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第32話 在るべきカタチ

康太は榊原に、お揃いのヴェルサーチのスーツを着せてもらった 一生は、先月、力哉が作る時に自分も作ったスーツを着ていた 聡一郎は、急に育った為に今までの服が着れなくなり、新調したスーツを着ていた 隼人は、クローゼットの服は殆ど康太に捨てられ、小鳥遊が総て新調して持たせたスーツを着ていた ホテルニューグランドへ向かうと、何時もの様に車を下り、ベルボーイに鍵を渡し ホテルの中へ入って行った 力哉はフロントへ向かい、到着を告げると ベルボーイが来て、部屋へと案内された 力哉は進藤と言う人間が来たら、部屋へ案内してくれるように伝え、部屋へと向かう 部屋に入ると、康太は中央のソファーに座った その横に榊原が座り 一生、聡一郎、隼人、力哉は、ソファーの後ろに立って、進藤を待っていた ドアがノックされると、一生がドアを開けに行った 正装した一生の姿に、進藤は驚く…… そして部屋に入ると、もっと驚いた 全員が正装しているからだ ソファーの中央に康太が座り、その横に榊原が座っていた 二人は揃いのスーツに身を包んでいた そして、その二人の後ろに、一生、聡一郎、隼人が並んで立っていた 彼等もスーツに身を包み その光景に、進藤は息を飲み 槇原は学校とは違う姿に言葉をなくした 康太は、進藤と槇原に、座れと言葉を投げ掛けた 進藤と槇原が座ると、一生、聡一郎、隼人、力哉は、隣の部屋に入って行った 進藤達が入って来て、暫くするとドアがノックされ、榊原が開けに行くと、お茶が差し入れされた 進藤達が来たら、お茶を4つ持って来るように頼んでおいた ウェイターが康太達の前にお茶を置く そして、深々と頭を下げ、退室した 康太は足を組むと、ソファー肘置きの上に肘を置き、槇原を見た 「槇原、お前は進藤が行く道を聞いたのか? 聞いたなら、お前はどうする?聞かせろ?」 槇原は……言葉に窮していた 「…薫は、元々政治家を目指していた だから、何時か……俺の元から去っていく事は解っている!」 槇原は本音を康太に話した 「離れたくないのに…… そこで意地を張るな。」 槇原は康太を見た 「飛鳥井は榊原と、公認の仲だから…… 俺の気持ちなんか解らないよ。」 槇原が言うと、康太は 「オレの初恋は中等部に入って直ぐ 榊原伊織に恋をした だが、オレは四悪童で伊織に嫌われていた 5年間の片想いの末の両想いに、オレは信じられなかった キスも伊織が初めてだからな 飽きられたら死んでしまおう……なんて思っていた 槇原と何の違いもねぇよ」 康太はそう言い、紅茶を一口飲んだ 槇原は信じられない瞳で康太を見た 「槇原、お前は強姦まがいに進藤に求められ、結ばれ恋人同士になった だが、お前は何時も不安で仕方がなかった 何故なら、進藤は政治家になる夢が有るのを、お前は知っていたから だから、違う大学に行く不実な恋人を見送り、想い続けた 進藤が結婚して、官僚になって、お前と離れて行っても、お前は想い続けた そんなお前の元に進藤が総て捨てて戻って来ても…… 何時か進藤は離れて行くと、心に箍をかけ 我慢する事で望む心を押さえていた だがな槇原、もう総て認めろ。 総て認めて、進藤を支えて行ってやれ」 「飛鳥井……」 「愛してるんだろ?進藤を?」 槇原は頷いた 「来年、3月になれば、学園から進藤は消える 三木繁雄の秘書となり勉強して、何時か議員を育てる政治塾の講師になる。 進藤はもう、心を決めた オレはそんな進藤に国会議員の三木繁雄を紹介した 三木は進藤を自らの手で育てて、行く行くは政治塾の講師に据えると言っている お前はどうする?進藤に着いて行くか?」 槇原は首を振った 「俺は教師しか出来ない 薫を支えると言っても…薫は教師を辞め桜林から去って逝く‥‥ そしたら……俺と接点さえ無くなる…… …離れれば………俺はまた捨てられるに決まってる…… 俺はその時に…黙って別れてやる事しか出来ない……」 康太には槇原の気持ちが痛い程解った 解ったから腹が立って仕方がなかった 「ハッキリしろ! 好きなら着いて行け! 