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【2】-7

 玲がもがくと周防は力を緩めた。 「ああ。すまない」  口を塞いでいた手が外される。玲は「はあっ」と大きく息を吐き出した。もう一方の手で玲の腕を掴んだまま、周防がじっと玲を見下ろしていた。  心臓がドキドキと騒ぎ出す。  相手は男性だ。わかっているのに、鼓動が速くなる。息を詰めて見上げていると、ふっと小さな笑みが周防の顔に浮かんだ。 「まさか、こんなふうに会えるなんて……。なるほど。美しい……」 「え……?」  言葉の意味が理解できなかった。  玲の頬を周防の指が包んだ。親指がするりと唇を撫でる。 「……っ」  心臓がドレスの中から飛び出しそうになった。 「レイ……」 「え……?」 (名前を……、どうして……?) 「『SHINODA』の社長に、そう呼ばれていたね」  長い指に包まれた顔に囁きが近付く。  次の瞬間……。 「……っ」  玲は目を見開いたまま、唇に触れた感触を受けとめた。  視界を塞ぐように、ありえない近さに『麗しの王子』の顔がある。    慌ててぎゅっと目を閉じるが、何かを考える前に頭の芯がぼうっと霞んでいった。心臓が苦しいほど大きく鼓動を打ち鳴らす。 「ん……」  混乱の中でわずかにみじろぐ。長い腕が、まるで逃がさないというように玲を抱きしめた。

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