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第28話 波乱

エレベーターに乗ると、矢野は康太を見た 康太の顔を見ると……中学生位に見える この子が、悠太で、後ろにたっている子が、康太? 蒼太から聞いている話を思い浮かべる 康太は何も言わず歩く そして、エレベーターが止まるとスタスタ歩いて駐車場へ向かった 力哉の車のドアを開けると、矢野を乗せた その後ろに康太と榊原が乗り込む 車は飛鳥井の家へ向かって走っていった 飛鳥井家の駐車場に車が停まると、力哉は車から降りてドアを開けた 「矢野、着いて来い。」 康太が呼ぶと、矢野は車から降りた 矢野が車から降りると、スタスタと康太が歩き出す 力哉は走って行って、玄関のドアを鍵を開けた 康太は家の中へ入ると、応接間のドアを開けた 「入れ、矢野宙夢。」 康太が言うと応接間に矢野が顔を出した 蒼太が矢野に手を伸ばした 矢野は蒼太の横に座った 康太は何時もの席に座ると、足を組んだ 「蒼太、自己紹介させろ その後に、皆自己紹介をする オレと、伊織は最後に言う。始めろ。」 康太に言われ、蒼太は矢野に自己紹介して……と、言う 矢野は立ち上がり「矢野宙夢です。宜しくお願いします。」と、お辞儀をした 直ぐ様、康太からダメ出しが出る 「自己紹介は名前と年と、関係を述べろ。」 と言われ……矢野は躊躇した 康太はその姿に激怒した 「迷うな!なぜ迷う! お前は蒼太と生きていく決意をしたんじゃねぇのかよ! もう一回だ!」 「矢野宙夢、35歳、飛鳥井蒼太の恋人です」 と、矢野は康太を見て言い切った 「ならば、じぃちゃんから自己紹介しろ。」 康太が言うと、源右衛門から、自己紹介を始めた そして一生も聡一郎も隼人も力哉も、自己紹介すると、康太が不敵な笑みを浮かべ口を開いた 「飛鳥井康太だ! 18歳だ。現飛鳥井家の真贋だ。」 康太の言葉に、矢野は驚愕する 見た目は弟より幼く見える…… そして、康太の横の榊原が、口に開いた 「榊原伊織、18歳、飛鳥井康太の伴侶になります。」 堂々とした話しぶりだった 康太は矢野に問い掛けた 「蒼太は飛鳥井を出て、お前を支える人間になるそうだ 飛鳥井の家は文句はない。」 「飛鳥井の家は……中学生の様な君が一番偉いのかい?」 矢野は康太に最大限の嫌味を贈った 康太は不敵に嗤うと 「顔はガキでもな、飛鳥井の事を決めるのは、真贋のオレ以外いない! そして飛鳥井の人間は真贋の言う事を聞かねばならねぇ。絶対にだ! 違えられはしない そのオレがお前にくれてやるから、蒼太を連れて帰れと言っている 返品はすんなよ、持っていくならよ!」 康太が言うと、矢野は怒りを露にした 「だったら貰って帰ります 返却なんてする訳ないでしょ!」 「だそうだ、良かったな蒼太!」 蒼太は困って、康太…と、名前を呼んだ 「蒼太、彼の側に居たいんだろ?」 「いたいです。 僕は初めて甘えさせてくれる人を見付けました。離れたくないです。」 「だがな蒼太、お前が彼と会社を作っても…3年は持たないぞ。」 蒼太は、えっ!!何故!と、康太に問い掛けた 「お前は経理は出来るが、経営は出来ねぇ 矢野は創るが出来るが、経営は出来ねぇ そんなんで良く3年持たせたって感じだわな 行く道は険しいぞ これは脅しじゃねぇ 嘘だと思うならやってみろ。」 「それが君の目に映る、僕の果て?」 「そうだ! だが飛鳥井は助けないぞ。 出た人間は、助けるに値しない! それが定め。 しかも今、オレは忙しいんだ。」 康太が言うと、瑛太が助け船を出した 「康太、そんな事言われたら、蒼太は帰れない…。 少しアドバイスとかやってあげたらどうですか?」 康太は……瑛太を恨めしげに見た 「瑛兄は、オレが忙しいの知ってるのに…」 「それでもだ お前は教えてやるつもりで、蒼太の恋人を呼んだのでしょ?」 