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第29話 真実
トナミ海運 新社屋 竣工記念パーティー
立食方式の会場で、康太と榊原は瑛太とは別のテーブルに着かされた
康太の前には、中学生位の子供が二人
不貞腐れた顔をして、料理を食べていた
そして、虫の居所が悪いのか……康太に突っ掛かる
「お前等、父様の愛人の子供かよ。」
揶揄しながら…話す様は…醜かった
康太は知らん顔していた
すると、少しデカい方の子供が、康太目掛けて………ジュースを投げ付けた
康太はヒョイと避けると……康太の後ろの、女優にジュースはかかり
会場に悲鳴が響き渡った
戸浪は眉を顰めた
そして、康太の方のテーブルに向かった
二人の子供は、康太を睨み付けていた
だが、康太が瞳を向けると………その瞳の威力に、怖くなり目を背けた
だが、ずっと背けている訳にもいかず……
康太を見ると……その瞳に射抜かれ
総てを晒け出されそうな瞳に魅入られる
その時挨拶回りしていた戸浪が、康太の元へ挨拶にやって来た
二人の前に、見た事もない顔をした父親が………いた。
「康太君、食べてますか?」
「何時ジュースが飛んで来るか解らねぇ場所で楽しめる奴は、お前位だよ、若旦那。
ガキの教育がなってねぇな
自由奔放な馬鹿な子供を作るバカ親になろうとはな。」
康太は辛辣な言葉を投げ掛けた
戸浪はすみません…と、康太に謝った
デカい方の子供が「何でパパが謝るんだよ!]と、康太に食って掛かった
「若旦那、別室を用意しろ
殴って構わねぇか?矯正が必要だぜ?」
「死なない程度に御願いします。」
「解ってんよ、任せとけ!」
「一時間もない位に、君の挨拶が入ってるので、手短にお願い致します。」
「我が子は可愛いか?若旦那
頃合いを読み過ぎだ
まぁ許してやんよ。さぁ連れて行け!」
「すみません。我が子ですからね
しかも、そのデカい体の方は、次に家督を譲る子でして…。ではお願いします」
康太が小さい方を、榊原がデカい方を連れて、戸浪の後に続いて歩く
用意された別室に入ると、榊原は鍵をかけた
「戸浪の子供なのに、落ちぶれたガキだな?」
康太が揶揄すると、榊原は同調して
「本当に。これは酷すぎる。
我が儘放題、奔放なバカ息子ですね、コレは。」
バカにされた二人は、康太に殴りかかった
榊原は強そうだから……
すると康太にかわされ、鳩尾にパンチを倉って踞った
「僕に手を出したら、お前なんかこの世から抹殺されてしまうんだそ!」
デカい方の言葉に、康太はニャッと嗤う
「万里、抹殺されるとしたら、お前の父親の方だろ?
オレは飛鳥井家の真贋だ
お前の家の権力なぞ脅威でもないわ!」
そう言い、万里と、呼ばれた子供に少しずつ近寄って行く
万里は後ずさった……が、壁に突き当たり、康太を見るしかなかった
康太は万里目掛けて拳を振り上げた
その拳は………万里を掠め、壁に埋まり……壁にめり込み穴を開ける威力だった
万里は青褪めた
自分と変わらない位の年で、親父の愛人の子供かと思ったから……
まさか、飛鳥井の人間が戸浪の席にいようとは……想像もつかなかった
「お前は飛鳥井家の真贋にジュースをブッかけようとしたんだぞ?
万死に値するわ!
教育がなってねぇんだよ!」
万里は…ごめんなさい。と謝った
すると優しい腕が、万里を抱き締めた
「礼節を持て万里
お前は戸浪を背負う家督を継ぐ者だ
見極める目を持て
お前の器なら、親父を越えられる
だが目が腐ったままなら、お前はガキのうちに潰れるぞ。」
万里は康太を見た
その不思議な瞳に見られたなら……総てを晒け出すしかなかった
「パパは僕達を愛してなんかいない!
