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【12】-4

 いいよ、と軽く肩を叩かれて、申し訳ない気持ちになった。『サンドリヨンの微笑』をなくしたことは玲の責任だ。 「でも、それなら、どうやって返してもらう?」 「しばらくは、様子見かな。周防が何をしたいのかが、今の段階じゃ全くわからない。相手の出方を待ってから作戦を考えたほうがいいだろ」  うん、と頷いて、そのままうつむいた。  拓馬は立ち上がり、「あんまり、気にするなよ」と言って、もう一度、玲の肩を叩いた。 「いつも、ごめん」 「バーカ」  窓際に立ち、拓馬がスマホを耳に当てる。明るい室内が反射する嵌め殺しのガラス面に、夜の街がぼんやり重なって見えた。  ずっと、拓馬には迷惑をかけてばかりだ。  ため息を吐いて、立ち上がった。  時計を見ると午後八時に近い。昼の間に通いの家政婦が作っておいた夕食を温め直し、テーブルに並べる。  そうしながら、玲はもう一度、「はあっ」と深くため息を吐いた。 (ダメだな……) 「拓馬、食べよう」 「おう」  テーブルに着いて待ちながら、拓馬がいなかったら自分はどうなっていただろうと考える。 『おんなおとこ』  幼い頃のいじめっ子の言葉。なんでスカートを穿かないのだと、しつこく繰り返し言われた。  俺は、男だ。バカにするなと、怒って泣き喚いて、ケンカばかりしていた。  それだけならまだ……。悪寒がして、ブルッと背中を震わせた。 「なんだ? 風邪か?」

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