着いて行く気がないなら、別れろ! さっさと決めろ! 進藤!そもそもお前がちゃんと、気持ちを伝えてやらねぇから、いけねぇんだろうが! 誤魔化して抱いているから、気持ちがちぐはぐなんだろうが!」 康太は怒鳴った 別室にいる一生が飛び出して来る程に…… 「康太、どうしたよ?」 榊原は康太を抱き締めていた 震える肩を、榊原は優しく撫でていた 榊原は一生に、総てを話した 一生は、康太の横に座ると、槇原に声をかけた 「槇原、康太は飛鳥井の家の為に生きている そして榊原は、そんな康太を支える為に側に行き一緒に住んでいる。 支えるって言うのはな、別に進藤の仕事を手伝うとかじゃねぇだろ? 悩んだ時に、手が触れる位に近くにいて、話を聞いてやるのも、支える事になるんじゃないか? 榊原は、康太が辛い時、側にいて抱き締めて遣りたいから、側にいる それで良いんじゃないのか? 考え過ぎなんだよ。」 槇原は……そんなんで良いんですか?と一生に問い掛けた 「薫を支えるのは、そんな容易い事で良いんですか?」と。 榊原は、そんな槇原に声をかけた 「愛する人に手を差し伸べる それだけで良いと僕は想いますよ。 僕は康太を支える為に、康太の側にいたい 槇原も、進藤が好きなら、自分を誤魔化す事なく、進めば良い。違いますか?」 槇原は、ポロポロと泣き出した 我慢して来た、自分の殻が崩れ落ちる 進藤の為に……自分を押さえて来た 押さえられない想いが溢れだし……涙が溢れ出した 榊原は、康太を抱き締めたまま立ち上がると、一生に帰りましょう…と、告げた 一生は、別室から聡一郎と隼人を呼びに行った 康太は榊原の腕から降りた 「進藤、誤魔化しのセックスはすんな! 槇原を納得させ、蕩けさせて愛してやれ そしたら槇原も素直になる。 じゃぁな、オレは帰る! 進藤の門出だ 此処の支払いはしておいてやる 明日の朝まで貸しきりだ。 遅刻せずに来いよ。じゃあな。」 康太は片手を上げて、歩いて行った 榊原も一生も、聡一郎も隼人も力哉も、康太に続いて出て行くと、部屋は二人きりになった 康太は力哉に支払いをさせると、ロビーへと降りて行った ロビーには偶然か?嫌、必然か? 神野が小鳥遊と座っていた そして康太が降りて行くと、深々と頭を下げた 「神野、どうしたんだよ?」 康太はしれっと歩み寄った 「飛鳥井家の家へ行こうと走ってたら、力哉の運転する車を見付けたんで後を追いました。」 神野は、着けてきたと白状した 「まぁ良い。オレに何か食わせろ。」 康太は神野に、催促を入れた 「何が食べたいですか?」 神野が聞く 康太は何でも良い、静かな所へ連れて行け と、告げた 「なら、部屋を取りますか?」 「此処では良い 他の静かなレストランとかで構わねぇよ」 「なら、静かなレストランを知っているので、そこへ逝きます 俺の車の後に着いて来てくれ。」 神野が謂うと、康太は頷いた 康太は力哉に神野の車の後を着いて走れ、と指示して、車に乗り込んだ 神野の車は、康太達が着いて来るのを確かめながら、鎌倉へ向けて走り出した そして、海の見えるレストランの駐車場で車は停まった 車から下りて、神野は康太達を待つ 揺ったりとした足取りで歩いて来る康太に神野は 「此処で良いですか?」と尋ねた 「充分だ。オレを連れて行け」 康太が言うと、神野と小鳥遊はレストランの中へ入って行った レストランの10人掛けのテーブルに案内され、康太は適当に座った 一生達も別に拘る事なく、適当に席についた 隼人は……康太の隣に座っていた 神野と小鳥遊は、隼人を伺い見る 康太は仕方なく口を開いた 「隼人は、総て理解した 理解して小百合とも和解した 隼人は母の愛を知って、総てを許した そうだな?