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 身体を起こし、首を振った。急いで周防に近づきながら、聞く。 「あの、話って……」 「ん?」 「話がしたいから、一緒に食事をって……」  ああ、と周防は一度頷き、それからなぜか少し黙った。そして、唐突に言った。 「気が変わった」 「はい?」 「玲はもう逃げないだろう。だったら、もっとゆっくり時間をかけて、知り合おうか」  何を言っているのだろう。全く理解できない。 「気が変わったって……、どういうことですか? 知り合うって、いったい何を知り合うんです?」 「決まっているだろう」  にっと周防が口角を上げる。甘い笑みが間近に迫ってきた。 「玲のことを、もっと知りたい」  腰に手を回され、玲は飛び上がった。 「わあっ!」 「なんだ。ビックリするだろう」  ビックリするのは、こっちだ。そっちこそ何だ。「たらし」、発動か? 男女見境なしか? 「は、話がないなら、仕事もあるので、俺……僕は、戻ります」 「食事は? せっかく用意したのに」 「う……」  テーブルに目が行く。  食べものを粗末にすることは、玲のポリシーに反する。サンドイッチは二人分だ。頑張れば一人でも食べきれるかもしれないけれど……。  くうっと、腹の虫が無情に鳴いた。タイミングがよすぎる。裏切り者め。 「食べるだろう?」 「……いただきます」  にこりと笑った周防が椅子を引いてくれた。恐縮しながら腰を下ろす。 「あの、拓馬にネックレスを返さない理由って……」 「うん?」   授業料というのが一つ目の理由なら、別の理由もあるということだ。

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