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第18話 桜林祭 3日目 最終日
オレは何て言ったって!!
孫悟空だ!!
悟飯じゃねぇもんよー!
バカぁぁぁぁぁ
康太は榊原にキスをすると、ベッドから降りようとした
「康太、まだ朝早いですよ?」
「道場に行って来ようと想ってるんだ」
「まだこうして、抱き合っていましょう
夫婦の時間も大切ですよ」
そう言われ康太は、榊原の横に潜り込んだ
「伊織に誘われたら、行けれない 」
「一緒にいられる時は一階にいましょう 」
康太は榊原に抱き着き、胸に顔を擦り寄せた
「今日で桜林祭は最終日ですね。」
「おう!やっと終わる。」
「頑張りましたね」
「伊織も…大変だった」
榊原は康太の頬にキスをした
「伊織…スマホのデーター残しておいてくれて、ありがとな。」
康太が地面に叩き付けたスマホのデーターを新しい携帯に移しておいてくれたのだ
昨日の朝撮った榊原の写真も、新しいスマホに入れておいてくれたのだ。
「無くしたら泣くでしょ?
僕の写真一枚だって君には大切なんですよね?」
康太は頷いた
「伊織のモノは総て欲しい
オレのモノだ」
「君のモノですよ、僕は。」
ベッドの中で抱き合い、セックスに突入しない日もある
そんな時は互いに触れ、話をするのだ
康太と榊原は、時間が許す限り触れ合い、起きて制服を着た
制服に着替え、榊原は掃除に洗濯と忙しい
今日は康太も準備で忙しかった
悟空に悟飯、帝に光源氏に牛若丸
ゾロにサンジに、ローの衣装を纏め、持っていく準備をする
リビングのソファーの上に準備して置くと
一生達が顔を出して、荷物を持って下へ下がって行った
朝食を終えると、康太は力哉の車に乗り込み学園へ向かった
そして悠太に早目に高等部の生徒会室に来い…と、告げた
学園の前で車を降下りると、荷物を分担して持って歩い行く
荷物を生徒会室に運ぶと、康太達はぶらぶらと歩いていた
3日目の午前中は文化祭ならではの、イベント、クラス別の模擬店とかゲームが目白押しだった
そして康太はまた今年も、柔道部のブースにいた
「やっぱ化け物屋敷やがな…このブースは……」
康太が言うと、一生がたしなめた
「それは言っちゃぁ駄目だぜ康太!」
厳つい柔道部の部員が…メイドばかりか……
ラブライブ!やプリキュアや初音ミクのコスプレをしていた
聡一郎は今年は一緒で、鳥肌立てていた
隼人は平気な顔で、珈琲を飲んでいた
悠太が…凄く嫌な顔をして、康太の横へやって来た
「良く…このブースでお茶を飲めるね…康兄…」
「オレは去年も飲んでんだぞ
たしか去年はJDB48だったな…」
悠太は言葉を無くし、回りを見て冷や汗をかいていた
昼近くなってて、康太は生徒会室に向かった
生徒会室には、既に兵藤も榊原も清家も来ていた
康太は兵藤と清家にコスプレを渡した
そして榊原にも渡した
後は各々、袋から出しコスプレを始める
康太と悠太は孫悟空の衣装を着た
そして髪を康太は榊原に、悠太は聡一郎にしてもらいスプレーを一本丸々使って
孫悟空のツンツンの頭を作った
「どうだ?孫悟空になってる?」
康太は皆に聞いた
康太の横で……悠太が同じ衣装を着る
すると……どう見ても悟空、悠太で、悟飯、康太にしかならなかった
康太が悠太に腕を伸ばすと、悠太は康太を抱き上げた
「クソッ、孫悟空にすんじゃなかった!」
康太は悠太の腕から飛び降りた
「言っとくけど、オレが悟空だかんな!」