「それは違う。 蒼太は自分は何もかも隠しているのに、解ってくれないと嘆いていたから、矢野を連れて来てやったんだ。 しかも蒼太は甘えるだけ甘えて、恋人に簡単な家族構成しか教えていない。 家族に対しても、恋人に体しても、不誠実だかなら、呼んでやったんだよ。 しかも蒼太は自分の口から恋人を紹介もしねぇ!恋人を何だって思ってるんだよ!」 康太はそう言うと、榊原の方へ手を伸ばした 康太は榊原の首に腕を回し、抱き着いた 「オレは耐えられねぇ! 恋人なら胸を張って紹介しやがれ!」 榊原は康太を膝の上に乗せ、抱き締めた 榊原は蒼太に語りかけた 「蒼太さん、康太が何故怒ってるか解りますか? 何故こんなに拗ねてイジケてるのか?」 「嫌…解らない。」 「貴方が恋人を隠してるからですよ。 恋人は恥ですか? 恥だと思うならば、ずっと隠しておけば良いんですよ 半端な事をしょうとするから、康太が怒るんです 僕達は、隠しておこうと思えば容易い 敢えて言うから、奇異な目で見られる 僕は康太を隠す気は全くなかった 長い人生を共に生きて行く気なら、隠すより話した方が良いと僕は思った 共に生きて行く覚悟です それがなくては、この先一緒に生きて行くのは難しくなりますよ 僕は誰の前でも言葉にします 僕は飛鳥井康太を愛しているのですから、彼の総てを受け入れて共にありたい その覚悟です。」 矢野の目の前に………強固なまでの絆で結ばれた恋人同士がいた 榊原の膝の上で、榊原に抱き着いている康太を、榊原は全身で守っていた 蒼太は…がっくり肩を落とした そして榊原に話し掛けた 「恋人が男だと言う事は…… 中々言う事は難しい…… 家族を無くすかも知れない恐怖がある…… 伊織君はそんな想いの中、飛鳥井に来たんだね 凄いな…あの日僕は君に辛辣な言葉を投げ掛けた…… でも君は怯まなかった そんな覚悟が僕にはなかった… 飛鳥井を出る そうすれば何も解らず終われるなんて考えていた 結局…隠していたんだな。」 と、後悔の滲む声だった 康太は榊原の膝から降りると、蒼太に言った 「飛鳥井蒼太、集めてやった家族に、恋人を紹介しろ!」 康太はそう言い、足を組んだ 蒼太は立ち上がり、矢野を引き寄せ 康太に頭を下げた 「僕の恋人の矢野宙夢です 年は35歳と上ですが、僕は彼を愛してもいます この先も彼と一緒にいたい 総てを投げ出しても、僕は彼を取る その為に、僕は君に逢いに来ました。」 康太は不敵に笑うと 「共に生きるのか?共にあるのか?」 と問い掛けた 「共に息が絶える、その瞬間まで、共にありたい その覚悟でいます。」 蒼太が言うと、康太は「もっと早く言え!」と怒った 蒼太は頭を下げ「すみません。」と謝った 「蒼太、お前は今、分岐点に立っている 道を違えれば、行く道は破滅 お前は飛鳥井を断ち切って、行くならば、3年で、一緒にいる暮らしの生活は困窮する。 何故ならばお前は、金を扱う経理は出来るが、経営には力量がない 金を動かす仕事をしてるから、経営している気になっているかも知れぬが、経営は無理だ お前は自らの手で、矢野の才能をへし折る事となる。 その分岐点に今、立っているのは事実だ。」 総てを見るかの様な瞳で、康太の視線が二人を貫く 「僕は、彼を支える為に、企業を起こそうとしましたが、経営向きでないのは、もう既に実感していました。」 「矢野宙夢と言うネームバリューも乏しいのに、店を持っても 誰も来ないと、何故気付かないのか…… 借金しか増えんぞ!このままでは……。 戦略がねぇんだよ。蒼太には。」 蒼太は……くしゅん……と、ソファーに座った 「蒼太、人を動かすのも 人を虜にするのも 戦略あっての物種だ 何を始めるにしても、戦略があって 結果に繋がる お前はそこが経営向きでないと言っている。」 まさにそれだった 「まぁ今日は顔見せだ 話しは明日な。 