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第35話 青天の霹靂

10月1日、衣替え 桜林学園の制服も冬服へと替わった 蒼に近い紺のブレザーに、ブルーのカッターにネクタイ そしてブレザーと同色のズボン ブレザーの胸ポケットには、桜林の桜を型どったマークが入っていた 榊原は、その制服をストイックに着る 見るからに優等生の制服姿の榊原に 制服を崩してだらしなく着る康太… 同じ制服には見えなかった 康太は、衣替えした榊原の姿をスマホに収める 榊原はまたか……と、笑って撮らせてやった 「康太のPCの待ち受けも僕なんですか? 一生に冷やかされました…夏服の僕がPCの中で笑ってたって……」 康太は、撮るのを止めた 胸ポケットにスマホをしまった 「康太……?」 「兵藤んちに行ってくる 伊織は来なくて良いぞ」 康太はそう言い、寝室を出て行った 階段を降りる途中で、一生のドアをノックすると、 「オレの鞄を学校まで持って行ってくれ」 と、頼んで、飛鳥井の家を飛び出した 康太は兵藤の家の呼び鈴を鳴らすと、美緒に熱烈歓迎された 「美緒に話があるんだ 聞いてくれねぇか?」 康太が言うと、美緒の瞳が光った 美緒本来の食えない顔を覗かせる 「聞いてやってもよいが、答えは保証しないぞ。」 美緒は言い放った 康太はニヤッと笑い 「答えを期待して話すのは愚か者しかいねぇよ。」 康太の言い分に気を良くした美緒が康太を応接室に通した 「話は何だ?」 「貴史の事だ 貴史を三木に預ける気はねぇか?」 「繁雄にか? 繁雄は貴史に外飯を食えと言っているのか?」 「不敵な面構えが気に入ったらしいな 育てて見てぇと、言い出した オレは一応聞くだけだと、言ったからな、 返事は期待してねぇと思う」 「康太は、貴史はどうしたら良いと思う?」 「貴史は、兵藤丈一郎の気質 庶民を知って、国政で働く 庶民を知らねば先はねぇ アイツは日本を変える礎になる オレはそう信じている 三木は、庶民から圧倒的な指示がある それを知るのは良い機会かも知れねぇ 貴史の後ろ楯には、賓田は不要 今は使えるが、総理の命もあと少し見切るには良い時期かもな」 康太が言うと、美緒の瞳が輝いた 「飛鳥井康太に問おう。 兵藤の後継者は誰が良い?悦史、貴史?悟史?」 「オレは貴史しか面識はねぇよ。 貴史の果ては見てやったが、他には興味もねぇ 見たいとも思わねぇ。 貴史に兄弟がいたのも初めて聞いた…」 「兄弟ではない 兵藤家の本家の跡取りの話をしてたのだ 貴史も候補に上がってるらしいから、困ってるのだ。」 康太は、そっちね…と、納得した 「貴史はオレとは違う 家の為や、一族の為には、仕事はしねぇ アレは根っからの政治家、兵藤丈一郎の気質を内に秘めてる 家督を継ぐより、働かせろ。」 康太の言葉を聞いて、美緒は覚悟を決めた 「康太、貴史は三木に預ける アイツは、貴史を育てると言ったんだな?」 「あぁ。」 「ならば、それも定め 本家の方はさっさと断ってやるわい。」 美緒はサッパリして笑い声を上げた 康太は美緒を見て、後ろに蠢くどす黒い影を見た 「美緒、兵藤の本家の座は、熾烈な争いとなっているのか?」 「みたいだな 我には関係がないが、うちの亭主には関係がある。」 「美緒の亭主は家督争いから外れてる ターゲットは貴史 狙われたら命はねぇかもな 熾烈な潰し合いが勃発してる しかも、貴史は兵藤の本家のお気に入り 命を狙われるぞ 早く家督にケリを着けろ」 美緒は押し黙った そして思案する 「流石だの、康太 見て来たかの様に、凄い。」 