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【11】-4
身体を起こし、首を振った。急いで周防に近づきながら、聞く。
「あの、話って……」
「ん?」
「話がしたいから、一緒に食事をって……」
ああ、と周防は一度頷き、それからなぜか少し黙った。そして、唐突に言った。
「気が変わった」
「はい?」
「玲はもう逃げないだろう。だったら、もっとゆっくり時間をかけて、知り合おうか」
何を言っているのだろう。全く理解できない。
「気が変わったって……、どういうことですか? 知り合うって、いったい何を知り合うんです?」
「決まっているだろう」
にっと周防が口角を上げる。甘い笑みが間近に迫ってきた。
「玲のことを、もっと知りたい」
腰に手を回され、玲は飛び上がった。
「わあっ!」
「なんだ。ビックリするだろう」
ビックリするのは、こっちだ。そっちこそ何だ。「たらし」、発動か? 男女見境なしか?
「は、話がないなら、仕事もあるので、俺……僕は、戻ります」
「食事は? せっかく用意したのに」
「う……」
テーブルに目が行く。
食べものを粗末にすることは、玲のポリシーに反する。サンドイッチは二人分だ。頑張れば一人でも食べきれるかもしれないけれど……。
くうっと、腹の虫が無情に鳴いた。タイミングがよすぎる。裏切り者め。
「食べるだろう?」
「……いただきます」
にこりと笑った周防が椅子を引いてくれた。恐縮しながら腰を下ろす。
「あの、拓馬にネックレスを返さない理由って……」
「うん?」
授業料というのが一つ目の理由なら、別の理由もあるということだ。
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