………皆は仕方なく頷いた
榊原は帝の格好をして、悟空を抱き締めていた
何だか凄いアンバランス……
兵藤貴史は、やはり光源氏が似合っていた
清家静流は、牛若丸が似合っていた
一条隼人のサンジ
四宮聡一郎のロー
緑川一生のゾロ
そして飛鳥井兄弟の悟空、悟飯
皆、いい線を行っていた
只…1つの誤算は…悠太のコスプレを変えれば良かった…事
やっぱ悠太はピッコロにしときゃぁ良かった……
後悔先に立たず……
康太はつくづく噛みしめた
高等部の体育館では、昼を回ると仮装大会の参加者がエントリーに集まって来ていた
高等部の生徒会の役員と中等部の生徒会役員が壇上に上がり準備をする
中等部生徒会長の葛西はFate/Zero のセイバーの格好をしていた
中等部の生徒会は……Fate/Zeroが好きみたいで……
副会長は衛宮切嗣の格好をしていた
その中で悠太は悟飯は…目立ち過ぎか…
光源氏の兵藤貴史が
「これより、中、高合同、仮装大会を開く
一般生徒の中から優勝者を決め
その後、中等部、高等部の中から仮装大会の優勝者を投票してもらう!良いかぁ!」
と、生徒に問い掛けると体育館は、割れんばかりの大歓声が響き渡った
兵藤がステージ横の席に移ると、仮装大会は始まった
おいおい…って言う仮装から、
それは暑いでしょ…って言う着ぐるみも
止めてくれ…って言うモノまで
どんどんステージに上がり、仮装の狂宴は進められて行った
やはり今年も……柔道部のモサのコスプレは、見ている者の戦慄を孕み…
会場は悲鳴と嗚咽が鳴り止まなかった
高等部一般優勝者は……3年A組 弥勒東矢のマリリンモンローだった
彼は大変嬉しそうに……ステージに上がり、投げキッスを飛ばしていた
「すげぇな東矢…」
康太が言うと東矢は嬉しそうに笑って
スカートをヒラヒラ見せた
中等部一般優勝者は、3年A組 葛西茂樹のセイバーだった
そして中、高、生徒会の中から一人、優勝者を選ぶ
会場からは『 悟飯 』コールが鳴り止まず
康太は上を見上げ悠太に
「おめぇの人気はすげぇな!」と誉めた
悠太は…たらーんとなった
どう考えても、あのコールは康兄……
貴方のものでしょうが…
康太はマイクを持つ悠太によじ登ると、マイクに
「オレは孫悟空だぁぁぁ!
悟飯じゃねぇぞ!」と、噛み付いた
すると会場から割れんばかりの歓声が上がって『悟飯!』とコールが上がった
康太はするする悠太の体から降りた
「やっぱ、おめぇの人気だって悠太 」
悠太は会場を恨めしそうに見た
康太は帝の榊原の横に行き、腕を伸ばした
榊原の腕が康太を抱き上げる
なんともまぁミスマッチな光景に、会場は笑いに包まれた
康太は榊原の腕から擦り降りると、ゾロの背中に…登り、こなきジジィをやった
ローの聡一郎に背中から剥がされ、兵藤の横へ置かれる
涼しげな顔をした光源氏を、康太は蹴った
「痛てぇな康太!
悟飯の姿、似合うぞ!」
なんてマイクを持って言うから、悟飯!コールが再び盛り上がり、止まなかった
牛若丸の清家がステージ中央に立つ兵藤に、優勝者の名が書かれた封筒を渡した
兵藤はもったいつけて、その封筒を破った
「中高合同仮装大会の生徒会の部の優勝者は……」
兵藤は、封筒の中を見て大爆笑した
「高等部、3年C組、飛鳥井康太、悟飯 に決定!
圧倒的な投票総数を集め、断トツ優勝だ!」
と笑いを堪え、兵藤貴史は発表した
康太はマイクを奪うと、悠太を引きずって来てよじ登り
「オレは、孫悟空だって!
悟飯じゃねぇってば!