「凄いついでに言うとな美緒、オレは撃たれる 貴史と共に玄関を出れば、貴史は狙われる……だからそれを庇って、オレは撃たれる だから、伴侶を置いて来た。」 美緒は言葉を失った 「今朝、オレは見た…… ……嫌、紫雲からオレの危機に思念を送って来のを、見せられた。 それでオレは慌てて此処へ飛んで来た。 まぁ三木から頼まれてたのを、忘れてたからってのもあるがな。」 「貴史を狙うのか?」 「そうだ。」 その時足音がして、応接室のドアが開けられた 「美緒、行って……あれ? 康太?何でいるんだよ。」 兵藤が登校を告げに応接室に入って来て、康太を見付けた 「学校に行こうぜ。」 兵藤が、康太を誘う 康太は立ち上がると、美緒に話はそれだけだ…と、告げた 「康太!行くな…見たのなら…行くな…」 美緒が康太を止める 康太は笑って首をふった 「此処で事件にせねば、何時狙われるか見当が着かねぇ。その方が怖い…」 康太の言い分は尤もだった だが!そんな事になれば、玲香に顔向けも出来はしない…… 康太は兵藤に、一緒に行こうぜ……と、誘い歩き出した そして、玄関に向かい、靴を履きドアを開けると…… キランと光る銃口が見えた 康太は咄嗟に、兵藤を突き飛ばし…背中を向けた瞬間! 康太の左の肩口を………銃弾が貫いた そして康太の肩を貫いた銃弾が、玄関の壺に当たり割れた 康太は兵藤に抱き着き…「伊織には言うな!」と、口止めした 榊原に、言うなと、言う事は救急車なんて呼べなかった 美緒は康太の肩口にタオルで止血すると 抱き上げて、車に乗せた そして運転手に飛鳥井記念病院に運べと、運転手に命令した 「貴史は、お前は今日は何処へも出るな! 誰とも電話で話すな。よいな」 美緒はそう言い、車に乗り込み、車を走らせた 美緒は康太を抱き締めると、携帯を取り出し、叔父である警視総監に電話を入れた 「叔父様お久し振りです。美緒です。 今日は叔父様にお願いがあり電話しましたの。聞いてくださりますか?」 叔父は美緒に甘かった 美緒はそれを利用する 何でも聞いてあげるよ…と、言う叔父に 「兵藤の家が襲撃に逢いましたの。 そして撃たれましたの…」 叔父は美緒が撃たれたのか心配したが 「撃たれたのは、飛鳥井家の真贋、飛鳥井康太……貴史の身代わりになり撃たれました 私は黙ってられません ですが、康太が撃たれたと世間に発表すれば……騒動になります 飛鳥井の真贋は、天皇家が司祭を立てる時に繋がるお方 政界、財界、彼の人脈を総動員されたら、どうならます? そうなる前に、何とかして下さい!叔父様」 美緒のキツい言葉に叔父は、言葉を無くした そして、必ずや犯人を捕まえる……と、約束した 美緒は康太の髪を掻き上げ 「バカな子だ……兵藤の騒動に巻き込まれて……」と、康太に呟いた 康太は痛みで顔を歪め笑った 「通学途中で狙われたら、貴史は即死 それは避けたかったかんな。」 「だからと言って康太が撃たれていい筈がないではないか!」 「美緒、騒ぎは最初が肝心 一度狙われて仕留められずにいると、次は外さねぇ 最初に撃たせとけば油断が出る そこを狙う。 貴史が撃たれたと、流せ、解ったな?」 美緒は頷いた 美緒は康太を、飛鳥井の主治医の病院に連れて行き見せた 飛鳥井の主治医にして院長の飛鳥井義恭は、傷を見て 「銃創か、貫通してるけど銃創は治りが遅いから無茶はするなよ!」と謂い、傷口を洗浄して縫った そして肩に包帯を巻き付けた 義恭は康太に 「その盛大なキスマークを見れば、激しいのは解るが…… 2、3日はセックス禁止だ! 