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「これはかなり高価な宝飾品だ。どこの宝石店でも、本店か旗艦店の最上階か奥まった部屋に陳列して、特別な客だけに見せる種類の」  玲は頷いた。  周防の言う通り、『サンドリヨンの微笑』は本店の特別室に展示される予定だ。入室に際して特別な条件は何もないが、店員の案内もなく足を踏み入れた場合、よほど図々しいか、何も感じないほど鈍い神経の持ち主でない限り、五分もいれば、いたたまれない気分になる。その圧はブランドストリートの比ではない。 「高価なものは、その価値に見合う者の中に置いたほうが安全なんだ。億単位のネックレスを盗んでも、それで身を滅ぼすのはバカらしいと、少なくとも、そう考えることができる人間の中に」  盗む、という言葉に引っ掛かる。『サンドリヨンの微笑』を盗んだのは、まさにこの男ではないのか。  玲を見下ろしながら、周防は続けた。 「昨日はいろいろな種類の人間がいた。ああいう場所でモデルを、『レイ』を一人にしたのは、篠田のミスだ」  そして、しれっと続ける。 「拾ったのが僕で、『SHINODA』は助かっただろう?」 「拾った?」  玲は思わず聞き返していた。「盗んだ」の間違いではないのか。何かを摘発する響きが声に混じる。  ニヤリと周防が笑った。 「拾ったのではない、と言いたそうだな」 「う……っ」  玲は視線を逸らした。 (まずい……。あの時のことは、俺は知らないはずなんだった……)  しかし、続けて周防は「実は、拾ったのではない」と自分から言いだした。 「盗ったんだよ。僕が、この手で『レイ』の首からネックレスを外した」

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