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第46話 離別

お前は……水平線の向こうに 何を見ているんだ…… 帰って来い…… オレの居場所まで 帰って来い 平穏な日々が続いていた10月下旬 聡一郎は、飛鳥井の家から忽然と消えた なんの予兆もなく………突然姿を消した…… 一生は、聡一郎の部屋を探した……心当たりは総て探した 聡一郎が住んでいた形跡や、荷物はそのままなのに…… ……聡一郎……だけが、いなくなった そして……悠太も……飛鳥井の家から消えた 飛鳥井の家族は大慌てしたのに…… 康太は知っていたのか……冷静だった 飛鳥井の家族は動けなかった 聡一郎は、康太の友達 悠太の所有権は、康太にあり 康太が動かない限り……誰も動けなかった 康太は………聡一郎の後を追わなかった 皆が説得しても……康太は動かなかった…… そして、口数が……極端に減り…笑わなくなった 康太は机に肘を着き……考え事する事が多くなった クラスの人間や……兵藤も清家も……東矢も C組に顔を出すのだが、緑川兄弟のガードに誰も近付けなかった 慎一は……顔付きが変わった 一生と、双子と言っても過言でない位に…酷似した容姿になっていた 康太の左右を、緑川兄弟がガードする いない聡一郎の変わりに慎一は一生懸命に守った 主を康太に定めた慎一は忠犬だった そして、慎一は、隼人の子守りもする 甘える隼人を激甘に甘やかし……一生は拗ねる位に、隼人は慎一に懐いていた 慎一は…そのうち……康太が倒れてしまうんじゃないか……って心配していた 今の慎一なら……康太の為に盾になれる… そんな覚悟さえ秘めていた ……聡一郎の存在は……康太にとって唯一無二だろうに……何故動かないのか…… 榊原も一生も隼人も……慎一も、飛鳥井の家族も……康太に関わる人間総てが… 康太を想い……見守っていた 山積みの問題も一段落しすると、康太は時間を作った 一つずつ問題を解決して、据え置きになっていた、紫雲夫妻に、やっと榊原との交わりを見せた 紫雲は、康太と弥勒の事を知っていた…… それで、榊原に配慮して、紫雲はもう良い… …と、断ったのだが 律儀な榊原は、それでは、康太の果てが狂う!と、聞かなかった そして紫雲に、弥勒の事は許したので、気遣い無用……と、揺るぎない絆を紫雲夫妻に見せ付けた 弥勒とはあれから、仕事もした 榊原は、普通に弥勒に接していた 榊原は、心より許したのだと……弥勒は感謝した そして榊原に、学園生活を塗り替えてもらい、康太は幸せの絶頂にいた そんな時の………出来事だった 康太は二人が消えても………探そうとはしなかった…… 家族が‥‥友が‥‥何故なんだろうと想いつつも、口には出せずにいた 朝…登校しようと駐車場へ行くと、突然……視界切り替わる様に‥‥‥ 目の前にが海が広がっていた そして……目の前には……… 聡一郎が……海を見ていた 砂浜に座って……膝を抱え……海を見ていた 海を見ながら……涙が頬を伝って流れた 悠太は……そんな聡一郎を見詰め… 堪えきれなくなって近付き……聡一郎を立ち上がらせた 「聡一郎…帰ろう…飛鳥井の家へ帰ろう… 康兄の側に………帰ろう…頼むから、泣かないで…」 悠太は……無力感に涙を流した 悠太が「帰ろ…」と言っても、聡一郎は首をふった 悠太は……何も言わず、聡一郎を抱き締めた 康太はまるで、その場にいるかの様に……その光景を見ていた 「僕は…康太に切られる…そしたら…生きている希望を無くす」 聡一郎は、そう言い……首を振った その時‥‥前を見て固まった 目の前に……康太が立っていたから…… 康太は……聡一郎…と名前を呼んだ…… 『聡一郎…そんなに苦しむな……聡一郎…』 康太は…涙を流していた… 『聡一郎……』 康太は聡一郎に手を延ばした 聡一郎は、必死で康太の方へ駆け寄り…… 康太は…………消えた……… 康太は空を見上げると「弥勒?」と、名を呼んだ 弥勒の覇道で……ビジョンを見せられていた…… 嫌……飛ばされていた 榊原が康太を抱く 「何が有りました?」 