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第25話 多忙

応接間に行くと既に皆降りていた 康太は何時もの席に座ると、榊原はその横に座った 「腹減ったぁ~何でも良い食いたいもんよぉー 夕飯を抜いて…喋りまくったかんな。 腹が減って暴れたくなる。」 康太が言うと……一生はたらーんとなった その時、玄関のチャイムがなり 一生は応接間に取り付けてあるドアホンのスイッチを入れた すると玄関に兵藤貴史が立っていた 「康太、兵藤がいる。どうする?」 一生が尋ねると康太は「此処へ呼んで」と一生に頼んだ インターフォンで一生が「今開ける、待ってて。」と告げ、一生は玄関に走った 一生が玄関を開けると、兵藤が立っていた 「記者会見、やったからって、康太が学校を休む筈ねぇからな、お見舞いだ。」 兵藤は、デカい紙袋を持っていた 一生は応接間に兵藤を招き入れた 応接間に入って来た兵藤は、康太に紙袋を渡した 康太は受け取り、何なんだよぉ?と尋ねた 兵藤は笑って「食い物。」と答えた 康太の目がキランッと輝いた 「食うもんよー! オレに食わせるもんよー!」と叫んだ 聡一郎は「何故?食い物?」と尋ねた 兵藤は、朝早くから康太を病院に連れていく様を親父が見ていて教えてくれた…と、答えた 「康太のお見舞いなら、食い物でしょうが!と、美緒が買ってきて持たせたんだ。」 兵藤の言葉で納得した 康太は袋の中にケーキを見付けると、箱を開け、手掴みで食べていた 一生が嘆いた 「お皿持ってくる時間も待てねぇのかよ!」 一生が怒ると、康太は「次は皿で食うもんよー」と、ケーキに食らい付いていた 食べ終わると……生クリームの口と手を…榊原が拭いてやった 「康太、少しは役立ったか?」 兵藤が康太に問い掛ける 「すげぇ助かった 兵藤の親父と賓田?」 「俺は親父を使って、叔父は勝手に動いたみたいだな それか美緒か……そっちは俺には解らない」 「美緒か…明日の散歩で礼を言わねばな。」 「あぁ。康太に下手な詮索する奴は、闇に葬ってやるって言ってたからな…」 兵藤は苦笑した 「明日、礼を言いに兵藤へ伺うよ そう言っておいてくれ。」 「解った。なら元気そうだし俺は学校へ戻るな 榊原、執行部が引き継ぎ式が出来ないと困っていた。明日は顔を出してやれ。」 兵藤がそう言うと、榊原は「解りました。」と、答えた 「じゃあな!康太。明日な。」 兵藤がそう言うと、康太は笑顔で兵藤にありがとう。と答えた そして片手を上げ、兵藤に手をふった 兵藤は応接間を出て帰って行った 兵藤が玄関を開けると、神野が立っていて驚いていた 兵藤は、神野と小鳥遊に会釈すると、飛鳥井の家を後にした 神野は「誰ですか?」と一生に尋ねた 「兵藤貴史。康太の親友だ。」 名前を聞き、昨夜動いた議員だと思い当たった 「一生、これを持ってって食わしてくれ まだあるんだ持って来るから、先にこれを持ってって。」 神野は何袋も一生に渡した 一生は荷物取りに来いよ!と吠えた 応接間から榊原と聡一郎と隼人が出て来て、荷物を持って応接間に入って行った 聡一郎は、キッチンに行きお皿や箸やホークやスプーンをトレーに置き、取り敢えずゴソッと持って来た 隼人はキッチンに行き飲み物と、コップをトレーに置き運ぶ 兵藤のくれた洋菓子と、神野が運び込んだデリバリーで、テーブルの上は食べ物に埋め尽くされた 榊原は康太の好物のお肉や寿司等を、お皿に取り分け康太に渡すと、康太はガツガツと、食べ始めた 「オレは昨日は何も食わして貰えなかった 神野も小鳥遊も使えねぇし…腹は減るし…… 今朝は熱が出るし、散々だった!」 康太がボヤく 一生は「事務所の社長が高校生の康太に頼りっきりって、どうよ?」と、嫌味を言った 神野は「言葉もない。本当に今回は康太が出なかったら…… オレは事務所を潰され、隼人は盗られ…それでも文句も言えない状態だった。」