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第30話 拒む
康太は清四郎に、どうしますか?と声をかけた
「飛鳥井に泊まりますか?客間が出来上がりました」
「嫌……妻が気になるので帰ります
体調が優れないんですよ
康太達こそ、たまには泊まりに来て下さい」
「6人も大丈夫ですか?」
「新居が建つまで、知り合いの映画監督の別宅を借りています
部屋なら沢山あるので、来て下さい
浴衣なら全員分出せます」
康太は、御言葉に甘えて…と、泊まりに行く事にした
車に乗り込み、清四郎が道案内をする
清四郎は今、鎌倉に住んでいた
一頻り走って、鎌倉の町並みを高台へ向け走る
そして、高台に聳える白い建物だと言うと
力哉は駐車場で、車を停めた
清四郎が家の玄関を開けると、妻の真矢が姿を現した
そして康太の姿を見ると喜んだ
「康太……良く来てくれました。」
モデル張りに背の高い真矢が康太を胸に抱く
「伊織も、一生、聡一郎、隼人に力哉
良く来てくれましたね。さぁ家の中へ入って。」
真矢は全員を招き入れた
そして応接室に全員を通す
康太は、ソファーに座った
「真矢さん、久し振りです。」
康太が笑顔で真矢に話し掛けると、真矢は嬉しそうに笑った
夜も遅いと言う事でその夜は、清四郎に部屋に案内してもらって、眠りに着く事になった
康太と榊原以外は、和室に雑魚寝で良いと言う事で
清四郎は、和室に布団を敷いた
康太と榊原は………ダブルベットの寝室に通され、そこで寝る事となった
清四郎と真矢に「おやすみなさい。」と告げ、各々寝に行く
榊原は康太を部屋に入れると、鍵をかけた
スーツを脱いで、ハンガーに吊るすと、康太は用意された浴衣に袖を通した
そしてベッドに寝っ転がった
浴衣の裾が開き……キスマークの散らばった
内腿が見えた
榊原は、康太の上に体を重ねた
「伊織?此処では嫌だ…」
「何で、僕達は夫婦でしょ?
当然そう言う行為があると、思われてますよ?」
「でも……嫌だ……そんな洗濯物を出して……
洗われたくない…そんなん嫌だ……」
康太が訴える
瞳から涙が溢れそうで、榊原は引いた
「解りました。だから、泣かないで。」
「伊織…寝よ。
飛鳥井に帰ったら、オレ達の寝室まで、我慢して……」
「我慢しますよ。」
榊原は康太に股間を押し付けた
「……やぁ…伊織…此処では嫌だ。」
「遣りませんよ
でも飛鳥井に帰ったら、浴衣を着て?
凄く色っぽくて、これを着た康太を犯してしまいたい。」
「着るから……今は寝るかんな!」
榊原は、康太を抱き締めた
暫くすると、規則正しい寝息が、榊原の胸から聞こえて来た
榊原は苦笑して、目を閉じた
康太の匂いに包まれて、榊原も眠りに落ちた
朝方、ノックの音で、榊原は目が醒めた
胸の中の康太は、まだ夢の国だった
榊原はドアを開けると、そこには清四郎が立っていた
「伊織、着替えです
スーツでは過ごせないだろ?
もしドアを開けて、最中だったらどうしょうかと迷ってしまったよ。」
清四郎がドキドキなのを言うと、榊原はムスッとした顔をした
「伊織?」
「康太は嫌だって、抱かせてくれませんでした
此処では嫌だって。
だから心配しなくても、何もやってません」
「えっ???何で嫌?
伊織、嫌われる様な事したんですか?」
「してません
セックスして、そう言う洗濯物が出るのが嫌だって泣かれたら……
諦めるしかないでしょ?」
清四郎は、成る程と、康太の気持ちを計り知る
「気にしなくて良いと言っても、康太は嫌なんだね?」
清四郎が尋ねると、榊原は頷いた
「夫婦なら想像は着いてるよ?って言っても、康太は嫌だって泣いた
泣かれたら、無理強いは出来ません。」
「ならば、新居では、飛鳥井と同じ様に、ランドラーを着けないと、伊織は欲求不満になってしまう。」
清四郎は、クスッと笑った
「父さん…。笑い事じゃないです
浴衣の康太を抱きたくて仕方がなかった…のに。」
残念そうに言われたら……どうして良いか解らなくなる
「なら、新品の浴衣を持って行くと良い。」
榊原の、瞳が輝く
「本当ですか?父さん!」
嬉しそうに言う息子に、清四郎は苦笑する
息子のベクトルは、総て康太の方へ向いて伸びてる
清四郎は、着替えを榊原に渡すと、その場を後にした
榊原は康太を起こして……
康太の姿を見て…我慢出来そうもなかった
康太の浴衣は…はだけて、脱げていた
脱げてない部分は布を纏い
はだけた部分は素肌を晒し…康太は寝ていた
ツンと尖った乳首を舐めると……康太の性器は勃ち上がった
康太は飛び起き……榊原を見た
「伊織……何をしている?」
「浴衣を脱いでしまっていたので、乳首を舐めただけですよ。」
「これ以上…すんな。」
康太は……震えだした
榊原は、康太を抱き締め…背中を撫でた
「康太…何故そんなに嫌?話して?」
「此処で…した後…誰が洗濯をする?
