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【13】-2
玲は何も言えなかった。
なんとかして自分がネックレスを取り返せればいいのだが、「レイ」にならずにそれができると聞かれれば、やはり無理な気がする。
やはり「レイ」になるしかないのかと考え、その決心もつかないまま、気分ばかりが沈んでいった。
ホテル内の店に出勤すると、早番の高山が電話対応に追われていた。
「申し訳ございません。こちらでは、その件についてはお答えしかねます」
丁寧に頭を下げて電話を切ると、すぐにまた次の着信を知らせて電話がが鳴り響く。
「今朝から、ずっとこれよ。同じ電話ばかり……」
「僕が出ます」
受話器を上げると相手はいきなり質問してきた。
『ネックレスのモデルって、誰? どこの事務所の所属?』
「あ……。こちらでは……」
『本社にかけてもつながらないんだよ。何かわかんないの?』
「申し訳ございません」
見えない相手に頭を下げる。高山が両手を上に向けて肩をすくめた。お手上げのポーズ。
「これじゃ、仕事にならないわ……」
高山が言い終わらないうちに再び電話が鳴り、二人は目を見合わせてため息を吐いた。
「だけど、あのモデル、ほんとに誰なのかしら。私が見たポロモーションビデオは、確か金髪のモデルだったわよ。シンデレラって騒がれてる子は、東洋系よね?」
「そうですね……」
高山が首を捻る。
「ちょっと、玲ちゃんに似てたわね」
玲はゴホッと咳き込んだ。
「そ……、そうでしたか?」
全身から冷や汗が噴き出す。
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