と、康太に深々と頭を下げた 「オレは今、凄く忙しいんだ お前の事務所の運気を上げる土地を見付け今月末には地鎮祭をやる それと同時に清四郎さんの家も今月末に地鎮祭をやり来月頭に着工に入る とにかく目が回る程に忙しくて、学校行ってる時間も惜しい位なんだよ! もうこれで本当に終わらないと構ってる時間もねぇかんな 終結まで時間をかけてらんねぇんだよ」 康太は目が回る程の忙しさだと言う 神野は康太に詫びを入れた 「神野も小鳥遊も食え!」 ガツガツ食う、康太の横で榊原は静かに食事をしていた 神野と小鳥遊の前にお皿を渡し、コップを目の前に置いた 神野と小鳥遊はお皿に好きなのを取り、食べ始めた 神野は榊原に腕時計の事を問い掛けた 「伊織君、その腕時計って、飛鳥井の伴侶の証し? 瑛太が結婚式の日に妻から送られていたのと同じかい?」 榊原は、自分の腕時計に視線を落とし 「そうですよ」答えた 「宝石の配置が違うんです 伴侶の為に妻が吟味して選ぶ伴侶の証です 飛鳥井の総代と、真贋の伴侶と家督のみが持てる飛鳥井の伴侶の証です 僕の腕時計には康太の血の結晶が入ってます。」 榊原は、神野に向けて腕時計を見せた 文字盤の上に、隼人と同じ様な紅い宝石が光っていた あれが康太の血か…… 飛鳥井の一部の伴侶しか持つ事の許されない伴侶の紅し それの重さを想い知る 「伊織、タブレット持って来てくれ。」 榊原は立ち上がると、応接間を出て行った 暫くすると康太のタブレットを持って榊原は戻って来た 康太は何やらタブレットを探り、目当てのページが出て来ると、榊原に手渡した 榊原は神野にタブレットを渡した 「これは?」 神野が康太に問う。 タブレットの中には、オレンジ色のマンションの様なビルが建っていた 「 お前の事務所の新社屋だ」と答えた 神野はタブレットに見入った 「神野プロダクションに社名も変更しろお前の親父は逝去した 意思は継げても手腕までは継げれる訳じゃない。お前らしく栄光を掴め。」 神野は康太に頭を下げた 「 こんな良いビルが建ちますか?」 「賃貸マンションとテナントを入れたビルだからな、1億で建てたら瑛兄に怒られる。」 「解っています。幾らかかろうとも事務所の為になるなら、支払います。」 「賃貸と事務所の出入口を分けて建てるんだ。 そこに管理人を置いて管理させる。 地下にレッスン室を作り、外に出さなくてもレッスン出きる様に完備する 1階を事務所にして 2階をタレントのマンションとスタジオにして 3階と4階をテナントを入れて 5階と6階をマンションにして、家賃収入を狙う。 神野と小鳥遊はそのビルの一室に住めば良い それと、飛鳥井は今オール電化に力を入れてる。 この飛鳥井の屋上もソーラパネルが敷き詰められてる だから神野の事務所にもソーラパネルを入れて、事務所のコストを下げると良い。」 康太の構想を聞かされ神野は唖然となる 学校に行って 馬の管理をして 真贋としての仕事をして 星を詠み 土地を探し 建物を図案を考えて その構想を練る そんな忙しい康太を記者会見に引きずり出し、手間を掛けさせた そして熱を出させて寝込ませた タブレットには神野の事務所の絵図が書かれていた 飛鳥井の家から歩いて五分もかからない場所が一番良いから…と、決めたらしい 神野は康太に詫びを入れた 「終わった事は、もう良い 後はお前達がちゃんとタレントを我が子と想い育てて行けば良い事だ そう言えばローランドは化けたか?」 康太は思い出した様に神野に聞いてみた 「流石です あれ程化けるとは思いませんでした。」 と、神野はひょろっとしたモヤシの様なローランドが 凄いイケメンに変身する様を目にして驚いた 康太は腹一杯食べた後、榊原に薬を飲まされ、榊原の膝の上で……眠りに着いた 榊原は、康太をベットヘ運ぶと、そのまま応接間に戻る事はなかった

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