の事は一切頭になかったですか? 葛西は一人で必死に頑張ってますよ? そんな葛西の事は頭になかったのですか? そして君の今後の為に肋骨を折った、康太の苦しみは、君には伝わってなかったのですか? 倉持に拉致られた君を助ける為に、康太は門倉を育てた様なものなんですよ そんな康太の事は、全く気になりませんでしたか? ならば、君は康太の保護から出て現実を知るべきでだと僕は想います」 榊原から言われ…悠太は現実を突き付けられた 「伊織君…」 悠太は唇を噛んだ 聡一郎は、悠太の前に行くと… 悠太を殴った! 「自分の足元も見えねぇガキが何、女のヒモなんてしるんですか! お前には学ぶべき事がある筈だ 総て捨てて逃げ出す気だったんですか? 逃げ出すに半世紀早いわ 今捨てて投げ槍になって、お前は後悔しないのですか! 」 四宮聡一郎の愛だった 飛鳥井の人間は目の前で、四宮聡一郎に殴られてる悠太を見ても、止めたり責めたりはしなかった それ位、聡一郎は飛鳥井の家に溶け込み、康太の一部になっていた 康太は聡一郎の名を、フルネームで呼んだ 「四宮聡一郎 」 聡一郎は康太を見た 「何ですか?康太 」 「お前の目に、飛鳥井悠太はどう写る?」 「ナリはデカいがガキですね。 コイツには教える事が沢山ある 康太が甘やかすから、悠太は甘えてるんですよ! 康太が何でも助けてくれるって、甘えて堕落している ガキだから、怠惰な場所が楽だから留まろうとした。 総ては、康太が作った罪だ。」 聡一郎はキッパリ言い切った 「ならば、オレは鬼にならねばな!」 康太は悠太をやっと見て、ニャッと笑った 「聡一郎、オレは一時的に悠太の所有権を放棄する。 オレが悠太をクズにしている事実は変えられないみたいだからな…」 「それが良いでしょう。 今、此処で悠太に現実を教えねば、悠太は堕ちるのを止めはしない!」 「そこでだ!父ちゃんも母ちゃんも瑛兄も、じぃちゃんも、聞いてくれ。 嫌…、オレの言うことを聞いてもらう!」 それこそが、康太の狙いで、悠太を生かし… 飛鳥井の軌道を違えない為の、苦肉の策だった 「聡一郎。お前に少し預ける。頼めるか?」 聡一郎は康太を見た 「預かっても良いが、僕は殴るよ!」 「好きにしろお前に預けた以上は何も言わん」 「ならば、尻を叩こうかな!」 「好きにしろ。 そしてオレに(何時か)還してくれ。」 康太は聡一郎に手を伸ばした 聡一郎は康太を抱き締め 「やはり君は甘いんですよ。」 「許せ聡一郎。オレは懐に入れた奴には、とことん甘いんだ。」 「僕は君に還すまで預かります。 そして悠太の子供は僕がもらいます。」 「聡一郎の想いのままに。 どの道、飛鳥井を名乗れば飛鳥井は終焉を迎えるしかねぇ…」 「ならば必然なんでしょ!」 聡一郎は立ち上がると、飛鳥井の家族へ深々とお辞儀をした 「飛鳥井悠太の所有権は、僕が持っても宜しいですか?」 と、家族に問い質した 玲香は「康太の決めた事なら、我等は文句は言わぬ。」と、認めた 清隆も「聡一郎、頼めるか?」と声をかけ 瑛太は「やはり、手綱を離さぬか… 手綱を少し強め、何時かお前に還るのか…。」 と、康太の想いの深さを口にした 「飛鳥井の家族に異存はねぇと言う訳だ。 ならば聡一郎の想いのままにしろ…」 康太が言うと、聡一郎は身の毛もよだつような微笑みを浮かべた 「悠太!」 聡一郎が名前を呼ぶと、悠太は立ち上がり 「はい。」と返事した 「女と別れたのか?」 「……まだ正式には…」 「ならば、行くか。 康太と伊織。着いてきなさい。」 悠太がモジモジしてたら、聡一郎は悠太のお尻を蹴り上げた 「ケジメを着けろ悠太! 逃げ道は断ち切る。 僕は逃げ道ばかり用意する馬鹿は嫌いだ 康太は例えその道が断崖絶壁でも、その道を行く。 道は一本。 信じた道だけで良い。 お前が飛鳥井で生きてく道は僕の言う事を聞く以外ないんですよ。」 聡一郎の剣幕に悠太は腹を決めた 玲香は「この部屋に入った時に、康太の濡れ場を見せられた時に、やる気は失せてる…ったく憎いな康太。」と愚痴を溢した 康太は笑って何も言わず立ち上がった 「聡一郎、自ら運転してく? それとも伊織が運転してく?」 康太が聞くと、一生が康太に抱き着いた 「俺を忘れるな!康太 俺と伊織で2台出す そしたら全員乗れる 帰りはコーラ飲み放題だ 康太にはアイスもつけてやんよ」 一生はそう言い隼人も促した 「なら母ちゃん行ってくるわ。」 康太はそう言い、応接間を出ていこうとした 瑛太が榊原を呼び止めた 「明日は暇ですか? 車を君に贈ります 飛鳥井の総代として、君に車を買わさせて貰います。 