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第15話 桜林祭 前日
9月19日 中、高合同桜林祭 前日
悠太に叩き起こされ、キッチンに行くと、朝食が出来ていた
胃もたれの瑛太と一生、榊原、聡一郎に力哉は、珈琲にサラダだけもらい
康太は朝から、ご飯に味噌汁、納豆に沢庵を食べていた
ポリポリ…何時もの音を立てて、康太が朝食を取る
康太は、やっとこさ桜林祭の前日まで来れて、あと一息…と、気力を溜めた
悠太は、榊原に目をやった
榊原は穏やかな顔をしていた
生徒を恐怖に陥れ大魔神と呼ばれていた……面影もなかった
「瑛兄、寝不足か?
あんな時間まで起きてるからだよ…」
康太は眠そうな瑛太に声をかけた
「眠いですが……そんな眠そうな顔をしていたら佐伯に怒られます」
瑛太はキリッと顔を引き締めた
「瑛兄のせいで何時も恋人と別れたって……
佐伯、ボヤいてたかんな…」
瑛太は嫌そうな顔をして
「………それって私のせいじゃありませんよね?」と訴えた
「瑛兄が仕事サボるかんな……」
「私は何時も仕事には支障はきたしておりません……
なのに佐伯が恋人と別れたとしたら…」
瑛太は言い淀み……
「あの性格だからでしょ……?」とボソッと言った
そんな瑛太に玲香は
「瑛太、佐伯の本性はお前しか知らんわ。
佐伯は外では猫を何枚も被り、大和撫子らしいのだぞ。」
と、暴露して笑った
「えーっ!母さん、大和撫子って……
日本語間違ってますよ!
佐伯には絶対に当てはまりません!」
瑛太は母に食って掛かった
康太は仕方なく
「瑛兄…女とはそう言う生き物なのだ。
自分を好く見せたい
他の女とは違う所を魅せたい……ってな
戦略を立てて男を狩るのだ
男は見た目に騙されて狩られる…
この世の摂理だ。文句は言うでない。」
と、たしなめ
佐伯も……女だからな…と、苦笑した
瑛太は、まさか康太からたしなめられるとは……驚き……そして、笑った
「そんなものですか?母さん?」
瑛太に問われた玲香は、だろうな…と笑った
「女とはそう言う生き物だ
瑛太は女より男が多いから、女の扱いが下手なのかもな…」
と、玲香に呟かれ瑛太は朝から暴露され…
そんな事まで、知らなくて良いですよ…と、焦った
康太はそんな瑛太を救済すべく、話題を変えた
「悠太、気合いを入れて、中等部の生徒を護れ!
お前に遺すオレの敷き詰めたレールをお前は乗って伝説を遺せ!解ったな?」
悠太は頷いた
「少し寄り道したけど、俺はやります康兄!」
悠太はまた違う顔になった
聡一郎に鍛えられ、男へ変わって行く
康太は悠太の顔を見詰め、静かに微笑んだ
そして力哉に「昼までに弥勒を連れて来てくれ。」と頼んだ
前回目の前で始まったから、力哉は憂鬱そうだった
「力哉、大丈夫だ
始める体力はねぇかんな
迎えに行けば大人しく乗る。」
康太が言うと力哉は頷いた
朝食を終えると、着替えに行き桜林の制服に袖を通す
後少しで…桜林の夏の制服は、永遠に着られなくなる
康太はスマホを取り出すと、榊原の制服姿を写真に納めた
康太がカメラを向けると、榊原は微笑んだ
「伊織、愛してる 」
康太が言うと嬉しそうに笑った
康太はその姿を、カメラに納めた
榊原は、康太が満足するまで撮らせ
康太は満足すると、スマホを胸ポケットに戻した
それを見て榊原は、康太に腕を伸ばし抱き締めた
「本当に君は、この制服姿が好きですね。」
「伊織のストイックに着る姿が好きなんだ
しかも誰よりもその制服が似合ってる
伊織のその姿もあと少しで見られなくなるからな、残しとく。
でも伊織は何を着ても似合うからな。」
康太が言うと榊原は嬉しそうに、康太の頬にキスをした
康太のスマホの待受は榊原だった
一生曰く…病気…だそうで
榊原のスマホの待受は康太で
一生曰く…マニア…だそうだ。
二人は寝室から出ると、一階の応接間に行った。
応接間には悠太が、康太を待っていた
康太を見ると悠太は深々と頭を下げた
「康兄…、伊織君。ありがとう。
兵藤会長や伊織君が中等部の葛西を助けてフォローしてくれてたって聞いた。
俺のいない間は、康兄も葛西を助け手伝ってくれてたと、葛西が教えてくれた。
だから俺がいなくても、誰も文句も言えない……位だって。
本当に迷惑を掛けました。」
康太は悠太の肩をポンッと叩いて、一階に降りてきた一生達と外に出た
力哉の運転で桜林へ向かう
康太は学校に向かうと3年の下駄箱で、登校してるか確かめた
まだ登校前だと解ると、下駄箱の前で待った
登校してきた兵藤は、目の前に康太が立っていて驚いて仰け反った
「おぉっ! 康太じゃんか…どうしたよ?」
康太は無表情で歩く兵藤を見ていた
そして、康太の顔を見ると、笑った兵藤の顔を……
「結界を張るからな、12時までに生徒を帰せ。
一人でも残ってると…まずいからな。」
「解ってるよ!
