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第36話 山積

榊原は、康太の肩に負担にならない服を着せた そして、抱き上げてキッチンまで連れて行った 出前を頼んで、康太に食事をさせる 腹が減っていた康太はガツガツ食べた 榊原も一生達も、食卓に座り昼食を取る 一生は、この後、どうするんだよ?と康太に聞いた 「康太は、どうカタを着ける気なんだよ?」 「多分、昼のニュースを見れば、兵藤貴史は朝…襲撃され、危篤状態と流れている 危篤なら、襲撃した奴は仕事の完遂となる そして一族も邪魔な存在を消したと油断が出る そこを捕まえるように、言っといた 後は、本家に乗り込むしかねぇな。」 短時間で……そこまで指示して考えが着いたのか……撃たれたのに? 皆は言葉を無くした 康太は肩を押さえて 「その前に、この傷を治さねぇとな…」と、呟いた 「あっ!そうだ聡一郎、兵藤の一族の事、伊織に教えてやてくれよ。 オレは、うちの後ろの兵藤しか知らんかんな」 康太に言われ、聡一郎は兵藤のデーターを呼び起こす 「兵藤の本家は新潟、莫大な土地に資産 新潟の半分の土地が兵藤の家の関連になっている 一代で材をなし、一代で名声を築いた兵藤丈一郎の資産は数百億は下らない 兵藤本家の家督を継ぐ、即ち、その資産を継ぐ事になる。」 と、聡一郎は、言い、 「ついでに、飛鳥井の資産も凄いですよ 飛鳥井の全体の資産は兵藤に劣らない だけど、跡目争いが起きないのは、その血の掟があるから 飛鳥井の総代は真贋の認める人間のみに譲る そして飛鳥井の真贋は眼を持つ子だけが受け継ぐ事を許されている 真贋を殺せば、飛鳥井は滅ぶ 受け継がれし血の掟に、飛鳥井は規律を見出だしてる。その違いだな。」 と、付け加えた 「飛鳥井は、掟が厳しい。 平安の世から生き残るは、掟が有ったから なければ、飛鳥井なんぞ、とうにお家騒動まっしぐらだ。」 康太がそう言うと、一生がお家騒動か……と呟いた 康太は何か有ったか?と尋ねた そしてら、一生は、有ったと答えた 一生は「ある日突然、牧場を巡って兄と熾烈な争いになったら……どうしょう‥‥」と呟いた 聡一郎は一生に「お前に兄なんていたか?」と、尋ねた 一生は一人っ子だったと聞いたけど…… 「いたぞらしい 俺も最近、知った 腹違いだがな。親父の先妻の子供だ オレと同い年だから笑えるがな」 康太は眉を顰め…… 「緑川慎吾は罪を作ってあの世に渡った…」 呟いた 「お袋は……こんな日が来るのを知ってたみてぇに……何も言わねぇ…」 「兄とやらに……逢った事は有るのか?」 一生は、首をふった 「俺が牧場に帰ってる時に、向こうの弁護士がやって来て 親父の財産相続の遺留分を渡せと行ってきていた…オレはそれで初めて知った。」 康太は一生を抱き締めた 「お前は何も心配するな。 兵藤を片付けたら、お前の方も片付けてやるから待ってろ そうか……。それでか。 お前の悪いようには、ぜったいにしない」 康太は、そう断言した 「見えるのか?」 「総ては兵藤を片付けた後でな。」 「それが、一番の問題なんじゃねぇか…」 一生の言葉に、康太は笑った 「だな。兵藤の本家の今の家督が馬鹿だから、争いを呼んでんだよ。 しかも本家の人間は貴史がお気に入りだとか… 当たり前だよな…。 兵藤丈一郎の気質を受け継いだのは貴史だ あの大人しい無害な親父から、出たもんだ…と思うがな。 オレは本家に乗り込んでやる オレを傷付けて、黙ってたら、飛鳥井の名折れ! 飛鳥井の名を傷付けたも同然なんだ 手痛いしっぺ返ししねぇとな!」 ………やっぱり、仕返しする気、満々なんじゃねぇか……と、一生が呟いた 康太はニヤッと笑った 「この傷は銃創だから、治りは悪いし、他の病院に行ったら騒がれる そして何より、医者が3日は静かに寝てろ…って言われ、セックスも禁止された 伊織が欲求不満になったら、どうすんだよ! 浮気されたら呪い殺してやるかんな!」 康太の言葉に榊原は、たらーんとなった 「で、オレは伊織と別居しょうと思う。」 言うなり榊原に「嫌です!」と、阻まれた 康太は榊原を、困った顔して見た 「目の前にいて、触れねぇんだぞ? 離れてた方が、良くないか?」 「良くない!