「弥勒が……オレを聡一郎の所へ飛ばした…」 榊原は、康太の涙を拭って、家へと連れ戻した 榊原は、康太を応接間のソファーに座らせた 一生や隼人、慎一も、応接間へと戻って来た こんな康太を放っておけないから…… 「康太……何があったんですか?」 「弥勒がオレを……聡一郎のいる場所に…飛ばした ………弥勒の覇道だった‥」 康太が言うと、榊原は、 「弥勒は、康太を聡一郎のいる場所へと、飛ばしたと言うの? 弥勒にそんな事出来るの?」と問い掛けた 「弥勒ほどの術者なら出来る…… だが、オレの体ごと飛ばすのは、凄く力を消耗する…… 下手したら、飛ばした人間は負荷に死ぬこともある……。」 榊原は、絶句した 康太の悲しむ覇道を拾って……… 弥勒は命をかけて、康太を聡一郎の場所へ飛ばしたのだ 総ては、康太の為に。 愛する康太が……苦しまないで……過ごせる為に…… 「君が迷っているからですよ…… 聡一郎を迎えに行きましょう! 君が悲しんだままだと、弥勒はまた無茶します。 次は弥勒が死なないとも限らない そんな無茶を弥勒にさせないで下さい… 君を愛してるから……弥勒は命をかけて…… 飛ばしたんでしょう? 弥勒の心を何故解ってあげないんですか?」 康太は榊原の顔を見上げた 「聡一郎は、オレの姿を見たら…… 死んでしまうかも知れない…… 行くなら…オレはダメだ……」 「康太……話して……皆に話して…頼むから…康太!」 榊原は、康太の胸に頭をつけて懇願した 康太は泣いていた 泣いて……全部を話す……それしかないと、思った 「聡一郎は、オレに切られると思ってんだよ。 オレは違えれば……親でも切らねばならぬ真贋 それが……オレの定め。 それを一番理解して、側にいるのは一生と、聡一郎だ 聡一郎は……違えた……と想っている オレに逢えば……命を断つかも知れねぇ だから、動けなかった…… オレは聡一郎を、無くしたくねぇんだ! 聡一郎は…悠太を愛してんだよ…… そして悠太も……聡一郎を愛した 二人は一緒にいるようになって…… 互いを意識する様になった…… だけど、聡一郎は、拒み続けた オレから預けられている悠太に…… 何かあれば……切られる そう思って聡一郎は、苦しんでいた だけど……悠太に押しきられて、関係を持った オレは知っていた 知っていて……何も言わなかった 聡一郎は……ビクビクしてたのに…… 何も言わなかった…… 何故なら、オレは瑛兄の事で……命をかけていた時だったから…… 聡一郎は、オレに切られる日を怯えていた なのに……オレは聡一郎に何も言わなかった…… 何が言える? 言えば……聡一郎は逃げるのに… 聡一郎がいなくなったのは……オレの所為だ だからな……動けなかった 聡一郎は、オレが視ているのを知っていた」 康太は目を瞑り……涙を溢した 瑛太が入院して… 康太の変わりに瑛太を見なければならなくて、着替えを取りに行った日に…… 聡一郎は、悠太に待ち伏せされた 返事を何時までもくれない聡一郎に焦れて 悠太は、聡一郎を抱き締めた 抱き締めたら止まらなくて……聡一郎をフローリングに押し倒した 聡一郎は、唖然としているうちに…… 悠太に全裸にされ愛撫を受けていた 最近……誰にも抱かれていない体に火が着き 聡一郎も止まらなかった 聡一郎は、悠太のデカいぺニスを受け入れる時に…… 切れて痛い……と、泣いたら 「伊織君は、もっとデカいよ…」と、言われた 「僕は…伊織のなんて興味もないです…… しかも何でそんなん知ってるんですか!」 「見たから……康兄と伊織君の何度も見た。 一階に部屋があった時…… 食事で呼ぶと、鍵がかかってなくて…… 見た…… 康兄が、デカい伊織君の舐めてる所から、挿入してる所も……見た。」 聡一郎は、わざと見せたのだ!と、性格の悪い榊原の本心を知っていた 悠太は康太を愛してるのを知っていて……所有権の主張をしたのだ やってる事は進藤と何ら変わらないじゃないですか! 聡一郎は、心の中で毒づく 悠太のぺニスが、聡一郎の中で激しく動く 聡一郎は、流されて……その体を悠太に与えた 何度も何度も……悠太に与えた そして……死ぬ程後悔をするのだ 康太は……違えれば切る 自分は違えた……それを悩み苦しみ 聡一郎は……逃げた そして後悔している…… 榊原は、康太の肩を掴んだ 「行きましょう! 聡一郎を迎えに行きましょう。」 