隼人 」 康太が言うと、隼人は頷き、口を開いた 「オレ様は康太の長男だから、これからは兄として子育てせねばならぬのだ 小百合や兄弟にも、オレ様は逢う 何故なら、血が通った兄弟だからだ 血が通った母親だからだ 拘りは捨てた オレ様には産みの母と、育ての母がいる オレ様は、どっちの母も大切で、幸せにしてやりたい だから仕事をせねば、ならぬのだ もうオレ様は愛する人しか抱かない だから、小鳥遊は要らない 」 隼人はクスッと笑い、そう答えた そして神野に向き直り 「オレ様と、神野は、これからも事務所の社長とタレント それ以外の繋がりも、関係も、オレ様には 必要ではない オレ様は、飛鳥井康太の長男 神野、お前の弟ではないわ」 隼人はそう言い、見た事もない大人っぽい笑みを浮かべた 「これからのオレ様の人生に、お前達は仕事以外で関わるな! それが、オレ様の出した答えだ オレ様は、これからも康太と生きて行く オレ様の父親はこの世で唯一人、榊原伊織だ オレ様はそう心に決めた そしてオレ様の母は、産みの母の一条小百合 そして、育ての母の飛鳥井康太、唯一人 オレ様は一条隼人だからな、一条の親も兄弟も仲良くして行く それが、オレ様のこれからの目標 だからな神野、お前は入る余地はない オレ様は、二人の母に恥じる行いは決してしないと決めたのだ だから、仕事をする。 この世で一人の一条隼人に、オレ様はなる それが、オレ様の決めた事だ。」 隼人は神野と小鳥遊を見詰め言い切った 神野は康太に深々と頭を下げた 隼人に総て教えたと聞いた時には恐怖しかなかった 総て知れば………隼人は事務所を出て行く だが、隼人は出て行く気はないみたいで、仕事する上での自覚も目標も持っていた だが、その自覚は……… この世で唯一の肉親を失った瞬間だった 神野の血を分けた肉親は……もうこの世で一条隼人、唯一人 だけど隼人は、オレ様の人生には一切関わるな………と、宣言した 兄弟だと………今更名乗るな と、言う事だった それが隼人の出した結論 そして隼人は、一条小百合や兄弟と仲良くして行くと言う 神野が壊し、騙し続けた現実を 飛鳥井康太は修復し、隼人に与えた 隼人の欠落した部分を! 飛鳥井康太は与え 再び、一条隼人を作ったのだ 神野達の目の前の一条隼人は変わっていた 揺るぎない瞳をした、別人になっていた 康太は隼人は変わる 変わった隼人を保証してやる……と、言った そして目の前に、変わった一条隼人がいた 大人の男へと変貌を遂げていた 見れば、惹かれずには要られない容貌に、隼人はなっていた 康太は神野の瞳を貫いた 「どうだ? 中身を総て満たしてやった一条隼人は? コイツの中身は埋まった そして軸が地面に定着した もう隼人はフラフラしねぇ 芯が出来たんだ!もうブレねぇ オレの、飛鳥井康太の長男だ 神野、お前に預ける そろそろ仕事をさせろ!」 康太はそう言い、神野の肩の荷を下ろしてやった 神野は……康太を見て……泣いた 「康太……俺は許されて良いのか?」 呟いた言葉こそ、神野の本音だった 「一条隼人が出来る上で、お前等は必要な存在だった だがな、神野…… お前は隼人を見るたび憎しみを膨らまし苦しみ続けた そんな神野を解っていて、支えた小鳥遊の気持ちも解る だからそろそろ、肩の荷を下ろせ 罪悪感と、魂胆と、後悔と、憎しみと、渦巻くお前等の想いを清算しろ それを引きずって、隼人を見るなら オレはお前等には隼人を預けない 隼人を育てたいなら、その肩の荷を総て下ろせ そしてお前は社長として、隼人を見ろ これは、飛鳥井康太の一条隼人だ 蔑ろにすれば、オレは黙っちゃいねぇ オレは隼人の総てを引き受けてやったんだ この先も隼人はオレと共に生きる オレの側で、離れる事なく、隼人は生きる 此処にいる隼人は、前のお前達の玩具の隼人とは違う タレントとして使うなら、新たに契約の書類を作成する ケジメを着け、出直す それが、隼人の出した結論だ どの道、お前等は契約書もなく隼人を使ってる事に変わりはねぇかんな 此処で仕切り直す 契約は飛鳥井の家へ持って来い」 神野は涙を流しながら康太の話を静かに聞いていた 心が穏やかだった 解き放たれた想いが…… 神野を解き放った 神野は……泣いていた……嗚咽を漏らし泣いた 母は……神野が高校の時に、首を吊って死んだ 父親の浮気が原因だった 浮気して、家族を蔑ろにして 愛人に子供まで作っていた そして……その愛人の子供をタレントとして使うと……父親が言った翌日 母は死ぬ事を……選択した 辛かった想いを勝手に終了させ、神野に地獄の日々を与えた 神野は学園の寮に入り、家には寄り付かずにいた……… だが……高校を出る年に父親が死んだ 