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【2】-5

 照明を浴びた噴水が、秋めいてきた空にきらきらと光の粒を振り撒いていた。  ほのかな照明を頼りに進むと、格子のラティスで囲まれた小さなあずまやがあった。この中なら安全かもしれない。  ベンチシートにはクッションがいくつか置かれ、屋根とラティスがほどよく視界をさえぎっていた。 「はあ……」  ようやく息を吐いて、クッションにもたれた。 (疲れた……。マジで、疲れた……)  時間にすればたいした長さではないのだろう。しかし、とにかく緊張してびくびくして身体にめちゃくちゃ力が入っていたので、百倍増しで疲れていた。今もまだ全身が強張っている気がする。  素足で履いたコンバースも蒸れて不快だった。  ヒールを履かないのなら靴下を脱ぐ必要はなかったのだと今さら気付いたが、もうどうなるものでもないし、どうでもいい。周囲に人の気配がないことを確認し、こっそり脱いだ靴をベンチの下に押し込んだ。  床に足をつけると、ひんやりした石の感触が心地いい。  はあ……、ともう一度深いため息を吐いて、クッションにもたれたまま瞼を閉じた。  料理に手を出す余裕はなく、シャンパンやカクテルを手渡されれば多少は口をつける。飲んだ量は少ないが、身体に酔いがまわっているの。頭がふわふわして、解けない緊張で神経は昂っているのに、夢の中にいるように思考が揺れる。  モデルというのは大変な仕事だなとぼんやり考えた。会場の喧騒がどこか遠くに聞こえる。  肩の力が抜けてゆく。緩んだ意識がひんやりとした秋の空気に溶けてゆく。 (麗しの王子かぁ……)  男の顔を思い浮かべ、確かに魅力的な人だと心の中で頷いた。目が合った瞬間の吸引力がすごかった。思い出すと心臓がきゅっと反応して、またドキドキ騒ぎ始める。

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