蒼太と矢野は今晩泊まって行け。 オレは忙しい もう寝る。話しは明日な。 矢野も蒼太も帰らずに飛鳥井にいろ 力哉、図面を寄越せ。」 力哉は鞄を取りに行き、康太に手渡した 「ならば、オレは部屋に帰る。 オレは忙しいんだよ、寝込む程にな! 亭主の相手もしなければならねぇしな 部屋に帰るもんよー 続きは明日な。 母ちゃん、客間は使えるんだっけ?」 「もう、客間は総代の部屋になった。 二階の瑛太が使ってた部屋なら空いておる 丁度、あそこはベッドだ 二人で寝ても大丈夫だろうて。」 と、玲香は返した 「力哉、二人を部屋に連れて行け オレはもう部屋に帰る。 明日は土曜だ。会社は休みだ。 話し合いには最適。ならば、終わる。」 康太は図面を持つと、榊原に手を出した 榊原はその手を掴むと、手の甲に接吻した 康太は嬉しそうに微笑むと、榊原と一緒に応接間を後にした 康太がいなくなると、源右衛門も清隆も玲香も、さっさと応接間を後にした 瑛太は一生に「後、頼めますか?」と問い掛けた 「あぁ構わねぇ。おやすみ瑛太さん。」 一生がそう言うと、瑛太は二階の部屋の鍵を一生に渡し、一階の総代の部屋へと帰って行った 一生が立ち上がると、聡一郎も隼人も立ち上がった 隼人は聡一郎に抱き着いた 聡一郎は「添い寝してあげますよ。」と、隼人の頭を撫でた 一生は、力哉の名を呼んだ 「力哉、手伝ってやるから、その二人を連れて来い。」 一生は犬のコオを連れて応接間を出ると、力哉に促され、蒼太と矢野が応接間を出る 聡一郎は隼人を連れて、応接間を出ると電気を切り、クーラーを停止させた 一生、聡一郎、隼人は、飛鳥井の家で役割分担があり 康太の右腕になっているのだと、蒼太はその時初めて気が付いた 二階の階段を上がると、蒼太は見たこともない光景を目にした 自分の部屋があった時と全く違うモノになっていたから…… 一生は、瑛太の寝ていた部屋の鍵を開けると部屋に入り 電気をつけ、カーテンを閉めた そして、ベットの上にリネンに出された布団を出して準備をすると 力哉に二人を連れて来いと、声をかけた 「この部屋で寝てください。」 「康太達は?」 「この上の3階にいますが、呼んでも多分出ませんよ 康太は亭主の相手もしなければ…と、言ってたでしょ? 今頃、旦那とセックスの最中だ 邪魔はしてやるな。」 蒼太は絶句した 一生は犬を抱きながら、肩を抱いた竦めた 「その犬は?」 蒼太が聞く 何時から飛鳥井は犬を飼うようになったのか…… 「康太の犬ですよ 兵藤からの愛の貢ぎ物だ。」 一生はクスクス笑いながら答えた 「では、おやすみなさい。」 一生は軽くお辞儀をすると、部屋から出て行った 康太は3階の寝室の鍵を閉めるや否や抱き締められ、ベットの上に、押し倒された そして息もつかない激しい接吻で、口内を犯されていた 激しく抱き合い、縺れ合い、服を脱がせ、互いを弄る 康太の穴に……ローションを流し込み、榊原は一気に貫いた 榊原の硬い肉棒が、康太の内壁を掻き分け進む そしてカリが康太の前立腺の奥にある突起を引っ掻くと、康太は榊原の背中に爪を立てた 「…あぁん……イクちゃぅ……」 榊原は、その背中の痛みに、眉を顰め、それでも康太を突きまくった 「はぁ……はぁ……あぁ……ィク……」 康太は榊原の腹に擦り付け、射精さた 榊原は、康太の奥深くで、エラを張り出し、膨張して、射精をした ドックン…ドックン……と、熱い性器が脈打つたびに、康太は身震いをした 榊原は、締め付け、離したがらない康太の肉壁から引き抜くと、康太を膝の上に乗せ体を落とした 榊原の精液で濡れた穴が……榊原の肉棒を再び飲み込んで行く 「ごめん…伊織…また引っ掻いた?」 康太は興奮すると……榊原の背中に爪を立ててしまう だから、爪を短めに切るが……興奮すると…癖みたいになっていた 「良いですよ。