康太は離れていられるんですか?」 「………伊織が苦しむなら、オレは離れられる。」 榊原は、康太を抱き締めた 「僕は離れたくないないです!絶対に!」 興奮する榊原を、宥めて、一生は康太に問い掛けた 「銃創って治りが遅いのか?」 「って医者は言っていた しかも、セックスとか激しい動きは禁止された 開いたら、他の病院にすら行けねぇ……医者は見れば解るからな…… オレは学校も当分休む 今は傷を治す事にする 反撃はその後からだな もし、それより早く一生の方に動きがあったら……手を打っておくから、心配すんな」 一生は頷いた 頷いて榊原の性欲の心配をした 「なら、伊織は目の前に康太がいても、触れない……と、言う訳か。拷問でないかい?」 「だから言ってる… 離れた方が良くないか…って。」 康太が言うなり、榊原は却下した 「離れるのは絶対に嫌です 況してや康太の看病を人に任すなんて嫌です 拷問だろうが、地獄だろうが…離れるよりは良いです!」 康太は榊原に抱き着いた 一番離れたくないのは康太もなのだ 榊原の側にいて触れて安心したいのは、康太もだった 「オレは……またお前に、辛い想いをさせる……すまない伊織。」 縋る体は小さくても、康太の背負うものは大きい それを、支えると、心に決めたのだ! 絶対に康太の側を離れない 「伊織……伊織」 康太の腕が榊原を抱き締める 榊原は、康太の背中を撫でた 「僕が看病します 僕の康太を他の人には任せられません。」 「エッチ出来ないんだぞ?」 「構いません お預けされた時も僕は我慢したでしょ?」 あの時は顔が怖かった……けどな… 「伊織、ごめん。」 「もう謝らなくて良いです 君の想いは常に僕の事を考えての事ですから さぁ食べて下さい 食べないと傷は治りませんよ。」 康太はガツガツと食事を始めた その康太の茶碗の中に沢庵を入れてやる すると嬉しそうな顔をして康太が笑った 康太は朝、兵藤の迎えの車に乗り病院に行き、消毒と手当てを受けて帰って来てる それに榊原も同行して、康太の看病をした 康太の傷は……中々治らなかった もう……4日。 傷が膿み…化膿した 榊原は、康太を抱くのを我慢して看病したにも関わらず……康太の傷は化膿した 榊原は医者の飛鳥井義恭に詰め寄った 「何故、治らないんです! 気合を入れて治しなさい! 僕の康太を治しなさい!」と、据わった目で睨み義恭に言う 義恭は、これ程治らないのは、おかしい…… と首を傾げ、ある事実に思い付く だが、目の前の子供は中学生と言っても通用する容姿だった そして、目の前の、男前が…… この中学生みたいな男の伴侶なのは、伴侶の腕時計をしている、それを見て解った まさかな……と想い、医者は聞いてみた 「この子は飛鳥井の真贋か?」と、榊原に問い掛けた すると榊原は「そうです!康太は飛鳥井の真贋!替わりはいない存在。」と言い放った 義恭は、それで納得した 「だからだな 飛鳥井の真贋は毒を飲む。 子供のうちに、毒を食らい、細胞を蔓延させる 治療法を変えるしかないかも知れない このままでは、死ぬしかない」 榊原は、言葉をなくした 「2、3日、入院してくれ。面会は謝絶。 お前は伴侶か?一族の認める伴侶か? 伴侶なら側にいるのを許可する」 義恭が榊原に問い掛けた 榊原は目を反らす事なく「そうです!」と答えた 「なら、許可する 康太に着いていろ 飛鳥井の伴侶は強硬だな 流石は稀少の真贋 飛鳥井はまだまだ安泰だわ。」 義恭は、飛鳥井に詳しかった 榊原は美緒を見た 美緒は榊原に 「この方は、飛鳥井の一族の者」と教えた 「飛鳥井と縁があるので、玲香より紹介を受け、以来世話になっているのです この方は天皇の御殿医もなさってた方 腕は確かです 口は康太並みに悪いのがたまに傷ですが…飛鳥井の人間の特性でしょう?」 と、美緒は笑った 「毒を食らった体に治療を施しても、抗生物質さえ効かぬわ。 代替えしたのは聞いたが、こんな中学生みたいな体した子供が真贋だとは気付かなかった だから稀少か。 百年の時より転生した稀少の真贋 この坊主がな 背負うものは誰より重いとはな。」 義恭は呟いた そして電話を取り出し、何処かへ電話をしていた 「源右衛門か? 俺だ、義恭だ お前んとこの坊主を診てる。」 