犯れば、傷口が開く なんなら2、3日入院して行くか?」 と、セックス禁止令を出した 康太は苦笑した 美緒は康太が見てもらっている間に、桜林の新しい制服を用意した 包帯の巻き付けた体に、桜林の冬服を着る 康太は痛みに眉を顰めつつも、立ち上がった 「薬を出しておく 学校は2、3日、休め 下手に出血したら困る 銃創だからな、治りは遅い しかも、出血して他の病院に行かれたら、警察沙汰じゃ済まない、理解してくれ。」 康太は頷いた 美緒は、飛鳥井建設まで康太を送ると言った 玲香に説明しておかねば、ならないから…… 康太は飛鳥井建設まで送り届けられ、地下の駐車場で車を下りた そして、玲香の待つ、最上階に向かった 最上階に着き、エレベーターを降りる康太の体がフラついた その時、康太の体を瑛太は腕を伸ばし支えた 外出から戻った時に、最上階に上がるエレベーターを見付け 瑛太は康太かと想い、待ち受けていた すると、青白い顔をした康太が、どう言う訳か兵藤美緒と共に、立っていた 瑛太が近寄ろうとすると、康太の体がグラついた 美緒は深々と瑛太に頭を下げた 康太は美緒に、話すな!と、口止めした 「瑛兄、離してくれ。」 康太が頼むが、瑛太は康太を離さなかった 「伊織は?どうして伊織と一緒ではないのだ?」 「伊織は、オレの命 みすみす命を危ない場所に連れて行く訳はないだろ?瑛兄 」 康太はそう言い、自分の足で立った 「飛鳥井瑛太、オレは兵藤と、この先も縁を切る気はない それを弁えるのなら、母の部屋に着いて来い それが出来ないのなら、オレを離せ 強いては飛鳥井の為にオレは生きている……それを頭に入れろ 美緒、行くぞ。」 康太が言うと、瑛太は康太を抱き上げた 「総てはお前の想うまま。 兄はお前の邪魔などせぬ 今までも、これからもな。」 美緒は、玲香の部屋をノックした すると中から玲香が現れ、目の前の美緒の姿に何かを感じていた 「何があったか?入られよ。」 玲香が招き入れると、瑛太は康太をソファーに座らせた 康太は左肩口を押さえ、息を吐き出した 美緒は今朝の事を総て話した そして、事が事だけに、秘密利に康太を飛鳥井の主治医に見せた事を告げた 康太が銃で撃たれた? 玲香も瑛太も、驚いていた 康太はソファーに凭れかかった 「ヤバイな……来る!」 と、叫ぶと、玲香の部屋に一陣の風が吹き荒れた 玲香の部屋に、紫雲龍騎が現れた 「式神飛ばしてくるんじゃねぇよ龍騎!」 ドラマか何かで見る様な陰陽師の格好をした男が立っていた 『何故じゃ……危ないと見せたではないか……何故撃たれる…何故だ!康太…』 紫雲は泣いていた 「オレは貴史を死なせたくなかった 銃口は貴史の心臓を狙っていたからな…」 『我の康太を撃った奴を呪い殺してやる! 呪い殺すだけでは、物足りぬ、地獄の底まで引き摺り落としてやるわ!』 「龍騎、止めろ! 捕まえてこそ、後に利用出来るものがある 呪い殺すな。お前は手を出すな!」 紫雲はベソベソ泣き出した 「龍騎、オレは生きてる 傷が治ったらお前に逢いに行く それで機嫌を直せ。」 『絶対だぞ。』 「約束する。」 『康太は約束を破る 今月は忙しいと、後回しにしたではないか』 康太は、たらーんとなった 榊原とのセックスを見せる約束を、果たしてないから… 「傷が治ったら行く、絶対だ! 行かなかったらお前が押し掛けて来い。」 