生徒会が総力を上げて追い出してやるって 」
「なら良い!」
康太が歩き出すと兵藤も歩き出した
「貴史、後3日だ。」
「気を抜かずにな!
お前は時々ドジだからな! 」
「そんな事を言うのは、この口かぁ……」
康太は兵藤の口を摘まもうと近寄ると、兵藤は逃げ出した
「待てって貴史!」
「待ったら口を引っ張るやん。やだよ!」
「なら蹴るもんよぉ! 」
「余計嫌じゃぁ!」
走って3年の教室まで行くと、疲れ果てていた
兵藤と康太は見合わせて笑った
兵藤はA組の教室の前に立つと、康太に片手を上げて、教室の中へ入っていった
康太は見送り、一生達と自分のクラスへ向かう
「伊織、またな 」
康太は榊原に言うと、榊原は頷き康太の姿を見送った
A組から東矢が顔を上げた出し、康太へ近寄る
「康太、今日は弥勒と共に結界の手伝いをする。」
東矢が康太に楽しそうに話した
「弥勒の所はどうだ?」
「毎日厳しいが、何か生きている実感がしてる。」
「そうか。なら良かった。」
康太は東矢の肩を叩きまた後でな…と、C組の方へ歩いて行った
C組のクラスに入ると何時もの席に座った
康太は隣の席の一生に
「仮装の服を買いに行くもんよー」
と声をかけた
「仮装って何するん?」
一生は着ぐるみでもしたろかしら?と思案する
一生の後ろの席の聡一郎は、白雪姫するからね僕。と…述べた
すると一生は「もうお前に白雪姫は無理やて!
そんな男臭い白雪姫なんておらん!」と文句を言った
聡一郎は怒りに狂い一生の椅子を蹴り飛ばした
「痛てぇな聡一郎ぉ!」
一生が噛みつく
康太は「聡一郎がやりたいなら、少々厳つい白雪姫でも良いがな…とやかく言うな…」と一生をたしなめた
すると聡一郎は……みるみる落ち込んだ
康太は……ヤバッと慌てた
「聡一郎、お前は今格好よくなったんだ!
イケメンの何かを探せ。
オレは伊織に王子様の服を着せるんだ!
兵藤には光源氏の衣装でも着せるか
兵藤が光源氏で、伊織が白い王子にするつもり。」
「なら康太はシンデレラ?」
「違う。オレは悟空 」
「ウェディングドレスでも着れば良いでしょ?」
康太は、サーッとなった
「オレはドラゴンボールやるの!
隼人はワンピースのサンジやるの!」
康太が言うと、一生が乗ってくる
「おっ!良いなそれ!
ならオレはワンピースのゾロやる 」
と、一生が言うと聡一郎も乗って来て
「なら僕はワンピースのローやります
でもあの服…有るかなぁ ?」
授業そっちのけで、仮装の思案にふける
そして昼になると、生徒会と執行部の手により、全校の生徒が帰宅させられた。
康太達は生徒会室に向かい、力哉の迎えに駐車場まで一生が向かった
生徒会室で弥勒を待つ間、康太は兵藤に
「貴史、お前の仮装は光源氏な。」
と告げた
兵藤は「俺もやるのかよ? 」とボヤいたが
康太が、やれ!と脅し、仕方なく光源氏をやる事に……。
兵藤は「お前はお姫様でもやるのかよ 」
と聞くと、康太は兵藤の足を踏んだ
「オレは孫悟空!
