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第22話 何時でも一緒
翌日、学校に行くと、隼人の熱愛の噂は校内を駆け巡り広まっていた
登校する康太達の中に、一条隼人の姿がないのを知ると…ヒソヒソ話しは尽きなかった
康太は3年C組の自分の机の上に肘を着き眠っていた
すると頭をコッンと突っつかれた
目を開けると………
そこには、兵藤貴史が立っていた
兵藤の顔を見て、康太は笑った
「どうしたよ?
生涯お前には無縁のこのクラスでお前の姿を見ようとはな…」
と、康太は笑って謂うと
兵藤は「 来い 」と告げ、康太を連れて空き教室へと向かった
康太の後ろに一生と聡一郎が着いて行く
兵藤は空き教室の中へ入り、椅子に座ると
「上から圧力をかけてやろうか?」と、話し掛けた
一条隼人の事を………言っているのだ
「 オレのバカ息子の為に、お前は動くのか?」
康太が問うと兵藤は、あぁそう謂う事になるな。と答えた
その時、康太のスマホが鳴り、康太は兵藤に悪い…と断り電話に出た
電話の相手は相賀和成だった
『康太君、久し振りだね』
電話の声は優しく康太を思いやるものだった
「お久し振りです。隼人の事で?」
康太が聞くと相賀は『そうです』と答えた
『報道を黙らせる力は、まだ私にもあります。
力が要る時は声をかけて下さい。』
康太は…有り難う……と、電話を切った
そして直ぐ様、スマホが鳴り出した
電話の相手は榊清四郎。
榊原の、父親からだった
「清四郎さん?どうしたんですか?」
と、康太が聞くと清四郎は
「隼人の件で康太が悩んでいるのではないかと思って…事務所に言って圧力をかけさせましょうか?」と康太に申し出た
「清四郎さん
今夜神野と話し合います。
動くのはそれからです
本当にありがとう御座います。」
と、康太は電話を切った
そして兵藤に向き直り、そう言う事だ…と、言った
「総ては…隼人の事務所社長の出方による」
康太がそう言うと、兵藤はそうか…と呟いた
「俺が親父を動かして、圧力をかける事も可能だ
お前が願うなら、俺はそうしてやる。」
兵藤は康太の頬を優しく撫でた
「ありがとう貴史。」
「話しはそれだけだ。」
康太は頷いた
「コオは元気か?」
兵藤は康太に犬のコオの状況を聞いた
「毎朝、オレが散歩に連れてくと、貴史の親父が散歩仲間になって歩いてる
今朝は美緒も加わり、賑やかだったぞ。」
と散歩の風景を想像して、兵藤はたらーんとなった
授業を一時間サボり、兵藤はクラスに帰って行った
康太はクラスに帰る廊下で、不意に抱き締められ……見上げた
見上げると榊原が立っていた
「どうしたんだよ伊織。」
康太は嬉しそうに呟きその胸に擦り寄った
「兵藤が授業をサボるなんて、天変地異の前触れ位…有り得ない
ひょっとして一緒でした?」
「上から圧力をかけてやろうか…と、言ってくれた。」
「そうですか…」
榊原は納得した
康太は榊原から離れると
「清四郎さんも電話をくれた
相賀も…。
事務所に言って圧力をかけても良いと…言ってくれた。」
「そうですか
康太は父さんの師匠ですから…苦しめたくないんです。」
「オレは次は教室に戻る。」
榊原はそうですか。と言い康太に着いて来る
康太は……伊織?……と呼んだ
「高等部で机を並べた事はないですからね…
一度位、康太の隣に座ってみたいです。」
榊原は、しれっと言い放った
一生は「旦那、康太の隣はオレの席だ
座って良いぞ
オレは隼人の席に座るからな!」と、大爆笑した
榊原伊織が3年C組に入って来て、飛鳥井康太の横に座った
クラスの生徒は、あろうことか大魔人の登場に、青褪めた
国語の授業をしにクラスに入って来た担任の槇原は、榊原伊織の姿に驚き………
「転校生の報告はなかったぞ!」とボヤいた
「榊原、お前…その席を動く気はないよな?」
槇原が聞くと、榊原は「はい。」とあっさり返事をした
「なら、お前は緑川一生って事で。」
一生が担任の槇原に
「俺の方が男前だってばさぁ!」と、吠えた
担任は「微妙…」と一生を揶揄した
一生は膨れっ面をして槇原を睨んだ
榊原は槇原に「今日からこのクラスに移ります。」と申し出ると
槇原は無理だわ…と、告げた
「3年A組の生徒が数名、C組にクラス替えを要望しやがってる
兵藤、清家、弥勒、他数名…A組の担任は泣いていたな…。
しかも受け持ち初の東大受験合格を夢見てたのに…兵藤は、このまま上に行くとぬかした。
俺はこれ以上、A組の担任に恨まれたくない。次の授業には帰れよ!」
槇原は榊原に帰れ!と告げた
「先生、僕は妻と同じクラスが良いです。」
槇原も康太と榊原の仲は知っていた
「榊原、妻といたい気持ちは解るが、あの陰険な男に嫌味を言われる俺の身にもなってくれ
早目にクラスに帰れよ!絶対だぞ!」
「なら…先生を恨み、次の時間には帰ります」
榊原が、肩を竦めると槇原は
「俺を恨むな!」と吠えた
クラスは笑いに包まれ、槇原は進藤に恨まれるぅ~と、嫌な顔をした
榊原は槇原に「進藤はサドですからね
今夜もベッドで泣かされますね…」と、囁いた
槇原は榊原を見た
「一時間と言うか、午前中は見逃しなさい。」
と、榊原は槇原に言い笑った
槇原は…榊原に進藤を見て嫌な顔をした
「何で知ってる?」
槇原が榊原に聞く
「放課後、何時も執行部の前の空き部屋で、進藤に良い様にされてるでしょ?」
と、笑った
「見てたの?」
「見せてるんですよ進藤が!」
「え???」
槇原は首を傾げた
「進藤は僕を警戒して見せ付けてるんです
ったく迷惑な話です…
僕が愛するのはこの世で康太のみ
僕は妻一筋ですから、進藤に心配無用と言っておきなさい。」
榊原は康太の担任の槇原に、そう告げた
槇原は何が何だか解らず…可哀想な位動揺していた
槇原はどっと疲れ「好きなだけいて良い」と言い、教室を出て行った
榊原は笑顔全開で、康太を見詰めた
「伊織…」
「何ですか?」
「槇原を虐めるな…
しかし、槇原の恋人は進藤か…趣味悪いな…」
榊原は何も言わず微笑んだ
一生と聡一郎は「おいおい…康太
お前の旦那も進藤も変わらんて…
同じ人種やろ…」と言う
榊原は、嫌な顔をした
「進藤と同じは嫌です
…遠慮したいです
あんな体裁ばかり気にする奴と一緒は嫌です…」
と、榊原は訴えた
「旦那、進藤が見せ付けてるって?