お前と愛し合った後のシーツの惨状を目にされ……洗われるのは…嫌だ
ならゴムして…我慢するから……」
康太はとうとう泣き出した
康太は初めの頃、ゴムをしょうとした榊原に
『伊織のモノなら総て欲しい……
最後の一滴まで欲しい…』
と、言われてゴムを嵌めるのを止めた
その康太がゴムを嵌めてなんて言うのは…相当な事なのだ
「ごめんね…康太
もう……しないからね
機嫌を直して?
それとも……もう僕なんか嫌になった?」
「違う…嫌いになんてならねぇ
でも、此処では嫌なんだ。」
「解ってますよ。もう言いません。」
康太は泣き出した
「康太…着替えたら、帰りますか?
週末は飛鳥井の家でゆっくりしましょう。」
顔を上げた康太の顔は……泣き腫らした顔をしていた
榊原の胸に罪悪感でキリキリ痛む
浴衣を脱がせ、服を着せる
その間も康太は俯いたままだった
服を着て部屋を出る時も、俯いたままで
もう家に帰ると…榊原に訴えた
榊原は、康太を抱き上げようとするが、康太はそれさえも嫌がった
そして応接室に行くと、ソファーに座った
榊原が清四郎に、飛鳥井へ帰ると告げた
腕によりをかけて朝食を作っていた清四郎は、榊原の言葉に驚いていた
「何かあった?」
「……嫌がる康太に…悪戯をしたら、泣かれました。」
榊原の、言葉に清四郎は、たらーん となった
清四郎は、応接室に向かうと、俯いた康太が座っていた
「康太、どうしました?」
「清四郎さん……」
「伊織が悪戯しましたか?」
康太は俯いた
そこへ一生達が起きて来て、康太の異変に気が付いた
一生が康太の横に座る
「おい。康太、どうしたんだよ?旦那は?」
「伊織にもう帰るって言ったから困ってた」
「何があったよ?話してみ?」
康太は困った顔をして…それでも一生に話した
「伊織が…求めて来たけど…オレは此処では抱かれたくなかった
だから嫌だって言ったんだ
そしたら…解ってくれたけど…朝…悪戯されて…拒んだら……伊織は困ってた」
一生は、あちゃぁーっと目を覆った
「康太、何でそんなに嫌なんだ?
話してみ?」
「伊織と…その…犯った後…シーツとか凄い惨状になる……
オレは、そんなシーツを洗われたら…死にたくなる、嫌なんだ……」
康太の心の叫びを聞き
一生は榊原に同情しつつも、なぜ我慢できないかなぁーと、苦笑した
一生は、康太の頭を抱き寄せた
「お前は潔癖症な所が有るからな…。
でもな康太、清四郎さんは、康太に飯を食わせようと腕を奮ってるのに、それを食わずに帰る方が失礼だぞ。解るな?」
康太は頷いた
康太は小さな声で「清四郎さん、ごめん。」と謝った
清四郎は康太の頭を撫で語りかけた
「今日は、康太といられると思いましたが、仕方ないですね
伊織を許してあげて下さいね。」
康太は頷いた
清四郎は、榊原に康太に謝りなさい…と宥めた
榊原は、康太の横に座り抱き寄せた
何も言わず、抱き締めた
康太は榊原の胸に顔を埋め、抱き着いた
一生は、榊原に
「旦那、康太は潔癖症な所がある
変な所で気にする
康太は、そんなシーツを洗濯されたら嫌われるんじゃねぇか…とか
軽蔑されるんじゃねぇか……とか、悩むんだよ」
と声をかけた
榊原は康太の髪を撫でた
そして清四郎のつくってくれた朝食を食べて、飛鳥井の家へ帰って行った
飛鳥井の家へ着いて、康太は何も言わず
3階の自室に戻って行った
榊原は寝室の鍵をかけると、康太をベットに座らせた
「康太、ゴメンね
でもね、康太……榊原の家が近くに越して来たら、泊まりにおいでと、誘われるよ?
そうしたら、僕はずっとお預けなの?
