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第2話
「4月だったんですけど、放課後下駄箱のとこで俺がコンタクトを落として困ってる時、先輩が助けてくれたんです」
んお?そんなことあったっけ?
「あの日用事があって、すごい急いでたから、先輩が一緒に探してくれて、すごく助かって」
「ほーーーーん?」
中身ゼロの返事をしながら脳をフル回転させる。
4月?ってことは5ヶ月前?んーーー放課後、コンタクト?下駄箱?ん?お?
「っあーーーーーーー!!!!!」
「わっびっくりした」
思い出した、そういやいた、死ぬほど焦って地べたに這いつくばってコンタクト探してるやつ、いた!!!!
「おま、あん時の!へえー!確かに言われてみればこんなだったような気もするなー!」
興奮した俺がバンバンそいつの背中を叩く。
苦笑しながらそいつが続ける。
「思い出してくれて嬉しいです、俺あの時からせんぱ「キーンコーンカーンコーン」
こいつの声をかき消すように予鈴が鳴る。
「おま、教室戻んなくていーの?」
「あっ、も、戻ります。先輩、あの…よかったら今日…昼…いっしょに……」
元気なくしぼんでいく語尾。
「あー昼?いーよ!屋上でいい?」
「……っはい!」
そいつは今まで見たことないくらい嬉しそうに笑うと、少しお辞儀をして去ろうとする。
「ちょ、まって、お前名前は?」
あ...と小さく呟いた後、俺はそいつの名前をやっと知ることができた。
「楓です。沢野 楓」
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