奔放なバカ親父の死に、涙すら出なかった そして、親父の死んだ夜 小鳥遊は神野に、事務所の社長になってくれと頼まれた 神野は小鳥遊も親父の手が着いた愛人なのだと思っていた ずっと好きだった その人を………親父は抱いているのだと思っていた だから、神野は、事務所の社長になってやっても良い…… その変わり、お前を抱かせろ……と小鳥遊に迫った 小鳥遊は……その条件を飲み 神野に体を差し出した 小鳥遊は誰の手垢も着いてなくて……綺麗なままだった 後悔と……独占欲とで間違った始まりをした 自分を愛してなんかいない……と、神野も小鳥遊も思っていた 誰よりも、互いを愛し、欲しているのに…… 想いは擦れ違い、歪に歪んでいた その形を直してくれたのは、康太だった その時初めて、神野は自分の罪を想い知った 隼人に、小鳥遊を与えたのは神野だった 神野は小鳥遊に、隼人と寝ろと命令した 小鳥遊は隼人と寝た 神野は嫉妬で……隼人に辛く当たった時期もある 総ては自分の作った罪なのに…… それを解らせたのは、やはり康太だった 康太は、神野に、それらの肩の荷を下ろして良いと…………言った そして、一条隼人を、使って良い……と。 ケジメを着けるのは、神野と小鳥遊の想いを知っているから……… 二人の為に線引きをしてくれたのだ そして、それで、隼人と、神野と小鳥遊との、住み分けをする 気持ちの問題で引き摺っていたのを……… ケジメを着ける事で、それにカタを着けろと 小鳥遊も泣いていた 静かに涙を流し 「許されて良いのですか?」 ………と、康太に尋ねた 「お前等は、事務所の社長と、マネージャー そして隼人は、飛鳥井康太から託された宝物 契約の場には一条小百合も呼ぶ 日時を決めて、飛鳥井に来い そしてカタを着けたら、饗してやるから飲め 飲めば見えてくる明日もある 飛鳥井のドアは開かれている 迷わずに来い。解ったな?」 神野と小鳥遊は、康太に深々と頭を下げた 康太はテーブルに肘を着き、隼人を眺めた そして隼人の頬に手を添えた 「これで、良いか? お前の望む、答えは出たか?」 隼人に尋ねる 隼人は康太の手に擦り寄り 「これで良い 康太が道を作ってくれた オレ様は、その道を違えずに進むだけだ オレ様は、康太の長男だから、恥じない行動をせねば、弟達に示しがつかないのだ。」 隼人は、ドキッとする程、大人びた笑みを浮かべた 隼人の無限の可能性を、神野と小鳥遊は見せ付けられた瞬間だった 「神野、小鳥遊、オレの隼人はもう一筋縄ではいかないぞ 子供騙しの誤魔化しなんて、効かない それだけは、忘れるな さてと、何か食わせろ オレは昼から何も食ってねぇんだ。」 康太が言うと、神野は店のオススメの海鮮フルコースを8人分注文した 康太は神野と小鳥遊を見て笑った 「スッキリした顔したな。 だが、その苦しみを忘れるな その苦しみがあるから、先が有るのだからな」 康太の言葉に神野は 「解っています。 本当に…何から何まで世話になった。」 「その内返してもらうから気にするな。」 康太が言うと神野は嫌な顔をした 「貴方がそう言うと、怖い」 「そうか?オレは瑛兄の学友の神野晟雅を蔑ろにした覚えはないぞ。」 「蔑ろにはされてません。 が……頼み事が有りますか?」 「解ったか? お前等にも悪い話じゃねぇから安心しろ。」 康太はガハハハッと笑った 「どの様な話なのですか?」 神野が康太に問う 「隼人に専属のジュエリーデザイナーを着ける 隼人の戦略に合ったジュエリーを作らせて、隼人に着けさせる 隼人はスキャンダルもあったし、路線を大幅に変更せねばならねぇかんな 当面はオレの指示で動いてもらう 道筋を着けたら、隼人は化ける そう言う事だ。良いか?」 「異存はありません 隼人に専属のジュエリーデザイナーを着ける案は出てましたから。」 「そのデザイナーは、飛鳥井の兄の恋人だ 隼人のピアスを作らせたのは、その恋人だ 腕は悪くない。 だが無名だからな、名を売りたい。 名を上げれば、頼めなくなるデザイナーになるから、今から押さえといて隼人の装飾品を優先させる。」 