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 肩から腕を見せるデザインのアイスブルーのドレスはネックレスをより美しく見せるためのものだ。人々の視線を浴びて、丸みのない身体が不自然に思われないか心配になる。それでも、黙って立っているしかない。とても不安でいたたまれない気分だ。  こんな超一流のハイソなパーティーで、なぜ自分は女装しているのだろう。人に知られたら、とてもこの先、太陽の下を堂々と歩ける気がしない。  玲はなるべく声を出さず、何を聞かれてもにこりと笑ってやりすごした。  途中で思い出して、パーティーバッグに大量に持たされた小さなショップカードを配って歩いた。これは仕事だ、頑張れ、と自分に言い聞かせる。  女性だけでなく、何人もの男性がカードを求めて玲に近付いてくる。 「ああ。なんだ、ショップカードか」 「きみの名刺はないの?」  シャンパンを勧めながら耳元で囁く男たち。玲は遠い目になり、おざなりな仕草でカードを男たちに手渡した。気分的に脱力しながら、腹の中では拳を握る。 (俺は、男なんだよっ!)  言葉にできない憤懣を隠し、顔に笑顔を貼りつけて、腰に回される手をピシリと払い、顔の距離が近すぎる男の足を踏む。このくらいは許されるだろう。 「はあ……」  疲れてため息をつくと、近くに立っていたホテルスタッフが壁際の椅子を勧めてくれた。  エスコートされて腰を下ろしかける。ふわりとドレスの裾が浮かび、すぐに慌てて立ち上がった。 「どうされましたか?」  心配そうに聞かれ、なんでもないと首を振った。曖昧な会釈をしてその場を立ち去る。誰かに気付かれはしなかったかと、ひそかに周囲を見回した。 (だ、大丈夫そうだ……)  どこか足元を隠して休める場所があればいいのに。  玲は開け放たれた扉の先の屋上庭園に出てみた。室内より暗い。それだけでありがたいと感じる。

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