源右衛門は、そこに行くから待てと、告げた 暫くして、源右衛門が現れた 「義恭、康太は我より強い稀少の真贋 飛鳥井の終焉を防ぐ為に百年の時を越え転生した稀少の真贋 粗末に扱うではないぞ そして、そこに居るのは、真贋の伴侶 一族が認めた伴侶になる 伴侶の儀式を、歴代一位で通過した稀少の伴侶だ。」 源右衛門がそう言うと、義恭は、ほほう…と唸った 「伴侶も稀少とは、すげぇな だがな源右衛門、真贋なら言わねば治療は悪化する 命取りになる所だった。」 「……仕方あるまい 飛鳥井の真贋と名乗っても危ないからのぉ 康太は数ヵ月前に呪い殺される所だった そうそう、簡単には名乗れぬわ。」 「そうか……。難しいのは解るがな でもな源右衛門、真贋なら真贋と言わねば治療は悪化する 毒を食らった体に、治療は困難 普通は3日もすれば、傷口は綺麗になるが、康太は化膿した 入院させて、治療を変える」 それはお前に任せる…と、源右衛門は言った 「伴侶以外は面会謝絶にする 伴侶は付き添えば良い どうせ帰れと言っても居座りそうだ、この伴侶は。」 源右衛門は、榊原を見て笑った 「この伴侶は一筋縄では行かん 康太の為なら、その命、惜しみもなく差し出す、伴侶だからのぉ。」 「早く治さねば、伴侶殿の欲求不満は爆発する 3日、時間をくれ そしたら治す。」 源右衛門は榊原を見て、それで良いか?と問い掛けた 「はい。治して下されば 文句は言いません。 僕の康太に、これ以上の苦痛は与えたくない。」 榊原は、義恭を睨み付け言葉を放った 義恭は豪快に笑った 康太は何かを察知して、榊原の手を引いた 「伊織、こっちに来い……また来やがる。」 診察室に、風が巻き上がる すると、目の前に紫雲龍騎が姿を現した 『何故、康太の傷は何故治らぬ!』 と、紫雲が姿を現した 義恭は、突然現れた男に驚愕する 源右衛門が義恭に「紫雲龍騎じゃ」と教えた 義恭は、菩提寺を守る陰陽師、紫雲龍騎が何故、姿を現したのか…解らなかった 「だから!式神飛ばして来んじゃねぇよ!龍騎!」と叫んだ 『康太の覇道は傷付いたまま その体に銃創は治ってはおらぬ 何故じゃ?』 義恭は、紫雲に 「治療法方を変える。そしたら治る……」 と告げた 紫雲は義恭を睨んだ 『康太を死なせれば伴侶は死ぬ そしたら私はお前を呪ってやるぞ』 「呪うなら呪え! 治療の邪魔だ! さっさと消えろ!」 義恭はしっしっと追っ払った 『我は野良犬ではないわ!』 紫雲が怒ったがお構い無しだった 『まぁ良い、もうじき弥勒がそこに辿り着く そしたら後で状況を聞くから…』 紫雲は、ではの…と、消えた 康太は榊原と顔を見合わせた 康太は「弥勒が……」 榊原が「来るんですか…」 と、口々に言葉にした 呟いたと同時に、着実な足取りで弥勒がやって来た 診察室に勝手に入り、弥勒が康太に逢いに来た 「自ら銃口に当たりに行った、無謀者を探してるんだが?」 と、勝手に診察室まで来て康太の側までやって来た 「弥勒…。お前まで何故出て来る?」 「お前がわざわざ撃たれに行かねば 俺も龍騎も、仕事を投げ出す事もねぇんだがな」 弥勒は康太に向けて辛辣な言葉を投げ掛けた 源右衛門が、義恭に「弥勒高徳だ。厳正の息子だ。」と教えた 義恭は「厳正の…」と、納得した 義恭は、弥勒に「邪魔だ!出て行け!」と告げた 弥勒は、義恭に何かの容器を差し出した 「これは?」 「弥勒家伝来の傷薬。銃創でも治る。」 「弥勒、普通の傷ならば、まだ治る 貫通銃創は難しい… 況してや康太は子供の頃から毒を食らって育った体。康太には効かぬ」 「ならば、康太を早く直せ!」 「ったく!飛鳥井の真贋の回りにおるのは、こんなのしか、おらんのか……」 弥勒は康太を抱き締めた 「康太、変わってやれるなら変わってやりたい…。」 厳つい男が……しくしく泣いた 「弥勒…オレは大丈夫だ やらねばならねぇ事が山積してる 早く直して兵藤へ乗り込まねばな」 康太は弥勒の背中を撫でてやった 「とにかく、これから入院する 面会は謝絶だ。必ず治してやる だから、帰れ!」 義恭は弥勒を排除して、康太を病室に運んだ 源右衛門は、康太は入院したと伝えに飛鳥井の家へ帰って行った

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