康太はイキそうになると僕に抱き着くのは、初めての時からでしょ?」 康太のバージンを貰ったのは榊原だ 「 解んない……夢中になっちゃうもん 」 康太は榊原の首に抱き着いた 「僕がこんなに愛を注ぎ込んでいるのに、夢中になってくれないと困りますよ。」 「あっ……伊織っ…また来る…」 肉棒が康太の中を静かに掻き回す そして次第に育ち…威力を増す 「…あぁん……イイっ……そこイイ…」 「 ココ、好きでしょ?擦られるの。」 「堪んない……ゃぁ…焦らさないでぇ…」 康太の腰が、物足りなくて蠢く 激しく動かそうとするのを、榊原が抱き締めてて動かす事も、儘ならない 「ねっ……ねっ…伊織…お願いっ…」 康太の眦から涙が流れ落ちた 榊原は康太の眦に接吻を落とし 「ならば、ネダリなさい。」 と、快感に掠れた声で康太を誘惑する 「伊織の太い肉棒で……オレの中を……擦って……お願い…伊織……」 康太が言うと、康太の体が激しく上下した 康太は榊原の齎す熱に犯され……成す術もなく、身を任せた 熱は……夜更けまで続き…… そして深い眠りに落ちた 朝方…起きると……榊原はまだ、康太の中にいた 康太は身震いをした 少しずつ…少しずつ……育って…… とうとう……何時もの大きさになった 康太の体が……逃げる もう、これ以上は無理だ… 榊原は、逃げる身体を引き寄せた 力強い腕が康太を押さえる 「伊織……もっ……許してぇ……」 康太が榊原に許しをこう 榊原は「許して欲しいのは僕の方ですよ。」と、康太に言った 「康太の中が、僕を離したくないと、離さないんですよ?」 康太は抗った 「違っ…知らない…」 「違わないですよ。康太の中が、僕に絡まり離さないんですよ。」 敏感になった腸壁を榊原の嵩を増した肉棒が擦りあげる 「康太…一緒に!」 隙間もなく抱き合った体が揺れる 康太は榊原の体に挟まれ、榊原は康太の中で、一緒に射精した 榊原は康太の中から抜くと……大量の白濁が流れて溢れた 榊原は、起き上がり康太を抱き上げ、浴室に向かった 康太を壁に手をつかせ立たせると、シャーワーの湯を康太の穴に向けて降らせた 掻き出すと……中から…白い白濁が流れて行く 康太は立っていられず…膝がガクガクとなり 床に崩れ落ちた 「まだ出し切ってませんよ なら四つん這いになってお尻をこっちに向けて。」 康太は四つん這いになると、榊原にお尻を向けた 擦られ続けた康太の下のお口は、赤く熟れていた その中に指を挿し込み、中を掻き回す そして、全部掻き出す頃、康太は意識が遠くなっていた 榊原は慌てて浴槽に康太を入れた 広めの浴槽に膝を合わせて、浸かる 「伊織…お尻が痛い…」 「薬を塗りますか?」 「嫌だ。塗ってるうちに、また挿れられるから…」 榊原は笑った 「康太、愛してますよ。」 「狡い。オレも愛してるかんな。」 榊原は笑って康太の唇にキスを落とした 榊原は、何時もの様に康太を綺麗に洗って 自分も洗うと、浴室を出て体を拭いた そして先に康太の髪を乾かし、服を着せてやる その後に、自分の支度をしシーツを剥がし、洗濯機に洗濯物を入れ、スイッチを押した そして掃除を遣るために、康太をリビングに持っていく その間に、寝室や子供部屋の前のスペース、一階までの階段 そして玄関 玄関からキッチンまでの廊下 キッチン そして応接間をフローリングモップを持って掃除をする。 誰も文句を言わないからな、好きなだけ掃除をする そこへ蒼太が起きてきて、何してるんですか?と、尋ねた 「康太の歩く場所総て、掃除しないと気が済まないんこで掃除をしてます」 せっせと掃除に勤しむ 玲香が起きてきて、蒼太に 「伊織は綺麗好きなのだ。構うでない。」と声をかけた 「伊織、もうキッチンは終わったかえ?」 「お義母さん、終わりました 入られて結構ですよ。」 玲香はそうか。