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【3】-3

 頷きかけた玲は、造り付けの頑丈な金庫の前に立ち、水色の箱を見下ろした。アイスブルーのエナメルでできた四角い宝石箱だ。『サンドリヨンの微笑』を入れるはずの……。 (あれ……?)  違和感を覚える。 (ネックレス、しまったっけ?)   箱に入れた記憶がなかった。首に手をやるが、そこにネックレスはない。箱の蓋を開けてみる。  白いサテンの上には何もない。 「え……? え? あ、あれ……?」  もう一度自分の首を触ってみる。あちこち触ってみる。けれど、やはりネックレスはない。  顔が引きつってゆく。  身体中の血の気が一気に引く。 (ない……)  箱を見て、首の周囲を両手で何度も触る。 「ない……」  頭の中が真っ白になる。 「ない……、ない……。ない、ない、ないないないない……、ないっ!」  二百数十個の星の塊、都心のマンションまるっと一戸分のダイヤ『サンドリヨンの微笑』が、ないっ! 「う、嘘だ……。落ち着け! 落ち着くんだ……。きっと、先にどこかに外して……」  思い出せ。  自分に言い聞かせた。 「どこに、置いた?」  狭い事務所の中、探せる限りの場所を探した。ホテルのリニューアルに合わせてできた新支店には、まだたいした荷物は置いていない。四つしかない事務机の上もきれいだし、ロッカーの中はほとんど空だ。金庫の前のカウンターにも余分なものは置かれていない。

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