僕達は、引け目を持たなきゃいけない、関係じゃないよね?なら何故?」
「だって…凄い量の精液がついた、シーツを出して、それを伊織じゃない人に洗われたくないんだ
恥ずかしくて…もう顔を合わせられない。」
可愛すぎる
可愛い…どうしてこうも愛しいのか
「僕が洗うなら、榊原の家で抱かせてくれる?」
榊原が聞くと、康太は「うん。」と小さな声で答えた
「でも……声が漏れたりしたら…やだ。
伊織にしか聞かせない声を聞かれるのは嫌…」
「恥ずかしい?」
康太は頷いた
榊原は、なら僕にだけ聞かせて…と、康太を押し倒した
甘い、甘える声が響く
榊原にしか聞かせない声を、ふんだんに上げ
康太は喘ぐ
二人は溶け合い、交わり合い…互いを確かめ合った
康太は、榊原の家から戻ってから、日曜日は1日姿を見せなかった
飛鳥井の家へ戻って直ぐ、ベッドに直行して
榊原と欲望が尽きるまで、交わり、絡まり、1つになった結果…
榊原とセツクスをする様になって、初めて
………ベッドから起きれない身体になった
足にも、腰にも、力が入らず、立っていられないし……
況してや座ることすら、辛くて出来なかった
流石に榊原も犯り過ぎだと、痛感したが……
浴衣を着せた康太が、あまりにも艶っぽくて、手放せなかった
食事も……無理で部屋に運んだ
玲香にだけ、こっそり言って、食事を用意してもらった
玲香は、康太はお前のだ、我は何も言わんよ…と、笑ってくれた
夜になると、起きれるようになったが、何だか……榊原のアレが挟まった様な感覚が抜けず……赤面した
「伊織が中にいる感覚が抜けねぇ‥‥」
「……ごめんね。こんなになるとは思わなかったから…」
「土曜の夜から犯りっぱなしたかんな。
流石のオレも限界だってば…」
榊原は康太の唇にキスして謝った
榊原は、愛し合った後のシーツを剥がし……
しみじみと、解った
康太が榊原の家で、あれ程、頑なに拒んだ理由は……
この惨状のシーツを……人に洗われたくなかった
……と言う想いなのだ
精液が飛び散り、染みになったシーツを出せる程、厚顔無恥じゃない
解ってやれなかった自分を、榊原は悔やんだ
康太は潔癖症だ
誰かに触れられるのも嫌がる
所有権を決めたなら、その人にしか触られたくないと……言う
だから、滅多と拒まない
その康太が拒む時は……
相当な想いが有るのだと、榊原は嫌と言う程想い知らされた
飛鳥井の家で初めてセックスした日に、康太はシーツを持って、途方にくれていた
僕が洗ってきます…と言うと、安心した顔をした
それ程に気に悩まなくて良いと言っても康太は気にする
榊原はベットに凭れかかると、康太を膝に乗せ、抱き締めた
康太のつむじにキスを落として、康太の匂いを嗅ぐ
「体、辛い?」
「少しは楽になった…」
「ゴメンね 」
「もう、謝らなくて良い
伊織だけが悪いんじゃない
オレも同罪だ。」
「康太、愛してます。」
「オレも、伊織だけ、愛してる 」
「康太を手にすると、止まらない。
康太を愛し過ぎて、壊してしまいそうです」
「オレはそんなに柔じゃねぇよ。」
「康太、さっき、シーツを洗って、やっと気付きました
凄い染みと、精液の臭いが……半端なかった
流石とあのシーツを洗濯物に出すのは気が引けますね……」
榊原は苦笑した
「恥ずかしくて、次顔を見せらんねぇだろ?
オレは伊織に抱かれると、訳が解んなくなるから…声も出るし……恥ずかしい」
「康太、僕達は夫婦ですからね
夫婦なら当然の事をしてるんですよ」
「うん。でも、慣れるまで待って……」
「待ってますよ。ゆっくりで良いです。」
「伊織、大好き。」
康太は榊原に抱き着いた
榊原は康太の背中を撫でた
「もう寝ますか?明日は学校でしょ?」
「うん。明日は三木の所へ行くから、昼前には帰るけどな。」
「一緒に行きますか?」
「伊織の都合が合えば、な。
だけど無理はしなくて良い
力哉に乗せて行ってもらうから、二人きりにはならねえもんよー」
「でもね、僕も行きます。」
「うん。」
康太は榊原の胸に顔を埋めた
榊原は康太を抱き締めたまま、ベッドに寝そべる
抱き締めて、少し経つと、康太の寝息が聞こえる
榊原は康太を抱き締めたまま、瞳を閉じた
そして、深い眠りに…堕ちて行った
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