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 足が直接床に触れた。 「靴は?」 「これよ。入るかしら?」  伊藤が出したヒールは女性用にしては大きめの二十五センチだった。しかし、なんとかの大足の玲は、百七十二センチと平均並みの身長に対し、足は二十八センチもある。 「シンデレラのねーちゃんになった気分」 「無理か」 「困ったわね……」 「どこかのショップにないか?」 「二十八センチなんて、さすがにすぐには見つからないと思うわ」  時間がない。二人は繰り返した。  今から二十分ほど前、玲は周防ホテルの新区画にできた『ジュエリーSHINODA』の店舗事務所に呼び出された。 『玲、緊急事態だ。今すぐ周防の新店舗に来い。すぐだ』  ホテル近くにある拓馬のマンションに同居している玲は、『五分で来い』と言われて、ダッシュで店に向かった。  玲が到着した時には、エレナは既に真っ青だった。薬でごまかしていた盲腸が限界を迎えたらしい。盲腸だって死ぬ時は死ぬ。早く医者に行けと思った。  だが、エレナを心配しつつも、なぜ自分が呼ばれたのか玲にはわからなかった。  答えは伊藤が口にした。エレナの代わりにドレスを着て、拓馬と一緒に周防のリニューアルパーティーに出ろと言うのだ。  エレナのドレスをそのまま着られるモデルをすぐに探すのは難しい。パーティーの開始時刻は十五分後だ。遅刻は許されない。そんな緊急事態の中、伊藤は前々から玲とエレナの背格好が似ていることを思い出したのだと言う。 『玲ちゃんしかいないと思う』  冗談だろう、と思った。だが、拓馬の目がそれを否定していた。 『今すぐ服を脱げ!』

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