康太が言うとやっと納得した そして、犯人の名前と住所と、黒幕の名前と、住所を教えてくれた そして、その現場へ行く監視カメラに数ヶ所写されてるから調べろと言った 康太はメモして美緒に渡した 紫雲は泣きながら、消えていった 消えた後、康太は息を吐き出した 「康太、明日の朝、消毒に乗せて行きます」 美緒は責任を感じ康太の介助に当たるつもりだった 「母ちゃん、瑛兄、オレは撃たれるのを知っていた 龍騎がオレの異変を察知して、思念を送って来たから。 だがオレは、みすみす貴史を家督争いに巻き込ませたくはなかった。 アイツは、誰よりも国民の声を聞く、政治家になる。 オレは、それを見届けてやると、貴史と約束した だから、死なれたくはなかった オレは貴史の胸くらいの身長……標的は貴史、そして貴史の心臓を一撃に狙っていた もう少しズレてれば弾は当たらなかった だが、オレの計算が狂った…それだけだ。 美緒にも貴史にも非はない。 そして兵藤と飛鳥井はこれからも、仲良く変わらない。それで良いか?」 康太が言うと、玲香も瑛太も頷いた 康太は苦しそうだった 瑛太が家まで送ろうか?と、訊ねたら 康太は力哉の車で帰る……と、告げた 力哉が玲香の部屋に呼ばれ、康太がいるから驚いた 康太の顔は蒼く……辛そうだった 「力哉、オレを乗せて帰れ。」 康太が言うと、瑛太が、ヒョイと康太を抱き上げた 「下の駐車場まで送る それなら良いだろ?」 と、言われ康太は頷いた 瑛太は地下の駐車場まで抱き上げて連れて行くと、康太を車の中へ乗せた 飛鳥井の家へ着くと、康太は後は大丈夫だと告げ、家に入って行った 肩を押さえ、3階の寝室まで向かう 鍵を開けようとすると……鍵は空いていた 康太は……あれ?と、想い寝室のドアを開けようとすると、鍵はかかってなかった ドアを開けると、中に榊原がいた 「伊織……どうした?学校は?」 「康太を待ってました……何かありましたか?」 康太は立っているのも辛そうだった 顔は蒼く…脂汗を浮かべていた 榊原は、康太の制服を脱がせ寝かせようとした ブレザーを脱がすと……カッターシャツから、白い包帯が見えていた 「何が有りました?」 榊原は、康太のカッターシャツを脱がせた すると、左の肩に包帯が巻いてあった その時、康太の制服の内ポケットに入ってるスマホが鳴り響いた 榊原はスマホを取り出すと、電話に出た 「もしもし?」 康太の携帯に康太でない声に、瑛太は 「伊織か?」 と、問い掛けた 「はい。そうです 気になってずっと康太を待ってました……そしたら怪我して帰って来ました。 話してもらえますか?」 榊原の言葉に瑛太は、総てを話した 総てを話して、伊織に託した 榊原は、電話を切って唖然とした… 銃創? この平和な世の中で? 康太は痛みで、熱が出て、意識は朦朧としている様だった 榊原は肩には触らず、康太をベットに寝かせた 「伊織…ごめんな…」 康太は謝った 「兵藤の命を救う為に、我が身を差し出す程、好きだったんですか?」 榊原は、嫉妬していた 康太の瞳が傷付いた 「貴史は、この先の飛鳥井に欠かせない存在 此処で死なせたら、先が歪む オレは…死んでも良い位愛してるのは伊織だけだ 伊織が望むなら、オレは飛鳥井の家とは関係なく命を差し出してやる オレの総ては飛鳥井の為……家の為 飛鳥井抜きでオレが動くのは伊織の為だけだ。」 