貴方に向けた様な瞳で見られた事なんか一度もない!」
万里は振り絞り言葉を投げ掛けた
「万里、お前の父は不器用な男だ
解ってやれ
社員の生活を支え、日々生きている
お前も、それを継ぐのだぞ
家族より会社が優先されてしまうのは、仕方がない。
しかも戸浪は不器用な男…
お前達を愛していても、それを出せない
だから、お前達をオレの前の席に座らせた」
万里の瞳が康太を、真っ直ぐ見る
「千里も来い。」
康太が呼ぶと、千里も康太の前に来た
康太は二人を抱き締め、語りかけた
「お前等兄弟は何があっても、違えるな!
この社屋は、お前等二人の為に、オレが創った双頭の海神の昇る会社だ
お前等が万里が家督を継いだら、千里がそれを支える
お前等は二人で1つだ
目を磨け
人を見ろ
そして海運の流れを掴め
無駄な事に、日々を費やす時間はねぇぞ!
物流は日々変わる
時代は流れる
それを掴めねば、海運の未来はない!」
謂い聞かせられた兄弟は窓の外を眺め、そして康太を見た
「貴方の瞳には、それが映るの?」
万里が問う
問われ康太は答えてやる
「そうだ、オレの瞳には果てが移る。」
そして優しく微笑んだ
優しく頭を撫でられ、抱き締められたのは
……………初めてだったかも知れない
万里と千里は、康太に深々と頭を下げた
「ごめんなさい
パパの愛人の子かと思ったの…」
「万里、千里、戸浪海里の子は生涯お前達二人だ
他にはいない
家督を継ぐ、万里と
経営を支える千里
お前等だけが、戸浪海里の唯一の子供
愛人の子供など生涯掛けても出ては来ねぇよ!
若旦那は莫迦じゃねぇ!
己の立場を弁えて生きている男だからな!
安心しろ。」
戸浪海里の愛人は男
子供は産まれる筈などないのだ
だけど、それは知らなくて良い………
「僕は…学ばなきゃいけない?」
万里が康太に聞く
「お前は海が好きだろ?
だがな万里、海は生きてるぞ
静かな時もあるが、荒れる時もある
時には津波になって、人も建物も飲み込む驚異にもなる
見た目じゃない
海を知れ
そして学べ
お前は未来を司る海運の先を行け!」
万里は頷いた
「千里は、もっと勉強しなきゃな
兄を支える総てにならねばならぬ
流行りの先を読め
そしてそれの動きを追え
それは海運の先を読む力になるだろ
お前等は互いがあって、先がある
刺激しあって進め。」
千里は頷いた
康太は万里と千里を並べると、頬を叩いた
「お前等に一番足らねぇのは礼節
高飛車なバカにだけはなるな
戸浪のバカ息子と、後ろ指刺される人間になるな!
解ったな!
お前等を、オレに逢わせたのは、父親の愛だ
オレを使えばタダでは済まぬ
オレは飛鳥井家の真贋
軽んじられる存在ではない
解ったな?父の愛を。」
万里と千里は泣きながら「はい。」と返事した
「さてと、戻るか。」
康太が言うと、万里は
「もう一度抱き締めて…お願い。」
と、康太に甘えた
康太は万里を抱き締めて、頭を撫でてやった
すると、千里も僕も!と甘えて来た
康太は千里も抱き締めた
一頻り抱き締めた後……離れた万里と千里の顔つきが変わっていた
榊原はドアの鍵を開けると、ドアを開いた
「さぁ、行くぞ。」
康太が歩き出すと、万里と千里は後ろを着いて歩いた
パーティー会場に戻ると、瑛太が
「何処へ行ってたんですか?