バカぁぁぁぁぁ~」
と、嘆いて叫んだ
悠太は康太を抱き締め、マイクを奪う
「皆、兄に入れてくれてありがとう!」
と、胸を張って言う姿は瑛太に酷似して、存在感があった
「ほら。康兄、ありがとうは?」
「皆、ありがとう
でもオレは悟空だけどな…敗因は……
悠太をピッコロにしとけば良かった 」
康太が嘆くと、会場は大爆笑となった
康太は悠太の腕から降りると、悟空宜しく、会場へ向けて
「カー、メー、ハー、メー、ハーァッ!」
と、出した
会場の生徒もカメハメハーを一緒に言って
凄い盛り上がりを見せた
「中、高、合同桜林祭は、皆で作り上げた
皆の想いてであり
青春の一ページとして、残って行ってくれたら嬉しい
オレ等、高等部の3年は、来年卒業する
中等部の3年は高等部に入学する
君達はこの桜林を作り上げてく礎になれたら、嬉しい
オレ達の残す桜林をこれからも、君達の手で残して受け継がれて行くことを望みます
そしてこの偉業を成し遂げた兵藤貴史
桜林学園高等部、生徒会長の名を刻まれた事を嬉しく想います。」
康太は会場に一礼して、榊原にマイクを渡した
「中等部の生徒も生徒会、執行部も頑張りました
高等部の生徒も生徒会、執行部も頑張りました
皆の手で、1つのモノを造り上げ成功させた達成感で僕は胸が一杯です
本当にありがとうございました。」
榊原は一礼して、中等部の悠太にマイクを渡した
「皆ありがとう
高等部の先輩、本当にありがとうございました。
俺達は、先輩の姿を忘れません。」
悠太は葛西にマイクを渡した
葛西は泣いて言葉にならなかった
憧れの人の側に居られ、同じステージに立てた喜びは…誰より深い……
悠太は葛西の肩に手を置いた
康太は葛西の横に行き
「中等部生徒会長、葛西茂樹、よく頑張ったな!
お前らもそう思うだろー!」
と、会場に聞くと歓声が上がり
「頑張ったぞー」と中等部、高等部関係なく声が上がった
康太は葛西からマイクを取ると、兵藤貴史に渡した
会場はしーんと静まり返った
兵藤は会場に深々と御辞儀をすると、喋りだした
「我が友、飛鳥井康太から、中、高合同桜林祭の話が来た時は、半信半疑、出来るか解らなかった
妨害もあった、色んな事が有ったからだ
でも、俺等は諦めなかった
諦めなければ、きっと、夢は手に入る!
と、我が友、飛鳥井康太が言ってくれたから、夢を現実へと叶える事が出来た
だから、今日と言う日を迎えられた
沢山の人間が協力して、今日と言う日を造り上げ、成功させた
一人では出来ない事でも、力を合わせれば出来ない事はない!
それを教えてくれたのは友である
友を信じて、仲間を信じて進めば、道は切り開かれる。
どうかこの先、困難な事に出会したら、今日の日を思い出して下さい。
険しく困難な道でも、乗り越えられない事はない。
それを信じて、明日を信じて生きていって下さい
本当に皆頑張ったな。
本当に!お前等、最高だぜぇ!ありがとう」
兵藤はマイクをステージに置いた
そして一礼して立ち去った
その背に、榊原も清家も康太達も…後に続いてステージを降りた
2年の生徒会役員が出て来て、後夜祭を告げた
生徒は伝説を今、目にして、動けずにいた
この伝説は…語り継がれ、揺るぎないモノへとなって行く
康太達は着替えて、校庭のキャンプファイヤーの中にいた
後夜祭の終了を告げる花火が上がる
「終わったな伊織」
康太が榊原に抱き着いたまま言う
「終わりましたね…康太
でも僕らは終わりません。
永久に君との日々は続きます。」
康太は榊原の胸に顔を埋めた
後ろから兵藤が近付き、康太に声をかけると
康太は振り向き、兵藤に笑った
「お疲れ!貴史。」
康太が手を出すと、兵藤はその手を握った
「本当に疲れた
後片付けをしたら、総て終わる。」
「立派な生徒会長姿だった
きっとお前の後にやる人間が霞む程にな。」
康太はそうなるのを解っていて、兵藤を担ぎ出した
そして立派に伝説になり、語り継がれる稀代の生徒会長に押し上げた
兵藤貴史は見事に、康太の期待に応えた
「次は東大だな、貴史。」
「東大…じゃねぇし
俺はこのまま上がる事にした。」
「嘘…桜林は一流じゃねぇぞ。」
「俺はこの学園を誇りに思う
そしてお前を誇りに想う。
だから動くのは止めた」
「そうか……ならゆっくり昇っていけ
その方が息切れせんで良いかもな。」
康太は笑った
「やはり、お前が一番だ…。
俺の痛みを知る為に、飛鳥井の家へ、コオを送っといた。受けとれ!」
「コオって?」
「うちのコーギーのコータの子供
美緒が飛鳥井に持ってってる
お前にやる。」
「生まれたて?」
「離乳してるから、大丈夫だ」
兵藤は笑って、康太を抱き締めた
「ありがとう……。そして一番愛してる…」
耳元で囁かれた
そして体を離すと、兵藤は歩いて行った
後夜祭は終了した
校庭の火は消され、中等部は橋を渡って帰っていった
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