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【12】-1

「いったい何を考えてるんだ、あの男は!」  拓馬はイライラとリビングを歩き回り、さっきから喚いている。全く同感なので、玲もソファの上で膝を抱えてこくこく頷いた。 「シンデレラに直接返すって、何がしたいんだよ」  本当だ。いったい何がしたんだ。 「玲、パーティーの時、あいつと何かあったのか?」 「えっ」  ドキッとして、勢いで姿勢を正した。 「なななな、なんで?」 「あんなに玲にこだわるのって、なんかへんだろ?」 「た、確かに……。でも、あの人がこだわっているのは、モデルのほうの『レイ』だよな」 「ああ、それはそうだな。昨日の玲は、めちゃくちゃ化けてたからな」  見初められてプロポーズされても無理はないかもな、と真顔で頷きながら、拓馬は隣に腰を下ろした。 「でも、やっぱり、ただ見かけただけで、『サンドリヨンの微笑』を取りに来させてまでもう一度会いたいとか、ふつう言わないだろ? 童話の中のシンデレラだって、一度か二度くらいは王子さまとダンスを踊ったりしただろ? 何か、少しはなかったのか?」 「えーと……」  詳細まで全て言うことははばかられるが、完全に黙っているわけにもいかない雰囲気だ。 「実は、屋上庭園のあずまやで、偶然、会って……」 「屋上庭園? あんなほうまで、何しに行ってたんだ?」 「えっと、ちょっと座りたくて……、靴が……」  言いかけて、「ああっ!」と叫びながら玲はソファから立ち上がった。 「なんだよ、急に。ビックリするだろ」 「靴! 靴を、回収してないっ!」 「靴?」

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