と、康太は腹黒い算段を打ち明けた 一生は、越後屋なみ……の腹黒さ…と呟いた 康太は笑って、更に続けた 「そしてな神野、お前の新築する自社ビルのテナントに、そのデザイナーのアトリエを入れる お前の事務所のテナントを先ずはオレがお買上してやんよ その土地の相場でな 案外、小鳥遊と宙夢は気が合うかもな 話し相手になれる筈 そして、神野は瑛兄よりも、蒼太の方が気が合う筈だ 愛の為に飛鳥井を捨てた男をお前は見ると良い お前等は、上手く遣って行ける筈だ 契約の日は、今週末 その日に、小百合も、蒼太も宙夢も呼んでおく 異存はないか?」 康太に問われ、神野と小鳥遊は頭を下げた 「異存ありません ならば週末までに契約書を作成しておきます。」 康太は鞄の中からタブレットを取り出した そして、操作して、開いた画面を神野に見せた 「これは?」 神野の目に、立派なビルの絵図が差し出された 「お前の事務所だ。」 「えっ…これが?」 「そう。今隼人が仕事をしてないからな、財政は厳しいだろう? だから、そのテナントの1つと住居を2部屋、オレが買い上げてやる それで財政難は抜け出せるだろ? 隼人に仕事させるなら経営も考えねぇとな 自社ビルだからテナントを入れて 賃貸で部屋を貸し出せば、賃料が入って来るからな、何とかなるだろ 新しいタレントを入れて育てて行かないと、何時までも弱小プロのままだぞ。」 康太に、事務所の再建計画を聞かされる 経営戦略を踏まえた話しは、経営アナリスト顔負けだった 神野は康太に 「何だか…俺より社長らしいな……いっそ、康太が社長やるか?」 と切実に言った 康太は失笑した 「オレは飛鳥井康太以外にはならねぇよ。」 飛鳥井家の自分の存在を誰よりも解っている人間の言葉だった 康太は食事を終えると、神野に向き直った 「神野、隼人を10月から仕事させろ それまでに、道場で体を作る 仕事しない今、一生や聡一郎相手に道場で鍛えられている かなり体も出来てきた。 一条隼人の路線を変えねばならない位にな」 顎のラインがシャープになり 男らしさが際立つ顔立ちになって来た モデルの人形の様な創られた顔から、生身の男へ変貌を遂げる 「復帰会見はやらねぇ だけど、その前にCMを撮る コンテは伊織が書いた。 飛鳥井建設の新CMに、隼人を出す そこで、新しい一条隼人を魅せ付ける そして、ギャラの提示だが、隼人の相場で出してやる それは飛鳥井建設に来い。」 神野は言葉も無くした 「お前に話す筈の事は、それ位だな。」 康太は、食後のデザートを頼んだ 神野は康太に………何と言って良いか解らなかった 「あの…どうして、康太は、俺を救ってくれる?瑛太の学友だからか?」 「神野、オレはお前が例え英の学友でも、飛鳥井に必要なければ切れる。 切らないのには……意味がある…聞きたいか? だけど、それは、お前一人にしか話さない 聞いたなら、小鳥遊にも話すな 絶対に!出来るなら、話してやる。」 「俺一人の胸に納めておくから……話してくれ。」 「ならば、オレと外に出ろ。」 康太はそう言うと……立ち上がった そして神野と外へ出て行った 帰って来た、神野は言葉を少なげだが、決意の瞳をしていた 康太は、プリンを食べると話は終わったとばかりに店を出た 「神野、飛鳥井建設に、明日な夕方来い CMの契約をしないと、来月からオンエアー出来ない。」 来月まで後1週間もなかった 「撮影は?」 「もう終わっている。」 「え?終わっている?」 だから、CMコンテは伊織が書いた……なのか… 「優しい色を出したかったから、敢えてビデオで撮影した 後は編集してお前等に見せるだけだ。」 神野と小鳥遊は、またまた驚いて言葉を無くした 康太はクスッと笑った 「誰が撮影したんですか?」 神野に聞かれると、康太が「オレだ!」と、答えた 康太自ら撮影したら……間違いはない カメラマンには見せない顔を見せるだろうから…… 「何時、見せてもらえますか?」 「明日、契約に来い そしたら見せてやる。 でもオレは学校があるから夕方にな じゃあそう言う事だ 明日な神野、小鳥遊。」 康太は片手を上げて、車に乗り込んだ その後に、一生達は続き車に乗った

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