49 / 191
【12】-1
「いったい何を考えてるんだ、あの男は!」
拓馬はイライラとリビングを歩き回り、さっきから喚いている。全く同感なので、玲もソファの上で膝を抱えてこくこく頷いた。
「シンデレラに直接返すって、何がしたいんだよ」
本当だ。いったい何がしたんだ。
「玲、パーティーの時、あいつと何かあったのか?」
「えっ」
ドキッとして、勢いで姿勢を正した。
「なななな、なんで?」
「あんなに玲にこだわるのって、なんかへんだろ?」
「た、確かに……。でも、あの人がこだわっているのは、モデルのほうの『レイ』だよな」
「ああ、それはそうだな。昨日の玲は、めちゃくちゃ化けてたからな」
見初められてプロポーズされても無理はないかもな、と真顔で頷きながら、拓馬は隣に腰を下ろした。
「でも、やっぱり、ただ見かけただけで、『サンドリヨンの微笑』を取りに来させてまでもう一度会いたいとか、ふつう言わないだろ? 童話の中のシンデレラだって、一度か二度くらいは王子さまとダンスを踊ったりしただろ? 何か、少しはなかったのか?」
「えーと……」
詳細まで全て言うことははばかられるが、完全に黙っているわけにもいかない雰囲気だ。
「実は、屋上庭園のあずまやで、偶然、会って……」
「屋上庭園? あんなほうまで、何しに行ってたんだ?」
「えっと、ちょっと座りたくて……、靴が……」
言いかけて、「ああっ!」と叫びながら玲はソファから立ち上がった。
「なんだよ、急に。ビックリするだろ」
「靴! 靴を、回収してないっ!」
「靴?」
ともだちにシェアしよう!