と言いキッチンに向かう 「母さん、自主的にやってるんですか? やらせてるんじゃなく?」 と、蒼太は玲香に尋ねる 「蒼太、真贋の伴侶に掃除をしろとは、言わぬわ! 伊織は康太の歩く場所は掃除をしなければ気が済まない… 初めての時は気をつかうでない、と言ったが、毎日続けば趣味にしかならぬわ!」 と、玲香は吐き捨てた 蒼太は唖然とし、玲香はさっさと歩いて行った それでも榊原は掃除をして、キリが着くと部屋に戻って行った 榊原が部屋に戻ると、悪ガキ四人集まって、悪巧みの算段をしていた 「伊織、ご飯食うもんよー!」 「なら行きますか?」 榊原は、康太に手を伸ばし抱き上げた 榊原は康太を抱き上げたままキッチンに向かった 一生達は、その後に続いた 康太がキッチンに行くと既に瑛太が座って食べていた 蒼太も矢野を連れて、食べていた 榊原は康太の椅子に下ろすと、その横に座った そして一生達も決められた椅子に座る 康太は座ったままで、聡一郎と力哉が康太のおかずを置く。一生は康太のご飯をよそうと康太の前に置いた そして自分の好きなのを各々取って食べだした 「瑛兄、図面、全然ダメ。あれじゃぁオレの見る明日は作れねぇ。 榊原の家は恵太に引かせる。そう伝令を出しといてくれ!」 「解った。恵太に言っておこう。」 「引いた奴、説教だな、月曜日に説教に行く」 瑛太は苦笑した 康太の前に悠太が玉露を入れる 「悠太、後で図面を見ろ。」 康太が声をかけると、悠太は頷いた 「母ちゃん、食ったら、話し合いを終わらせる オレは忙しいから、無駄な事に時間を費やせない。」 康太は言い放ち、沢庵をポリポリ食べる 食事を終えると康太は隼人を触った 「隼人、沢山食べろ。」 人見知りの隼人は、知らない人がいると、食欲が落ちる 康太は一生に「一生特製お握り」を作れ、と頼んだ 一生が炊飯器からボールにご飯を入れ 具を入れ海苔で固める特製お握りを作り サランラップで包み、康太の前に置いた 康太は隼人の椅子を康太の方に向かせると、隼人の手にそれを握らせた 「食え。お前の目の前にはオレと伊織だ 食えるだろ?」 隼人はモソモソとお握りを食べ始めた 「もうじき、仕事を始めんだろ? 体力を維持しねぇと、良い仕事は出来ねぇぞ。」 康太はテーブルに肘を着いて、隼人を見る 榊原は、自分の沢庵を隼人の口に入れてやると、康太も口を開けて待っていた ついでに康太の口の中にも放り込む それをポリポリ食べると、康太は玉露を飲んだ。 隼人も、一生特製お握りを食べ、玉露を飲み終わると、康太は口を開いた 「さてと、始めるかんな、応接間に行くもんよー」 と、告げた 応接間に行きソファーに座ると 昨夜の話の続きを始めた 康太は何も言わなかった 蒼太は康太の前に来ると、深々と頭を下げた 「昨夜、宙夢と話し合いました 離れたくはない だけど僕らは何も持たない無力だ 力を貸してくれませんか? お願いします。」 「今は無理だ オレは忙しい しかも年末にはオレは子持ちになるかんな 大学を諦めて子育てしょうかと、思案中だ」 康太がそう言うと蒼太はギョッとした 「康太が産むのか?」 「それは無理だろ…産みたいがな ……伊織の子を。」 康太は苦笑して、そう呟いた 「矢野宙夢 お前は名を売らねばならぬな だが戦略も策もなく、自分を売ろうとしても、それは無理だろ…」 矢野は、静かに言う康太の言葉を聞いて まさにそうだと、思った 「蒼太は飛鳥井を出て、やって行くのは力量不足 矢野は無名過ぎる 名を売るなら、戦略を立てねばな。」 「どうやってですか?」蒼太が問い掛ける 「力哉、頼んでおいた物を頼む。」 康太が言うと、力哉は応接間を出て行き 、戻って来た時には、箱を持っていた 「力哉、それを矢野に渡せ。」 と言うと、力哉は矢野に箱を渡した 矢野は箱を貰い 「これは?」と尋ねる 「宿題だ。 