捜しましたよ。」
と近寄って来た
戸浪海里も、近寄って来て、
「そろそろ、スタンバイお願いします。」と、言ってきた
そして我が子の顔を見ると、微笑んだ
「顔付きが変わってる。流石です。」
「若旦那、お前は不器用な男だがな、1つだけ言っておく
毎日1日一回、我が子を胸に抱いてやれ」
康太に言われ、戸浪は気まずい顔をした
「済みません。やってませんでした。」
そう言い、戸浪は我が子を抱き締めた
康太は笑い、ステージの方へ歩いて行った
その後ろに、榊原も静かに着いて行く
司会者が、康太を紹介する
「飛鳥井建設より、真贋の飛鳥井康太様より、祝いのスピーチをお願い致します。」
飛鳥井建設の真贋……
飛鳥井源右衛門でない事実に……会場はざわめく
康太は壇上に上がり、マイクの前に立った
「トナミ海運新社屋、完成、本当におめでとう御座います
この社屋は、海運に相応しい外観を運気を詠んで飛鳥井建設の精鋭に作らせた、新社屋です
飛鳥井家の真贋になって、最初の仕事が、この新社屋です。
思い入れも一塩。
本当に誰よりも完成を夢見ておりました。
これからのトナミ海運の栄光と繁栄を讃え、スピーチを終わらせさせて貰います。
本当に有り難う御座いました。」
康太は深々と頭を下げ、壇上を降りた
会場は割れんばかりの拍手が送られ
飛鳥井家の真贋の世代交代を、多くの人に知らしめた瞬間だった
毅然と歩く康太の姿を、誰もが目で追う
だが、目は合わせたくはない
何故なら…総てを見られてしまうから……
康太の後ろに寄り添い歩く榊原の姿も会場では、目立つ存在となった
スピーチをした後は、入れ替わり立ち替わり
真贋に近付きたい人間が康太に近寄って来た
康太は会場にいた清四郎を見付け、声をかけた
「清四郎さん。」
声をかけられて、清四郎は笑顔になった
「康太、立派なスピーチでしたよ。」
康太は微笑んだ
会場の殆どの人間が、一条隼人の会見の、康太の姿を覚えていた
政治家の三木繁雄が康太の側へ寄って来た
「久し振りだな、康太
世代交代したのか?」
「ああ、したばかりだ
丁度良い、繁雄の所へ行こうと思ってたんだ。」
康太に言われ、三木は笑った
「そう言う時には、早く逢いに来い。」
「一人、預かって欲しい
元々官僚の出の男を、政治家を育てる方で使えるようにして欲しい。」
「指導者を育てさせてくれるのか?
ならば私が育てて、塾の講師にさせよう!
中々、使える人間がいなくてな、探していた所だ
政治家は増えても指導者は減ってく。」
康太は頼むと、三木に言った
「何時合わせてくれる?」
「三木の暇な時に合わせてやんよ。」
「ならば月曜の昼に事務所に連れてこい。」
「解った、連れて行くよ。」
「それ以外でも逢いに来い
伴侶を獲てから冷たいぞ。」
康太は笑った
「今は忙しいんだよ
また絶対に会いに行く、それで許せ。」
「許してやるから、月曜は楽しみにしてるわ。」
三木はそう言い、康太の側を去っていった
その後も、引きりなしに康太の側に人は来た
そして世間話して行く人もいれば、仕事の依頼を入れて行くのもいた
それらを力哉がスケジュールに起こし、記入して行く
瞬く間に、一年先のスケジュールが埋まった
そして、その会場には一条小百合もいた
康太の側に行き、会釈をした
「お前は、最後まで立派な親だったぞ。」
「小百合も見てたのかよ?」
「アレは育ててはおらんが……
我の子供だからな…」
「お前の息子だろ?
育ててなくたって、お前の息子だ、アイツは!