何でやねん?旦那を警戒してるって……」
言って…思い当たる節があり…一生は黙った
「1年の時に、槇原先生を口説いた時、進藤に目の敵にされたんです
好きなのに、あの男は素直じゃない
以来…執行部に僕がいると、所有権の主張の様に、槇原を抱いてるのを見せ付けます。彼は僕とは違いますよ
僕は妻を愛してます。誰にも隠しません」
一生は、少しは隠せ!と怒鳴った
「隠したら康太を盗られるじゃないですか…嫌です。」
榊原は、さらっと言った
言われてみれば…槇原は康太に感じが似ている
教師まで口説くいたのかよ!榊原…
一生と聡一郎は、呆れて口も聞けなかった
11時頃康太が食堂に行くと、榊原も着いて来た
3年C組の教室を出て、食堂に行く廊下に進藤が立っていた
「榊原、お前は何時からC組の生徒になったんだ?」
進藤が揶揄する
榊原は康太の腰を抱き、進藤を見た
「駄目ですか?
僕は妻の側で過ごしたいのですが…」
進藤は、おや??っと言う顔をした
「あの噂はマジだったのか?
私は冗談だと思ったがな……」
「本気ですよ、頗る本気
僕は康太の為なら何だって出来ます
C組の生徒にだってなれます。」
榊原が言うと、進藤は、おいおい…と、榊原を止めた
「どさくさに紛れてC組に行こうとしないの
午後からはA組に戻りなさい。」
進藤は苦笑して、榊原に言った
「バレましたか。もう少しでしたが…」
と榊原は残念そうに言った
「榊原、槇原を虐めるな…
泣いて来て、バカって怒って、もう寝ないって言われた
お前だろ?槇原を虐めたのは?」
「すみません。僕です
午後はクラスに戻るので慰めに行って構いませんよ
後は僕が纏めて終わらせときます。」
進藤は、榊原……と、名前を呼んだ
「C組は康太が纏めて終わらせてくれます慰めるのは、やっぱベッドの上でしょう?」
進藤は、榊原に抱かれた康太を見た
康太の首筋には隠しきれない紅い跡が着いて…榊原の本気を垣間見た
しかも相手は飛鳥井康太…
「伊織、オレは腹が減ってんだ!
もう行くかんな!」
榊原の腕から逃げ出そうとする康太を榊原は抱き締め離さなかった
榊原は康太の頬にキスをして、少し待って…と頼んだ
「僕の康太がお腹を空かせているので、行きます
進藤は槇原の所へ行って帰って構いませんよ。では。」
榊原は、一礼して康太と共に食堂へ向かった
進藤は、二人の後を影の様に着いて行く
一生と聡一郎の姿を見る
頭脳なら桜林トップクラスの緑川一生と四宮聡一郎
一生は、進藤にニカッと笑った
「緑川…?」
「素直にならねぇとなくしちまうぜ。」
そう言い一生は通り過ぎる
聡一郎は静かに微笑んでいた
「四宮?」
「執行部で犯らなくとも、伊織は康太しか見ませんよ?
あの二人は家族公認の夫婦ですから
伊織の妻発言は嘘ではないですよ。」
と、ボソッと教えてやり、横を通りすぎて行った
昼食を終えてクラスに戻ると、榊原の姿がなくて安心する生徒ばかりだった
康太は午後の授業を終わらせると、槇原不在のホームルームをクラス委員にさせ、纏めて終わらせた
鞄を背負い、クラスを出ると榊原が廊下で待っていた
「早いな伊織。」
康太が近寄ると、榊原は康太を抱き上げた
「さっさと終わらせないとね。」
榊原は笑いながら歩き出す
「下ろせ伊織。」
康太が言っても榊原は、下ろしてくれない
「たまには良いでしょ?」
「最近、それが多いな。」
康太は笑った
「学園生活も残すとこ半分切りましたからね
康太との想い出を沢山作りたいんですよ。」
榊原の言葉が嬉しかった
榊原は下駄箱まで行くと、康太を下ろした
駐車場まで行くと……力哉の車と、神野の車が停まっていた
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