康太は……動けないでいた 一生は、康太に頭を下げた 「一緒に行ってくれ……。」 康太の涙で揺れた瞳が一生を見る 「追い詰めたのはオレだ。」 「それでも、お前が行かなきゃ、アイツは帰らない!」 「一生……」 肩に置かれた……榊原の手を握った 康太は立ち上がると、聡一郎の覇道を拾おうとした で、ふと、弥勒が見せてくれた海に覚えがあった 「一生……九十九里浜だ……」 隼人が四悪童に加わって、初めて行った海が九十九里浜だった 四人で砂だらけになって遊んだ…… あの夏の日を忘れていなかったのか? 「九十九里浜?」 一生が、言い想い返す 「あそこか……行こう 迎えに……なっ、康太。」 康太は頷いた 「伊織、聡一郎を迎えに行く!」 康太は榊原に腕を伸ばし、抱き着いた 「帰りは聡一郎と、悠太が増えると…… アウディは無理ですね。」 榊原は、康太を抱き上げ思案する 一生が「俺が、車を出す! 伊織の車と2台なら何とかなるだろ? 皆で行くしかないっしょ!」 「なら、行きますよ 僕は…悠太は一発殴ります 男として未熟過ぎる! 義兄として、殴ります。」 榊原は、宣言した。 一生は、仕方ねぇな……と、呟いた 駐車場に行くと、力哉が待っていた 「僕は待ちくたびれました さぁ行きますよ!」 「力哉、伊織の車も出す 帰りは、あの二人は伊織が乗せて行く」 康太が言うと、力哉は車に乗り込んだ 榊原は、助手席に康太を座らせると、運転席に乗り込んだ 康太の脳裏に『 迎えに行くのか…』と、言う弥勒の声が聞こえた 康太は「うん、行く。ありがとう弥勒 お前の命も危なかったのに……飛ばしてくれてありがとう。」 『 お前が笑って、幸せでいてくれるなら…… 俺は堪えられる そうでないのなら……助けてやりたくなる お前が大切だからな。』 康太は笑った 榊原は、「弥勒?」と、尋ねた 「そう。行くのか……って。」 榊原は、眩しくてサングラスをボードから出してはめた 康太は榊原を見詰めた そして……空を見上げた 聡一郎……この空を見て、お前は何を思う? お前が苦しんでいるのを……知っていた 知っていたが…言えなかった お前のプライベートな部分まで……口は挟む気はなかった 罪悪感で押し潰されそうな……聡一郎に手を伸べず……苦しめた 聡一郎……帰って来い! オレの元へ、帰って来い…… お前の行けれる場所は…… もうこの世でオレの側しかないだろ? 九十九里浜の海岸の前の駐車場に車を停めた 秋に入った海は……人が……いなかった 康太は車から降りると、砂浜を歩いた 弥勒が見せてくれた場所まで行くと…… 同じ場所に、聡一郎が座っていた 康太は、静かに歩を詰め…… 聡一郎に近付いて行った 康太が来るのに気付いた悠太に、唇に人差し指で、しーっと、黙らせ近寄る 聡一郎の真横に立つと……何も言わず ……気付くのを待った 榊原は、悠太を掴まえると腕を捻り上げた 聡一郎は、悠太なら何故声もかけて来ない? と、見上げ…………!!!! やっと気が付いた 「康太……!」 聡一郎は、手を伸ばし……康太の足に触れた そして、今度は消えないのを確かめると ……顔色を無くした 「聡一郎、お前の居場所はオレの横しかねぇのに 季節外れの海ばっか見てんじゃねぇよ」 康太しか言わない台詞だった 「康太……」 聡一郎は、やっとの事で……言葉を発した 「聡一郎、帰るぞ! 帰らねぇなら、腕づくで連れ帰る どうするよ?」 康太が聡一郎に尋ねる 聡一郎は、立ち上がると康太に縋り着いた そして、嗚咽を漏らして泣いた 「バカだな…聡一郎は……。 悠太ならお前にくれやるのに。」 聡一郎は首をふった 「康太が悠太の事を誰よりも大切にしてるを僕は…知っていた……なのに……」 「好きなのは仕方ねぇ 止められねぇ気持ちまで、口出しする気はなかった。」 康太は聡一郎の背中を撫でてやった 「伊織、やって良いぞ 悠太、兄からの愛情だ受け取れ これから伊織の事は義兄さんと呼べ。」 悠太を締め上げていた榊原は、悠太を離すと………殴った 悠太の体が……飛んで、砂浜に倒れた 榊原は、悠太に 「男なら命を張れ! 愛する男の為なら、康太を説得するのが筋でしょう! なのに、何故逃げた! 未熟過ぎる! 僕が鍛え直します 家に帰りますよ。」 