康太は苦しい息を吐いて、言葉を吐き出した 榊原は、それを解っていて……嫉妬した 榊原は、康太が持っていた薬の袋を見ると、鎮痛剤を康太に飲ませた 暫くすると、康太は深い眠りに堕ちた 榊原は、自己嫌悪に陥っていた 康太のスマホが再び鳴る 電話に出ると、一生からだった 榊原は、一生に総てを話した 一生は、直ぐに帰るからと、電話を切った 榊原は、康太が寝ているから、応接間へと降りて行った 榊原が応接間で待っていると、一生達が応接間に飛び込んで来た 「伊織、康太の様子は?」 「今眠っています 僕は康太を傷付けてしまいました……。」 榊原は、先程の事を話した 一生は、唸った 「旦那、戸浪にしても、飛鳥井にしても、企業はお抱え政治家を持っている 兵藤貴史は、康太の見る果てに必要な存在なのだと言うだけで、兵藤を命懸けで愛してる…とかとは、違う。 康太の果ての飛鳥井家に兵藤は、必要で切り離せない だから、死なせる訳にはいかなかった それだけだ。」 と、一生は、榊原に話した 榊原もそれは理解していた 理解していて嫉妬したのだ 聡一郎は、取り敢えず康太に合わせろ!と、榊原を怒鳴った 3階の寝室に行くと……康太は… 何処にもいなかった 狂った様に探す榊原に、一生は、源右衛門の所へ行こう…と、話した 源右衛門の部屋の前に立ち、ノックをすると、中から電話中の源右衛門が出てきた 源右衛門は、何も言わず皆を部屋に招き入れた 康太は源右衛門の部屋で正座して座っていた 榊原が、康太の側へ近寄るが、康太は榊原を見なかった 源右衛門は、ずっと電話をしていた 「悪かったのぉ この埋め合わせは今度のぉ」 源右衛門は難しい顔をして電話をしていた 電話を切ると源右衛門は、 「御家騒動は、一族を揺るがす対立になってるそうだ。」 「オレの目には映らなかった!何故だ! 紫雲に解って、オレには何故見えなかった?」 「それは我には解らぬ 弥勒辺りに聞くと良い それには、その傷を直せ。」 「オレは鈍った?」 「傲るな!康太! お前は神でも仏でもないわ! 総てが見れる瞳なぞ、あり得はせん。 お前の瞳は飛鳥井の為、家の為 幾ら飛鳥井の為になる兵藤だとしてと、それの総てなど見られはせん 紫雲とお前は違う 違うのだ……康太。」 源右衛門の言葉に、康太は崩れた 「兵藤貴史は後の飛鳥井の為になる… 果てを変えられそうになった… それでも傲りと、じぃちゃんは言うのか?」 「そうだ。総て見たいなんてお前の傲り以外の何者でもないわ!」 源右衛門は吐き捨てた 康太は源右衛門に、頭を下げ部屋を後にした 榊原が、康太を支えようとする…… 康太は、その手を振り払って歩き出した 一生は、康太の手を掴んだ 康太の体は……崩れて落ちた 榊原は、倒れる康太を抱き上げ、寝室へ向かった 寝室のベットに、康太を寝かせると 榊原のスマホが鳴り響いた 電話に出ると、兵藤からだった 兵藤は、総て話した 話して康太が『康太は一人で来た理由を【伊織はオレの命。己の命を危険に晒す奴はいねぇだろが!】』と言っていた……伝えた 総ての事情を話して……詫びた 榊原は兵藤と電話を切ると、一生に 「康太は今朝、自分が撃たれるのを知っていたそうです 知っていて僕を置いて来たと、言ったそうです……」 榊原が言うと一生は 「源右衛門の言葉を聞いて想像するなら、紫雲か何かが教えたんだろうな…。 そして康太は、自分が撃たれるなら、榊原が康太を庇って標的にならぬように置いてきたと言う訳か。 康太の肩を撃ち抜いた……と、言う事は、銃口は兵藤の心臓を狙っていた事になる。 兵藤と伊織は身長は同じ位……その場にいれば、お前が撃たれて死んでたかも知れねぇ場合もあった……と、言う訳だ。 康太を許してやれ。」 