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初めてのひとさじ

啓介と僕の共通の友人が結婚した。 今日はその友人、律ちゃんの結婚式だ。 律ちゃんは純白のウエディングドレスがよく似合う。 旦那さんも優しそうな人で、僕らはホッとしていた。 お父さんとのヴァージョンロードを歩く際にも誓いのキスの時も、僕の隣で啓介は大泣きだ。 「お前、あんまり泣くなよ。律ちゃんの親戚が変な目で見てるぜ」 啓介の腕を引っ張りそう言うと、ハンカチで目を覆いながらコクコクと頷いた。 僕らの仲を取り持ってくれたのは律ちゃんだった。 ウジウジしていた僕らに『あんた達見てて面倒!』と何かと相談に乗ってくれたのだ。 おかげで僕らは今幸せに一緒に暮らしてる。 「ではここで、新婦から新郎にファーストバイトをしていただきますー!撮影される方は前にどうぞ!」 ファーストバイトとは【新婦から美味しいご飯を作って食べさせてあげる、新郎からお金を稼いでご飯を食べさせてあげる】の意味でウェディングケーキをスプーンですくってお互いに食べさせるのだ。 カメラを持った招待客の前で嬉しそうに食べさせあいっこをしている二人。 「啓介っ」 気がついたら、啓介はまた泣いていた。 「はー、いい式だったね!」 家に戻り、ネクタイを緩めながら啓介は背伸びした。 あんだけ美味しいものを食べたのに小腹が空いたというので僕はチャーハンを作ってやる。 「幸せそうで良かったよ、よく彼と喧嘩してたからハラハラしてた」 出来上がったチャーハンを啓介に出してやると嬉しそうにテーブルの前に来る。 「結婚式、何度見ても泣けるよね」 啓介の顔に一緒、憂いが浮かぶ。 どうしたって僕らは結婚式が難しい。 それもあって啓介はあんなに泣いてたのだろうか。 「司のチャーハンだー!いただきまー…」 「まて、啓介」 啓介がチャーハンを食べようとした瞬間、それを制した。 「…?」 オレは啓介が持とうとしてたスプーンを奪い取り、チャーハンをひとすくいすると、啓介に向けた。 「…遅いかもだけど。ファーストバイト」 今日見た、結婚式のファーストバイトの真似。 チャーハンじゃ絵にならないけど。 啓介は驚きつつも、あーんと大きな口を開きスプーンからチャーハンを頬張る。 それはもう、嬉しそうに。 「ありがとう、司。むちゃくちゃ美味い」 僕も、と啓介がスプーンを取りチャーハンを掬う。 その量がハンパなく多い! 「お前、こんなにひとくちで食えるか!」 「いいじゃん!たくさん食わせてあげるからさー!」 啓介は笑いながらオレにスプーンを差し出した。 おしまい

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