言い張った そして倒れている悠太に手を差し出すと、引き起こしてやった 「康太の側以外で、悠太の場所なんてないのに……バカな子だ……」 悠太は榊原に抱き着き……泣いた 「伊織く……義兄さん! 俺は聡一郎の側にいるしか出来なかった……ごめん……ごめん…」 泣きながら……悠太は謝った 一生は、聡一郎の側に歩いて来ると 聡一郎を殴り飛ばした 「悠太だけ殴られたら分が悪すぎだ お前が歳上なら、導かねばいけない存在 なにの康太から逃げて海を眺めて泣いてちゃぁ話にならねぇんだよ! 帰るぞ聡一郎! お前の居場所は康太の側じゃねぇのかよ! 康太はお前の居場所を作る為に、お前の親父に殺されかけたんじゃねぇのかよ! もう康太を悲しませるな! お前が消えて…康太は笑わなくなった 伊織がどれだけ苦しんだか解るか! お前等二人、康太と伊織に謝れ!」 一生は、物凄い剣幕で怒った 怒って……聡一郎を抱き締めてやった 康太は、聡一郎に手を差し出した 聡一郎は、その手を取った 聡一郎の手を取ると、康太は歩き出した 悠太には目もくれず……に。 榊原は、悠太を掴むと歩き出した 悠太が「伊織君…」と、言うと、榊原は睨んだ そして「義兄さん」と、呼ばせた 一生は康太に「ワンクッション置いて話し合うか?」と、聞いた 康太はそうだな…と、呟いて力哉にホテルに部屋を取ってくれ…と頼んだ 「このまま、家に連れて帰っても、また逃げる…」 康太も、一生も、考える事は1つ…… 繰り返さない為の話し合いをすべきだと… 思った そして……康太は……飛鳥井家の真贋として…… 定めを違えぬ為に……決めなければいけない ……瞬間を迎えねばならなかった… 九十九里浜から引き上げ、首都高に乗り、横浜へと還って来ると高速道路を下りた ホテル・ニューグランドへ向けて車を走らせ入って行った ホテルの正面玄関口に車を停めると鍵をベルボーイに預けて車から下りた 聡一郎と悠太は榊原の運転する車の中で一言も言葉を発しなかった 車から下りると康太はスタスタとホテルの中へ入っていった 力哉が走ってフロントへ向かう キーを貰って来ると、案内は断ったと告げた 力哉が部屋まで皆を案内し、鍵を開ける ドアを開けると、康太は部屋の中へ入っていった そしてソファーに座ると、聡一郎を見た 「聡一郎、帰る気はなかったのか?」 康太が尋ねる 「帰りたかった…… 康太の側に帰りたかった……」 聡一郎は、吐き出す様に言うと、康太のソファーの前に座り、膝に顔を埋め泣いた 「もう、泣くな 今後の事を話し合おう。 でないと、また家出しちまうかも知れねぇからな…」 康太が言うと、聡一郎は、 「悠太とは別れる……」と、言った 康太は聡一郎を、殴った 「別れるなら、何故一緒に家出した! 好きなんだろ?愛してるんだろ? お前が悠太が好きなのは昔からだよな? オレは知っていた……お前の果てを見たからな、オレには解っていた もう隠さなくて良い…お前の手にして良いんだ。 やるから。お前に悠太をやる だから、もう苦しむな。」 「康太……」 聡一郎は、泣いた……康太の気持ちが痛すぎて 一生が、聡一郎を持ち上げソファーに座らせた 榊原は、悠太を睨み付けていた 「悠太、義兄に話しなさい 何故、家出をしたのかを 家族は心配すると思わなかったのてすか?」 悠太は榊原の瞳を見詰め返した 「心配すると思っていた… だけど、俺には泣きながら家を出る聡一郎を……止められなかった なら着いて行くしかなかった 伊織く……義兄さんなら、難なく出来る事でも…… 俺にはそれしか、出来なかった…」 榊原は、悠太を抱き締めた 「男なら愛する人を手離してはなりません! 絶対にだです! 愛する人が泣いていたら抱き締めてあげなさい! 見ているだけでは、ダメなんですよ。 違えるのであれば……軌道修正しなければならない……解りますね?」 榊原が聞くと、悠太は頷いた 「悠太……君には…僕の苦しみは解りませんか? 僕の康太は…死ぬと解っていても…その道を行く そして傷付き……倒れても……康太は立ち止まらない そんな心配ばかりかける恋人を、手にした哀れな伴侶は……折れるしかないんですよ? 僕の康太は銃弾にも当たりに行く… それが定めだから……僕は止める事が出来ません。 康太から……目が離せません。 