隼人と、聡一郎と一生がワンピースのコスプレをする
隼人がサンジ、聡一郎がロー、一生がゾロになるらしい」
兵藤は机に肘を着き、笑った
「良い線いってんじゃん。」
「んでもって悠太が悟飯やるんだ 」
兵藤は言葉をなくし
「衣装は同じだからな、どう見ても……お前が悟飯だろうが……」
と呟いた
康太は兵藤を押さえ込み
「そう言う事を言う口は縫ってしまおうか!」
と、兵藤の口を摘まんだ
「止せ康太……すまん
お前が悟空で良いってば!」
康太が兵藤をうりうりしていると、一生が弥勒を連れて現れた
一生は、兵藤を苛める康太を持ち上げると、椅子に座らせた
弥勒は康太の横に行くと抱き着いた
「康太、逢いたかったぞ 」
懐く弥勒を剥がすと、康太は立ち上がった
弥勒の横には東矢も来ていた
「これはオレから結界の依頼料!」
康太が封筒を差し出すと、弥勒は受け取らなかった
「今回は良い。」
康太は封筒をしまうと、そうか…と笑った
「なら、これで旨いのを食いに行こう
さぁ結界を張れ
これが校内の見取り図だ。
結界を張る場所は赤い線で引いてある 」
地図を弥勒に渡すと、弥勒はそれを見て東矢に指示を出した
「お前等、生徒はこの部屋から出るな。」
そう言い弥勒は生徒会室から出ていった
学園の中の連れ込めれそうな場所には結界を張る
すると見えない壁が出来…部屋に連れ込むことは不可能になる
弥勒は一時間で結界を張って戻ってきた
「康太の指示の場所に結界を張ってきた
外す時は康太が、闇を祓えば総て斬れる様にしてある。さぁ帰ろうか?康太」
弥勒に促され康太は立ち上がった
「じゃ、明日な!貴史」
「おう!お疲れさん
明日は本番一日目だ、遅刻すんなよ」
「なら朝の6時にお前んちに行ってやんよ」
「早すぎる…」
康太は笑い…なら7時な!と言い生徒会室を出て行った
康太の後に一生達が出て……榊原も……消えていた
清家は苦笑した
康太は弥勒と共に駐車場までやって来た
力哉の車に乗ると、一生達も榊原も乗った
「飯食いに行くか?もう帰るか?」
康太が聞くと、帰って……龍騎の相手をせねばならぬのだ……とボヤいた
「紫雲龍騎?何故?
山にいるんじゃねぇの?」
康太が聞くと、弥勒は嫌な顔をした
「康太との事を関知して…苦情を言いに夫婦で山から降りて来やがった…」
康太は呆然となった
「弥勒…こっからタクシーで帰れ
弥勒の家へ行ったら…紫雲に逢ってしまうではないか!」
「そんな冷たい事言うなよ。
どの道、あの姉妹の目的は京香に逢う事になるだろ?
お前しか京香の居所を知らねぇ以上、飛鳥井の家へも行くぞ?」
康太は諦めて溜め息を着いた
「オレはもう性欲も尽きてる…紫雲にまで見せれない…」
「2、3日居るらしいからな…ねだられるぞ」
「オレの伴侶を無視するなら…永久の別れだ…」
「無視はせんだろ
康太が伴侶に惚れてるのは承知だからな
魂より大切な存在を無視などせんわ……」
康太は降参した
「力哉、オレを弥勒んちに下ろしたら帰って良いぞ
オレは伊織とタクシーで帰る。
一生達を乗せて帰ってくれ 」
康太が言うと、一生は大丈夫なのか?と尋ねて来た
「大丈夫だ。すまん一生、隼人を頼む 」
「解ってる
電話すればオレが迎えに行く!電話しろよ」
一生の心遣いだった
康太は……あぁ電話する、と約束した
力哉は弥勒の家の駐車場に車を停めると、康太と榊原と弥勒と東矢は降りた
東矢は道場へ向かい、康太と榊原は弥勒と共に弥勒の自宅へ向かった
康太は榊原の背中に隠れた
弥勒がドアを開けると、桃香と紫雲が飛び出してきた
だが目の前には弥勒しかおらず……
後ろを見ると榊原が立っていた
「康太ちゃんは?」
桃香が聞くと、康太は榊原に抱き着き顔を出した
「オレは疲れてんだ!
早く寝てぇし、桜林祭が終わるまで、オレは時間を作る気はねぇ
京香に逢いたいなら、飛鳥井玲香に聞け
ならオレは帰る。」
康太が言い切ると、家の中から細面のハンサムが出て来た
「弥勒には、血を遺させ、私にはなしか?」
紫雲龍騎が山から降りて、康太に逢いに来ると言うのは……
異例中の異例だった
「時期が悪い
オレは桜林祭を成功させたい
これより3日は、それしか考えるつもりはない
しかも、我が伴侶に挨拶もせぬ奴は口も聞きたくない!」
康太に言われ紫雲龍騎と、妻桃香は、榊原の前に行き、深々とお辞儀をした
「陰陽師 紫雲龍騎に御座います。
そして妻の桃香に御座います。
お見知り置きを。」
弥勒の家の前で、繰り広げられる挨拶に、弥勒は家には入れ!と怒鳴った
康太は渋々、弥勒の家に入った
弥勒の家の応接間のソファーに座ると
榊原の膝の上に、康太は座って榊原にしがみついていた
「今日は触られたくねぇんだ
オレに触ると殴る!」
康太は言い捨てた
紫雲龍騎は康太に
「私にも時間を作ってくれても良かろう…」
と、訴えた
「今週は嫌だ!