そしてお前の子供の中で一番お前に似ているのも、隼人だ。」
「お前には世話になりっぱなしだな。」
「小百合は女優にしかなれねぇ
ならばその道を進むしかかねぇ
隼人はそれは一番解ってる
解ってて拗ねてただけだ
だがな育てた奴が悪過ぎた……
無節操な奴に育ってしまった。」
「アレは、神野の父に請われて預けた
隼人の父親だからな、神野准一は…。
亡くなった時に返してもらおうとしたが…
小鳥遊に阻止された」
「逢いたいか?」
「逢いたくないと言えば嘘になる。」
「ならば、これから食事をしょう
そうして重ねて行けば、アイツの目にも見えてくるよ
パーティーが終わったらオレと来い」
「康太…」
「一条隼人の所有権はオレにある
文句は誰にも言わせねぇよ
しかし、小百合は男前だな
隼人と瓜二つ
お前等は良く似てる。」
「そんな事を言うのは康太だけだ。」
「小百合、毎月オレの口座に金を入れるのは止めねぇか?」
「親らしいことしたいのだ
最近は、隼人もたまに電話をくれる時もある。
総てはお前のお陰だ
ましてや隼人は飛鳥井の家に住んでいる
家賃位は払いたいのだ。」
康太は苦笑した
パーティーが、終わると康太は誘いを断り、帰る事を告げた
皆は残念がって康太から離れた
戸浪にも帰宅の旨を告げると
戸浪は至極残念そうな顔をした
「またランチでも食いたくなったら尋ねる」と言うと
戸浪は「絶対ですよ!」と、約束させられ、離れた
帰る支度をしていると、万里と千里が康太目掛けて飛び込んで来た
「康太さん、また逢える?」
「僕達とたまには逢って?お願い。」
と、抱き着かれ、甘えられた
康太は子供騙しな約束はせず
「逢いたいと想うなら、お前等が尋ねて来い
約束と言うのは曖昧だ
逢いたいなら行く
そうしなければ、願っても逢えないことの方が多い。」
万里と千里は頷いた
「ならな!万里、千里。
ほら、これをやるよ。」
康太は名刺を万里に渡した
そして横を通り過ぎて、パーティー会場を後にする
途中でパーティー会場にいる清四郎を拾い、駐車場へと向かった
力哉は車を開けた
康太と榊原、小百合と清四郎が乗り込み、ドアを閉めた
「力哉、発車する前に、ホテルニューグランドに部屋を取れ」と告げた
力哉は康太の命を受け、ホテルの部屋を取った
予約をして車に乗り込むと、エンジンをかけ車を走らせた
「康太、予約取れました。」
康太は「そうか。」と言い、一生に電話を入れた
「一生?頼みがあんだけど、聞いてくんない?」
康太が一生に、頼む
一生は康太が言うと、即OKと言った
「ホテルニューグランドに、隼人を連れて来て欲しい。頼めるか?」
「隼人は横にいるからよ
着替えさせて連れて行くよ、ならな。」
康太は一生との電話を切った
その後直ぐ、康太は神野に電話を入れた
「神野?オレだ。解るな?」
康太が問うと、神野は『康太だろ?』と言った
「隼人を母親に逢わせるぞ
お前達は小百合の悪口や兄弟の悪口ばかり植え付け洗脳した
挙げ句、頑なになった隼人を寮に入れた
そろそろ……解らせてやる必要があると思う
隼人が生きていく上で知らなきゃならねぇ事は教えて遣るべきだと思う
お前と神野は父親が同じだ……とか、な。」
康太が言うと、神野は絶句した
『言いますか?総てを?』
「あぁ、何時までも隠している意味すらない
しかも、親権は小百合にある
法的に返却請求させてやろうか?
一条隼人の親は誰か、考えてモノを言え!」
神野はグッと言葉に詰まった
「お前等は罪ばかり作る
それを清算する時期にある
飲まないのなら、オレは見切る。
お前の事務所を潰すのは容易い……と、脅しも入れといてやろう。」
『………総ては君の思いのままに…
一条隼人の所有権は、貴方にある
この前の記者会見で、世間に知らしめたのは貴方でしょ?
文句は一切言いません。』
「そうか、ならばオレの好きにする
でも保証しておいてやろう。
次に逢う、一条隼人は、全く違うモノになる
おまえはその目で確かめろ。」
神野は『はい。』と、返事をした
康太はまたな。と言い電話を切った
「小百合、神野も認めてくれたぞ!