心配も着きません その分、聡一郎は大人しいし、その分君は楽でしょ? 僕だって難なく出来る事なんてありませんよ? 何たって僕の妻は飛鳥井康太…止まりません……」 悠太に榊原の苦悩を教える…… そして榊原は、笑いながら悠太を離し 康太を膝の上に乗せた 康太は聡一郎と、悠太に 「悠太、どうする? お前はどうしたい? 聡一郎、お前はどうする? どうなりたいんだ? お前達の……決めた道を行かせてやるから、オレに決意を聞かせろ」 と尋ねた 悠太は 「俺は康兄以上に愛せる人間はいない でも、聡一郎は、そんな俺を解ってくれて愛してくれている 俺は聡一郎を愛してる 多分、俺の恋はこれで終わる 聡一郎が最後の恋人になる 俺は聡一郎と、生きていきたい そして……康兄……貴方の側にいたい 貴方の側にいさせて……聡一郎もそれを願っている」 と、康太にキッパリと言った 聡一郎は 「僕は悠太が愛しい 昔も今も…変わらず悠太が愛しい その悠太に求められたら…幸せすぎて泣いた…… それと同時に………康太を裏切った……罪悪感で一杯になった…。 悠太を愛している 側にいたい でも、僕の一番は飛鳥井康太、君です 君のいない場所では、生きられません。 今回……離れて…… 康太がいない…… 一生がいない…… 隼人がいない生活が… こんなに辛いなんて思わなかった 悠太と康太……選べないけど…… 選べと言うなら、僕は…康太といる場所を選ぶ それは、悠太も同じ 悠太の一番は康太 伊織が警戒して、悠太に康太とのエッチを見せる程に、悠太は康太を愛してる この先も、これからも 僕は…そんな、悠太を愛してるので、互いの一番は康太 その次に互いを愛して行こうと思います 康太……お願いだから……君のいる場所にいさせて……」 聡一郎は、康太に語りかけた 康太は溜め息をついた 「そんな弥勒や紫雲から言われた台詞を…… 悠太と聡一郎から、聞こうとはな…… オレの回りにはそんな奴ばかりか…」 康太がごちると、一生は、榊原の上の康太に抱き着き 「仕方ねぇよ、俺達は飛鳥井康太と生きている 俺は死ぬまで、お前の一部でありたい 旦那はそんな俺達を認めてくれていると、俺は思う だから、俺達は一緒にいられるんだよ そして願う心は何時も1つ 飛鳥井康太と、共に生き、共に過ごしたい想いだけ」 ………と、胸のうちを吐露した 榊原は、一生の頬にキスを送り、 「君達は康太の一部でしょ? 切り離せない絆を、僕は丸々認めて康太を愛しました。 だから、一生も、聡一郎も、隼人も、そして慎一も力哉も…… 康太には大切な人です そして……弥勒も紫雲も、康太には切り離せない ならば、それら総てを愛すと……心に決めたのです 飛鳥井康太はそれで成り立っていると……。 聡一郎、悠太…康太の側にいたいなら、もう……逃げないで下さい 逃げたら康太は切らねばならない…それは…させないで、下さい。」 と、言葉を紡いだ 康太は聡一郎と、悠太を見詰めて言葉を送った 「オレは弟が幸せで、これ以上違えねぇなら……それで良い オレの敷いた絵図に乗れ そうしたら、飛鳥井の家にいて良い そうでないなら、切る オレは飛鳥井の真贋だ! 違えは出来ない掟に生きている それは解ってくれ悠太…… 誰も親も兄弟も好きで切りたくはない だが、オレが飛鳥井の家にいる存在理由はそれしかねぇ 一族の為の真贋が違えてたら…存在すら許されなくなる そうしたら、オレは飛鳥井の家へはいられねぇ 飛鳥井の家を出るしかねぇ……それが定めだ」 康太の生きて行く先は厳しい 命を懸けて……飛鳥井家の為に生きていく 悠太は康太に頭を下げた 「康兄……俺はまだ未熟だが、何時か康兄の助けが出来る男になるから…… 待ってて下さい。」 康太は悠太に手招きした 目の前に来た悠太を……康太は抱き締めた 「幸せになれ……悠太……」 康兄……貴方が蕀の道を行くのなら…… 俺はそれを助ける礎になる 貴方が……苦しみ……血を吐きながらも…… 守る……それを、俺も守ってみせます 聡一郎と共に……貴方の側で貴方を守る それが……許された人間の……返す愛です 康兄………貴方が……… 幸せなら……

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