見に行きましょう。」 榊原は「はい。なら会社に出向いた方が良いですか?」と、問い質した 「なら待っています。」 と、瑛太は榊原の肩を叩いた それを切っ掛けに、聡一郎は歩き出し、悠太は抵抗もせず聡一郎に従った 康太が朝、見上げていたマンションのエレベーターに乗り込んだ そして彼女の部屋の前に来ると、ベルを鳴らした 暫くしてドアが開き悠太の顔を見て彼女は嬉しそうな顔をして…… 他の人間を見て何かを悟った 「話があるなら入ってよ。」 彼女は皆を招くと、ドアを閉めた 彼女はやって来た人間に目をやった 皆、悠太より大人でイケメンだった そして一番小さくて、可愛い少年が…やはり兄なんだと思った 「ゆーちゃん、この方達は?」 「此処にいるのが俺の上の兄 そしてその横に立っているのが兄の伴侶。そして兄の友人です。」 「一条隼人……」 兄の友人の中に一条隼人を見付け…彼女は呆然となった 康太は口を開いた 「悠太はまだ中学三年生だ。 此処で終わる人生じゃねぇ。 手離してくれねぇか?」 「解っています…」 「もし…妊娠してたら、連絡してくれないか?君を悪いようにはしない 」 「産みたいって言ったら産めるんですか?」 彼女は揶揄して口にした 「あぁ産めば良い。 だが、君の人生は長い。 子供はもらう。 そして君には身を立つだけの事はしょう。 だから連絡をしてください。」 康太は名刺を手渡した 彼女は悠太に背を向けた 「もう此処へは来ないで頂戴。 私も貴方を追わないわ。お別れね悠太。」 悠太はごめんね…ごめん…と謝った 聡一郎は悠太を促し外に出た 康太は彼女に、生む気なら必ず連絡をしてくれ…と、告げ、マンションを後にした 帰りは行き付けのファミレスへ寄って、康太はポテトも出してもらい満足していた だが悠太は項垂れていた 「お子様は本当に巨乳が好きだな」 と、一生は辛辣な言葉を投げ掛ける 「もう二度と、軽はずみな行動はしないと約束しなさい。 相手にあんな顔をさせてはいけない。 解ったか悠太」 悠太は聡一郎の言葉に 「約束するよ聡一郎君。」と、約束した 康太は無視だ。 悠太の姿すら目に入ってない それが、こんなに辛いことだなんて想いもしなかった 「康兄…ねっ…お願いオレを見てよ…」 康太は見ない しかも、康太は誰かに電話して 「お前んちの近くのファミレスに居んからよ来いよ。」 なんて電話をしていた 暫くして現れたのは、中等部生徒会長、葛西茂樹だった 「康太さん、捕まえて下さりありがとうございました」 葛西は康太に頭を下げた 「兵藤貴史は1日の猶予しかくれなかったからな。 明後日、中等部、高等部の生徒にゼッケンを着けて、動かす作業もあるしな、遊ばせとく時間なんかねぇんだよ!」 「僕一人では…無理です。 今回本当に解りました。」 「学校に戻せば、動き出す。 前よりも凄くなる…。 だが、オレが悠太の事で動くのは今回で最後だ。 ペナルティーを与えねぇとな 」 「悠太には一番辛いペナルティーだ…」 「仕方がねぇ。 それが定め。違えれはせんのだ…」 「明日から悠太は来ますか?」 「行く。それしか道は残ってねぇ。」 「ならば、それで良いです。 本当にありがとうございました。」 葛西は康太に頭を下げた 「葛西共にありたいなら、友の矯正はせねばならぬ…。解るな?」 「解ります。 今度巨乳に行くなら鉄拳を御見舞いしてやります。 コイツは当分…恋人なんて不要でしょう。」 康太は笑った そして、話は終わったと席を立った 「葛西、送ってってやる来い。」 榊原はレシートを持つと、会計の方へ行った 「一生、オレは葛西を送ってから家に帰るわ。」 康太は、悠太に背を向けた この兄は…甘くはないと、一番知っていたのは自分なのに…… 康太は榊原と一条は、葛西を送って帰って行った 康太がいなくなると、一生は悠太に 「康太を苦しめるんじゃねぇよ!」 と口を開いた 「ごめん…康兄への気持ちが募りすぎて…逃げた…」 悠太はもういない人間を見詰め…目を閉じた 「康太の邪魔をするなら、次はお前でも容赦はしねぇ。解ってるな!」 緑川一生と言う人間の視線は総て、飛鳥井康太が動けるか…を、見定める為にある 総ては康太の為…… 「一生君、解ってる。」 悠太が答えれば、もう何も言わなかった 「ならば行きましょうか? 寝る前に隼人の勉強を教えねばなりません」 聡一郎は立ち上がると、歩き出した 悠太と一生がそれに続きファミレスを、後にした

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