心置き無く隼人に逢え。」
榊原も、清四郎も、小百合も………
あれは脅しだと思うのだが、口にはしなかった
ホテルニューグランドに到着すると、康太は力哉も同席しろと告げた
力哉はベルボーイに鍵を渡すと、康太達と一緒にホテルへ入って行った
康太はロビーのソファーに座った
「一生が来るからな、此処で待ってるとするか。」
康太が言うと、榊原は康太の横に座った
清四郎は、小百合を気遣い座らせた後にソファーに座った
暫く待つと、一生が隼人を連れ聡一郎とやって来た
隼人は康太の姿を見ると駆け寄って抱き着いた
だが………目の前に…一条小百合がいて、隼人の体躯が強張った
康太から離れようとする隼人を抱き締め
「オレから離れるなら、永久の別れになる
どうする?離れるか隼人?」
隼人は、グッと唸った
そして立ち上がると、隼人を離した
選ぶのは自分の意思で……
それが康太の想いだった
力哉はフロントに予約した飛鳥井康太、だと告げた
すると奥から、総支配人が現れ、
「私がご案内致します。」と告げた
ゆっくりとした足取りで総支配人は、康太に近付く
「康太様、今日は、また豪勢なお連れ様で御座いますね
どうぞ、私がお連れいたします。」
総支配人は、康太に一礼すると歩き出した
「トナミ海運の新社屋のパーティーだった
だが、食べたりねぇかんな、フルコースを七人分な。」
「承知致しました。」
総支配人は、頭を下げ了承した
部屋に案内されると、康太達は部屋に入った
10人掛けのテーブルが用意され、椅子が運ばれた
椅子に座ろうとするとウェイターが椅子を引いてくれ、テーブルに着いた
料理が運び込まれ、話が有るのだと察知した総支配人は
「お食事が終わられたら、御呼びください」…と頭を下げ、退出した
人がいなくなると、康太は口を開いた
「隼人、お前の母が戸浪にいたから、連れて来てやった。」
隼人は……母親を……見ようとはしなかった
「一条小百合は、隼人、お前を捨てて女優の道を選んで生きたのだ
お前の事なんて、何とも思ってない
……そう、神野と小鳥遊に言われて、お前は育ったのだな?」
康太が聞くと、隼人は頷いた
「隼人、お前は捨てられてなどいない
小百合はオレの存在を知ると、わざわざ逢いに来て月々の生活費を送っている
どうか隼人を頼むと、オレに頼んで来た。
お前はそれを知らなければいけない。」
康太は胸ポケットから通帳を出すと、隼人に見せた
隼人はそれを見て、これは?と、康太に問う
「小百合がオレに支払い続けるお前の生活費だ
お前が要らないなら、生活費をオレに払う必要などない
お前は捨てられた訳ではない
神野と小鳥遊に騙されてた訳だ
だが、二人を恨むな
お前は神野に引き取られてなかったら、オレとは出逢わなかった。
そうだろ?隼人」
「康太……オレ様は、どうしたら良いのだ?」
「オレの話を聞くか?」
康太が問いかけると、隼人は頷いた
「一条小百合は駆け出しの女優だった頃に、神野譲二と言う、神野の父親と出逢った。
そして二人は恋に落ちた……
小百合は未婚のまま‥‥我が子を産んだ
だがな、神野譲二には妻も子供もいた
所謂、不倫ってヤツだ
当時は週刊紙で相当叩かれた
性悪女だと魔性の女だの謂われたが、小百合は一切反論する事無く、それを享受していた
だが小百合は神野譲二の妻と子に悪いからと小百合は神野譲二お別れたよ。
その後に妊娠が発覚し、小百合は一人で次男になる、お前を産んだ。
隼人が小学生にあがる前に、留守番は可哀想だと現場に着いて行った時、神野譲二は隼人を見て、育てさせてくれと申し出た。
小百合は惚れた弱味で、隼人を託した
そしてまた神野に引き摺られ妊娠してお前の妹を産んでいる
隼人はJJプロダクションに入り、働き始めた。
それから後は、隼人が一番解ってるんじゃねぇのか?
小百合の悪口を埋め込まれ
兄弟の不信感を抱かせ
お前は孤立させた
それが現実だ、隼人
お前はもう知るべき時期に来ている。」
「オレ様と神野は兄弟なのか?」
「そうだ、おまえ等の父親は同じだ。
神野は認めたくなかったから、お前に辛く当たった時期もある
だがな隼人、神野を恨んでやるな
神野の母親は……亭主の浮気に悩み……自殺した
恨むべき相手が、お前に向いてしまったのも仕方がない。
だが今は誰よりも、お前を大切に思っている。」
「オレ様は、母さんに捨てられてなかった?
