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第49話 真贋②
11月1日
飛鳥井建設は、飛鳥井建設所有の建物に集結した
仕事の一貫として召集された社員は
建物外に入る時に、IDを通さねばならなかった
出欠はIDを読み取りPCの方へ送られるシステムになっていた
また、途中で退出する時にも、IDゲートを通らね入れない解る仕組みになっていた
途中で退出しても、欠席とみなす!
欠席した者は、後日、解雇通告が送られる
弁護士に訴えようとも
会社の社訓に何十年も前から書いてあり
同意書に書いてありサインした以上は、裁判にしても、欠席した者の方が不利なのは明白だった
殆どの社員が出席した
欠席した社員には、上司が自ら電話を入れる
それさえ無視した場合、即座に解雇通告が出される事になると、事前に通達もした
参加せぬ者を飛鳥井建設で働かせる気は皆無だった
そこまで強引な遣り方をしてでも
飛鳥井建設は、真贋の披露を決断した
社長の話よりも早く
真贋の言葉が、社員に向けて発せられた
飛鳥井建設、社長も副社長も
役職の就いた社員達は、檀上に上がっていた
飛鳥井家の真贋が上がると、深々と頭を下げた
社長は、自ら立ち上がり、飛鳥井家の真贋に頭を下げた
康太は飛鳥井家の真贋の衣装を着ていた
顔は子供の様だが、その場に現れれた真贋は…
毅然として、厳格な雰囲気を醸し出していた
康太は檀上に上がり
マイクを取ると、ふん…と、不敵に笑い、会場を見回した
そして、揺ったりとした動作でマイクを持つと話し出した
「飛鳥井家の真贋、飛鳥井康太だ!
今日は社を上げて真贋のお披露目となった
会社の強制行事であるにも関わらず欠席をした者や今現在この場に首席していない者は、飛鳥井建設には不要な存在だ!
よって解雇は免れない
良かったな…出席していて
でも、やる気の無き者は、立ち去れ!
此れより飛鳥井家真贋は会社の顔となり、会社の改革に乗り出す
会社と共に、心中する気構えの無き者は、飛鳥井建設には不要だ!さっさと立ち去るべきだろうな
この不景気な時代に生き残るは、社員の気心、意識、意欲が必要になって来る
それが、無い者はこの先、飛鳥井家の真贋に切られるが見えている
自分から辞めて貰っても一向に構わない!
飛鳥井家真贋は、飛鳥井家一族筆頭を上げて、絶対の存在だ
否定する者は、許しはしない!
遥か朝廷の時代より、飛鳥井を支えて来た
真贋は蔑ろにされて良い存在ではない!
源右衛門から引き継いだ、飛鳥井康太が現真贋である以上、真贋の言う事は絶対!
逆らえば切る!
飛鳥井建設と飛鳥井一族は、真贋から切り離せない存在
オレの行く道を邪魔する者は切る
共に行く者は、共に有ろう
共に闘い、共に笑おう!
飛鳥井建設の果てをオレは詠む
オレが飛鳥井建設にいる限りは、お前達を路頭に迷わせたりはしない
約束しよう
その変わり、お前達は飛鳥井建設の為に生きてくれ
飛鳥井は、終わらない
真贋がいる限り、終焉はない
受け継がれし真贋を決して忘れるな!以上だ」
康太は深々と頭を下げた
会場の社員に、飛鳥井家の真贋を知らしめた瞬間だった
檀上の康太は……真贋に相応しい面構えになっていた
恵太は……その姿を見て泣いた
瑛太に甘え、笑っていた顔と違うから……
真贋として生きる道しか用意されていなかった…………弟だった
檀上には、社長の清隆が話をしていた
そして、瑛太が…マイクを受け取った
「飛鳥井家の真贋は、受け継がれし血によって、脈々と受け継がれし絶対の存在
彼を愚弄する事は絶対に許さない
彼は驚異の存在ではない
怪異でも、化け物でもない
その様な扱いを見れば私は黙ってはいない
我が弟の進む道は険しい
彼はまだ、高校生だ……なのに彼は飛鳥井の家の為に……命を懸けて動いている
私の弟は、私の誇りです
そして飛鳥井家の真贋は、一族筆等を上げて、会社を上げての誇りとなる!
皆さんの心の中に、そんな彼の姿を刻み付けなさい
決して真贋の存在を忘れるな!