出来たら持って来い その箱の中には、一級品の宝石の原石が入ってる それを加工して、作って持って来い まずは、力量を見ねばな。」 矢野は康太をまじっと見た 首には、プラチナと金を絡めて作った指輪が、同じ様な鎖に通されていた プラチナと金が、これ程ふんだんに使われた貴金属だと、かなりの値段がする しかも足には、見た事ない様な、細工のアンクレットが光っていた これも輝きを見れば…… 最高級の金で出来たアンクレットだ。 その彼を納得出切るのを作るのは至難の技の様な気がする 「蒼太、飛鳥井の掟は、オレが決めたんじゃねぇ だから、出るなら、オレは止めない 止めない変わりに、手は差し出されねぇ! 矢野の仕事が軌道に乗るまで、お前は邪魔だな 飛鳥井で仕事してろ。 目処が立ったら、飛鳥井から出れば良い まっ、悪い様にはしねぇって事だ。」 康太の話が終わると、玲香が康太に話しかけた 「康太、大学は行かないとか……我は聞いてはおらぬ!」 「言ってねぇかんな 伊織にも言ってねぇ」 康太が言うと、榊原も、 「僕も聞いてません! ちゃんと話して。 ねっ!皆で解決して行きましょう。」 と、康太に縋り着いた 「オレは四人の子持ちになる 来年には、皆産まれる 総ての覇道をオレは捉えた そうなると、じぃちゃんの手に余る 大学行ってる暇はねぇかな……と、思う。」 康太が言うと玲香が 「瑛太の新しい嫁と、我が交代で見る… そして、源右衛門も見る 清四郎さんも真矢さんも見てくれる 何とかなる だから、大学へ行かないなんて言うでない」 と、康太を説得する 一生も口を開いた 「お前の子供の子守りなら、手が空いている時に手分けをする 助ける手は沢山ある だから、諦めんな。」 聡一郎も 「僕も子育てを手伝います 康太の子供ですからね。」 隼人は 「撮影現場に連れて行くのだ オレ様の愛を、康太の子供に与えてやるのだ。」 と、言葉をかけた 瑛太も 「康太が困ったら、私は会社まで連れて行って子守します だから、大学に行きなさい。」 清隆も 「孫は可愛い 康太の子供ならば、私も会社に連れて行って自慢してやります。」 と、二人は楽しそうに康太の背中を押した 矢野も 「あの、僕も、君の子供なら、子守します 蒼太と二人、子守します。」 と、必死に康太に話し掛けた 康太は嬉しそうに笑った そして蒼太に 「蒼兄、矢野が子育てしてくれるらしいからな 飛鳥井の家から追い出せなくなってしまった 仕方ない 飛鳥井家の真贋が、お前達の未来を与えてやる。」 矢野は唖然として康太を見ていた 蒼太は「これぞ、飛鳥井康太のもたらす奇跡だ 皆は惑わされ掻き回されるが、結局はちゃんと導いてくれる それが我が弟、飛鳥井康太だ」と、呟いた 「大学の事は、ずっと考えていた事だ その時バッタリの、思い付きじゃねぇよ 四人の子供を次世代に送り出さねばならぬ使命があるかんな 大学行ってる暇なんか有るのかな?って思ってた」 榊原は、康太を抱き締めた 「君が上に上がらないのなら、僕も大学には行きません。」 一条隼人は康太を殴った 康太は唖然と「隼人?」と呼んだ 「おめぇがオレ様に諦めんなって教えたんじゃねぇのかよ おめぇが上に上がらねぇなら、オレ様も行かねぇよ 康太のいない場所にオレ様は、興味がねぇ 行かねぇもん。」 康太は隼人を抱き寄せた……と、思ったら羽交い締めした 「よくも母親を殴ったな! そんな子供に育てた覚えはねぇよ!隼人」 頭をグリグリすると、隼人は 「許して康太~」と、泣きを入れた 一生は、康太の頭を殴った 「俺も大学は行かねぇわ 馬でも育てよかな!牧場に行って。」 聡一郎は、康太の唇を引っ張った 「そんな事を言うのは、この口ですか! 悩むより、回りを信じなさい。」 聡一郎…と、康太は名前を呼んだ 玲香は「康太、取り敢えず大学へ行け お前が行かねば、皆が行かないだろ? 伊織まで大学に行かせなかったら…… 私は榊原の家族に顔向けが出来ん。