兄弟もオレ様を嫌ってなんかいない?」
「そうだ。小百合は誰よりも隼人を愛している
小百合はこの世で唯一の一条隼人の母親だ。」
康太が言うと………隼人は涙を流した
そして康太に抱き着いた
「抱き着く相手が違うだろ?」
「だって……恥ずかしい……」
康太は呆れて、小百合に声をかけた
「小百合、隼人をその腕に抱け。
その時が来たのだ
やっと来たのだぞ。」
康太に言われ、小百合は立ち上がると、康太に抱き着く隼人の肩に手をやった
隼人は康太から離れると、小百合に抱き着いた
榊原と、清四郎は………泣いていた
康太は二人にお絞りを渡した
康太はガツガツ、ステーキを食べていた
そして、ふと見ると、聡一郎も、一生も、力哉も泣いていた
仕方なく、康太は全員にお絞りを渡した
隼人は母に抱かれ、至極幸せそうだった
そして、隼人の顔付きが変わった
隼人は本当の母の愛を知った
愛を知り、隼人は育ての母の愛の深さを知った
見守り、怒り、正してくれた母はこの世で一人、飛鳥井康太、唯一人。
欲しかった母親の愛を手に入れた
無くしてた部分を埋め込まれた
不完全な一条隼人が完全な母の愛を知り、愛が何かを教え貰った
隼人は小百合に自分の想いを口にした
「小百合……何もない、空っぽのオレ様を育てたのは、飛鳥井康太なのだ。
オレ様の母は、康太と決めて生きて来た
小百合、産みの母と
育ての母と
オレ様には、二人の母親がいる
それで構わないか?
そして、オレ様の父親は榊原伊織、唯一人
だから、神野とは他人で良い
オレ様は今更、神野と兄弟になりたい訳ではないのだ。
オレ様は康太の長男だからな、弟が出来るから、子育てをしなければならないのだ。
兄になる以上は甘えてはいられないのだ。
だから小百合、もうオレ様に振り込みはしなくて構わない。
そのうちオレ様が、親孝行してやるからな
小百合も康太も、大切にしたいと、オレ様は思っている。
そして、父である伊織も大切にしたいのだ
家族も同然の一生と聡一郎とも離れたくはないのだ。許せ小百合。」
隼人が言うと、小百合は隼人の頭を撫で
「私は、お前を見守れれば、それで良い。
気にしなくて良いぞ。
また逢ってくれて、話をしてくれれば
それだけで、満足なのだ。」
隼人と小百合の話し方が、全く同じで、康太は笑った
清四郎も榊原も、一生も聡一郎も、笑いを隠せなかった
小百合が康太に
「隼人への振り込みは止めるが
康太への振り込みは続けさせてもらいたいのだ。
隼人を育てられなかったのは、仕方がないが、隼人の為に払い続けたいのだ。」
と訴えられたら、康太は嫌とは言えない
康太は小百合を抱き締めてやった
「やっと、隼人に総て話せたな。
これからは、飛鳥井の家へ、遊びに来い。
隼人の兄弟も連れてな、一度遊びに来い。
お前等家族は、同じ時間を過ごせなかった分、時間を作って逢えば良い。
飛鳥井は何時でも、小百合が来るのを歓迎する。遠慮はするな。」
小百合は……泣いた
「康太…本当にありがとう…なのだ。」
「お前が諦めなかったからだ。」
小百合は康太に感謝して、榊原にお礼を言い、一生、聡一郎、力哉に、隼人を頼み、清四郎にもお礼を言いまくった
楽しくディナーを楽しみ、隼人は少しだけ逞しくなった
一頻り、話して、泣いて、楽しく食べて、時間を過ごし、隼人も小百合に心を許した
だが、帰る時は、康太に抱き着き、置いていかれない様に必死になってて笑えた
帰る時に、ホテルの清算は小百合がして、隼人を抱き締めて、小百合は帰って行った
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