以上……私の話は終わります。」
瑛太も深々と頭を下げた
始終、飛鳥井家の真贋は、檀上の中央に座っていた
飛鳥井玲香が、真贋に頭を下げ、マイクを持つ
「来年度の入社式から、飛鳥井は真贋を、お迎えして入社式を行います
余りにも社員の意識が低すぎて
飛鳥井家の真贋は社訓の中で廃れて行ってしまった
真贋の存在は、飛鳥井の総て
それを違える時、飛鳥井は終焉を迎える
今後、彼に失礼な態度を取る事は一切許しはしない
誠意を持って接しなさい
出来なき者は、真贋の言う通り、去るが良い
百年の時を越えて転生した、稀少の真贋は、明日の飛鳥井の為に有る。以上!」
玲香は、真贋に深々と頭を下げ壇上を後にした
社員の心に飛鳥井家の真贋の存在が刻まれた
社訓でしか知らなかった真贋
彼の存在が、明日の飛鳥井を担う存在ならば、誰も軽んじたりはしない。
子供の様な容姿なのに……存在感は誰よりもある、稀少の真贋
社員は真贋の姿を初めて見た者が殆どだった
強烈に、飛鳥井家の真贋を焼き付けた、瞬間だった
飛鳥井建設の集会は、一時間少しを切って終了した
社員が帰る出口に、飛鳥井家の真贋は立ち
社員一人一人と、握手をした
間近に見た社員は、その態度は大人並みで
その顔は子供みたいな真贋を受け入れる様に、硬く握手して行く社員ばかりだった
康太は、そんな社員に子供の様な笑顔を向け
見送った
集会が終わって、料亭で食事を取る事にした
康太は真贋の衣装を、さっさと脱がされ
ラフな服を着せてもらい、榊原の横で食事を取っていた
その場に栗田と恵太が現れ、清隆と玲香は戸惑った
瑛太は、知らん顔して、康太は横に座れと招き入れた
「父ちゃん、母ちゃん、親子の縁までは切れとは真贋は言ってねぇ
たまには恵太と逢ってやれ
恵太も、たまには、栗田と共に飛鳥井に来い
そこに仕事を挟むと、お前達は追い出される事だけは覚えとけ!
飛鳥井の真贋に意見は無用
オレの言葉は絶対だ!
オレに意見を言えるのは我が伴侶と瑛兄だけだ。
それ以外でオレは止まらねぇ。」
康太が言うと榊原は、溜め息を着いた
「僕が言っても君は止まらないでしょ?
義兄さんが言っても止まりませんよね?」
「そう言う時もある……」
「そう言う時ばかりでしょ?」
「……意地悪…」
康太は拗ねた
恵太は、ぎこちなく康太の横に座った
恵太の横に栗田が座った
栗田は康太に深い頭を下げた
「立派な真贋姿でした
貴方の意図がやっと解りました
遼一の現場に、城田が作業員として働いてました
貴方はアレを回収する気なのですね。」
「城田は、創るのが好きな性格
だけど、自分の才能に溺れ天狗になっていた
へし折らなければ、才能は廃れる
使えるかは、これからのアイツにかかっている
だけど、土下座をした城田を捨ては出来なかった
栗田、城田は戻れば才能を発揮する
うかうかしてたら、木瀬と城田のどちらかに、その場を奪われるぞ。」
康太はそう言い笑った
恵太は、康太に頭を下げた
そして、謝ろうとする言葉を遮った
「恵太、幸せにしてもらえ
そして栗田を幸せにしてやれ。」
「康太…」恵太は呟き泣いた
康太は何も言わず食事をした
恵太と栗田が帰って逝くと康太は、瑛太や清隆を射抜いて
「此れより飛鳥井の改革は始まる
此れより先は修羅の道‥‥穏やかには通らしてはくれねぇ‥‥
何度も何度も膿を出し粛清してこそ、飛鳥井は明日へと繋がれる!
覚悟して来ねぇと振り落とされるかんな!」
だから覚悟をしろと、その眼が訴えていた
明日の飛鳥井の礎になろう‥‥
どれだけ苦しくても
険しくても
歩は止めず
先へ逝こう
それこそが‥‥真贋(お前)がいる意味なのだから‥‥
家族は心に決めた
共に在ろうと決めた
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