良いな?」 康太は頷いた 榊原は康太の頭に手を遣り、自分の方へ引き寄せた 「康太…何でも言って下さい。」 「すまん。伊織…」 榊原は、康太を離すと、息を吐き出した 康太は皆に 「子供が来たら、皆頼むかんな。 オレは子育て出来るか…今から不安だ でも皆がいてくれるなら、安心出きる。」 と、話した 矢野は「康太君の手助けをしたいと言ったら迷惑ですか?」と、問い掛けた 「迷惑なら、昨日のうちに追い出してる」 矢野は面食らった顔をした 「矢野宙夢、お前は蒼太と生きて行け。 その宝石をお前の想いのまま作って来い そしたら、お前の進むべき指針を教えてやんよ 総てはそれからだ 今日は、これで終わりだ オレは図面を見ねぇと行けねぇし、やる事が蓄積してる 帰って良いぞ 飛鳥井の家族にお礼を言って、帰ってくれ」 康太はそう言い、席を立った すると榊原も立ち上がり、応接間を出て行った 瑛太は「母さん、父さん、私は一旦会社に行きます その後竣工パーティーに出ます」と、立ち上がると、応接間を出て行った 蒼太は玲香に「今忙しいの?」と尋ねた 「康太がおるからな このご時世に忙しい 康太が運気を呼ばねばならぬ だから康太が忙しくなる 今は睡眠時間を削って飛鳥井の家の為に動いておる。」 と、蒼太に教えた 聡一郎は、悠太に「珈琲を持って来い 僕はケーキを持って来ます。」と言い立ち上がった 一生が玲香に 「義母さん、康太があんな風に思ってるとは……驚いたな。」と話し掛けた 玲香は苦笑した 「康太は、不器用だからな…」 「俺達がいて、康太がいる 俺達の絆は揺るぎない 康太を助ける為に、俺等は飛鳥井の家にいる。なのにな……」 一生は、少し拗ねて玲香に言う 応接間で飛鳥井の父と母と、一生、聡一郎、隼人と、蒼太と矢野とお茶をしてると 康太と榊原は、ヴェルサーチのドレスコードを着て、下へ降りて来た 康太のスーツは、今月作ったヴェルサーチのドレスコードだった 榊原と御揃いで、行事用に作ったばかりだった 康太が入って来ると、聡一郎は康太と榊原に、珈琲とケーキを差し出した 康太が図面を悠太に渡した 「明日までに、どの箇所が不味いかその上に引け。」 と悠太に宿題を出しとく 康太は珈琲だけ飲むと、立ち上がった 「ならば、行って来るかんな!」 康太が言うと、玲香が「竣工パーティだったわな?」と思い出した 力哉はヴェルサーチのスーツの胸ポケットに蘭の着けていた そして、康太と榊原に蘭の花を手渡した 康太は榊原に蘭の花を着けてもらうと、榊原は一生に蘭の花を着けてもらった そしてネクタイを少し直してやり、一生は「良いぞ!」と声をかけた 榊原は清隆と玲香に 「お義父さん、お義母さん 行ってきます。」 と、軽くお辞儀をした 「瑛太は直接戸浪に直接向かうらしい 向こうで逢うと事になる 気を付けて行くのだぞ。」 玲香は康太と榊原を送り出してやる 康太は頷き、一生に「後、頼むな!」とお願いして応接間を後にした 力哉は「ならば行ってきます!」とお辞儀をして、応接間のドアを閉めた 康太が応接間からいなくなると 源右衛門は自室に向かった帰り 玲香も清隆も自分の部屋へ戻って行った 蒼太と矢野は、一生に「また来ます。」と、頭を下げ帰っていった 悠太は食器を引き上げ、食洗機に突っ込むと、応接間に行き、図面を広げた 一生が「悠太は図面も見れんのかよ。」と揶揄する 「一生君、俺は元々こう言うのが好きだから、勉強してるんだ。」 一生は悠太の頭を撫でた そして犬のコオと戯れながら、過ごしていた 飛鳥井の家で過ごす日々が… あまりにも、しっくりしていて 此処が自分ちみたいな錯覚をする 多分…… 康太がいれば そこが一番居心地の良い場所になる

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