榊原は、康太は自分を守った事実に、妬いた自分を後悔した 聡一郎は、少し怒っていた それよりも怒っていたのは隼人で…… 「康太の想いは何時も家の為、伊織の為、仲間の為ばかりだ! 飛鳥井の家の為に動くのは真贋だから仕方がないのだ! だが……伊織の事は飛鳥井と関係なく命を投げ出す程に愛しているのに……何故疑う! 康太は伊織を、愛してるのに! 何故疑うんだよ! 康太が可哀想じゃないか!」 隼人は叫んだ そして康太の想いを込めて榊原を殴った 一生が、隼人を押さえて宥めた 榊原は、皆に頭を下げた そして、康太の横に座り、頭を撫でた 一生達は……寝室から出て行った 康太の横に寝そべり、康太を抱き締め撫でていた ごめん康太‥‥ 君が‥‥命を懸けたりするから‥‥ 少し妬けました 榊原は康太の耳元で囁き‥‥‥ 眠りに落ちていた 目が醒めると、康太が榊原の髪を撫でていた 「康太…痛くない?」 榊原がそっと康太を抱く 「オレは本当に伊織を愛しているから、無くしたくなくて、勝手に動いてしまう時がある 許してくれ……」 「僕が共に兵藤の家に行っていたら……僕は死んでしまいましたか?」 「オレは人の生き死には口を挟めない だけど、あの場に伊織がいれば、オレを庇うだろ? そうしたら、兵藤の心臓を狙っていた銃口が伊織の心臓を貫く可能性も無くはなかった そんな危険な要因が有るのなら、オレはそこへは伊織は連れて行けない。」 康太の想いが痛いほど伝わってくる 「だけど、僕は康太が傷付くのも嫌です。 朝、写真を喜んで撮らせて上げなかったから、拗ねて何処かへ行ってしまったのかと思ってました。」 「あの時、龍騎の思念が流れ込んできた 今朝は兵藤の所へ行く予定だった 伊織も行くと言っていた……そしたら… 伊織はオレを庇って死んでしまうかも知れない…そんなん堪えられなかった。 写真を撮る時…… 呆れた顔をしたのは、見逃さなかったけどな 嫌なら…もう撮らない。 だから、そう言う時は言ってくれ お願いだから……無理に許してくれても嬉しくねぇ……」 榊原は、康太に口付けた 「嫌じゃないですよ 前日に一生に冷やかされたんですよ 康太のPCの壁紙は僕だって。 それで、笑っただけで…… 君が僕の総てを欲しがっているのは知っています だから撮って良いんですよ さっきは、妬いて君を傷付けました 許して下さい……」 「伊織に妬かれるのは嫌じゃない。」 「ねっ…何故、兵藤は命を狙われてるか聞いても良いですか?」 康太は頷き、榊原に兵藤の家の跡目争いを話した 「兵藤の家って名家なの?」 「東北の方では名家みてぇだな オレはうちの裏にいる兵藤しか知らんもんけどな…… しかも襲撃受ける所なんて見えなかったし…でも、兵藤がいないと、果ての飛鳥井が歪む…… だからな、必要なんだよ」 「しかし……ヘビィな一族ですね… 跡目争いで、殺し合いだなんて…凄い資産じゃなきゃ、あり得ないかも。」 「兵藤の家の玄関に壺があったじゃん? 覚えてるか?」 「覚えてます 何でも一千万する壺だとか…」 「そう!オレの肩を貫いて、壺を割った 家宝の壺と言っても無造作に玄関に置いてあるんだぜ? 時価一千万円は下らねぇ壺を…… 飛鳥井じゃ考えられねぇ事だ! 総資産はすげぇんじゃねぇか? 後で聡一郎に聞いてみると良い。」 康太がそう言うと、榊原は、たらーんとなった 「さっき、少し妬いたら、聡一郎に怒られました… そして隼人に殴られました」 「大丈夫だ。聡一郎も隼人も根にもたねぇかんな」

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