京香に逢って帰れ!
今のオレはお前等の相手はしてらんねぇ」
「弥勒には、時間を作ったのに?
我には時間は作れはしないと?」
「時期を詠んだら、オレが今、どんな周期にあるか見れたのにな…」
紫雲は康太を見た…見て康太の周期を詠んだ
「我は頭に血が上っていた…すまぬ康太 」
紫雲は謝った
「出直せ。」
「解った…山へ帰る
だが時間を作ると約束してくれねば帰るのは嫌だ」
「伴侶が嫌だと言えば、無理だ
オレは自分の命より伊織を選ぶ」
紫雲と桃香は、榊原を見た
「伊織さん
康太には絶対に触らない。
弥勒の所でやったように、私達夫婦の前で、交わってくれぬか?」
榊原は困り果てて、康太を見た
「今返事しろと言うのは無理です。
康太も疲れきってますので、今日は帰ります。」
紫雲は康太に手を伸ばそうとすると、康太は避けた
「オレに触るな!
オレに触れて良いのは伊織だけ。」
紫雲は、手を引っ込めた
康太は一生に電話を入れ、迎えに来るように頼んだ
「紫雲…我が伴侶が納得したらな。」
「弥勒は、納得して、何故我は許されぬ?」
紫雲が怒ると、弥勒が口を開いた
「康太は今、学園祭の事で手一杯だ
他は考えたくないのだろう
俺の所へは学園祭の前だから来ただけだ
康太の真贋を受け継ぐ子が先に産まれる
だから俺の方へ先に来たのだ
深い意味はない。」
弥勒の言葉を聞いて、紫雲は榊原に向き直り頼み込んだ
「伊織殿、学園祭が終わる頃山から降ります
ホテルニューグランドに部屋を取ります。考えておいて下さい
絶対に康太には触らぬ
約束するので、考えておいて下さい
その後、京香に逢いに行きます。」
榊原は折れるしかなかった
「考えておきます。」
榊原が言うと同じくして、玄関のチャイムが鳴った
康太は立ち上がると、榊原に手を差し出した
榊原が立ち上がると、康太を抱き上げ玄関へ向かった
玄関に行くと一生が迎えに来てくれていた
「悪いな一生。帰るもんよー」
康太は榊原の腕から降りて靴をはいた
紫雲が康太を追って出てくると、康太は一生の後ろに隠れた
「オレは触られたくねぇんだ!」
康太が叫ぶと一生は、康太を後ろに隠し、紫雲を睨み付けた
「伊織、帰るぞ!」
一生は榊原を促し、弥勒の家を後にした
弥勒は康太の後を追うと、大丈夫か?と聞いてきた
「触られると気力が萎えるからな、触られたくねぇんだよ。
桜林祭を失敗出来ねぇんだよ
帰るな弥勒、またな。」
弥勒は、あぁ…と、言い康太を送り出した
康太を見送る弥勒の横に、紫雲は並んだ
「誠……憎い。触れさえ出来ぬとは……」
紫雲は口惜しそうに呟いた
「仕方ねぇよ
弟の為に遺す学園祭だからな
アイツは家の為、家族の為、友の為に……命を懸ける
そんな大切な時期だから触られるのも伴侶と友以外は嫌なのだろう…」
「頭に血が昇った……弥勒は生で喘ぐ康太を見たのだからな…
伴侶を受け入れ開く所も見たのだろ?
なのに何故我の所へは来ないのか…
カァーっとなった
その上…澄香は根付いたな…お前の子が…」
紫雲は本当に口惜しそうに言った
「凄かったな昨夜の康太は
また伴侶も凄い
康太が求めるだけ与えて勃起しずめだ
康太が喘いで妖艶な瞳で俺を見るから、オレも何時もより大きくて澄香も濡れまくりで抜けなくて気絶したよ。
凄かったわ……
まるで康太を抱いてる気になった
澄香は康太に抱かれてる気になって…
もうあんな日は来ないな……」
弥勒は自嘲気味に笑った
「出直して来るわ 」
「泊まって行かないのか?」
「山へ帰る。そして康太の覇道を詠む 」
紫雲は妻を呼ぶとプジョーに乗り帰っていった
車に乗ると、康太は榊原の膝の上で丸くなっていた
「おい!康太、大丈夫か?」
一生が心配して声をかける
「大丈夫だ。
だが気力が萎えるから触られたくねぇんだよ。」
一生は、そうか……と、呟き何も言わなかった
康太は飛鳥井の家へ帰ると、自室に向かい
直ぐに寝た
気絶するかの様に
深い深い眠りに堕ちていった
榊原は康太を守るように
その手に抱き
眠りに堕ちた
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