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【15】-2
「もうやだ」
周防に抱き寄せられる。同時に、腹の虫がグウッと盛大に音をたてた。
「玲……?」
疲れているし、空腹だし、男には絡まれるし、もう限界だった。
「もういやだ……」
「大丈夫だ、玲。ちょっと、腹が減ってるだけだから……」
周防が玲を抱きしめる。大きな手が包むように頭を撫でた。
葛西が事務所から顔を出した。
「玲ちゃん、閉店準備……」
言いかけて周防に気づき、鋭い声で「あなた、誰?」と聞く。
「うちの崎谷に何をしたの?」
「何もしていない」
「泣いてるじゃない」
「いや。これには事情が……」
「離しなさい」
葛西は力ずくで、周防から玲を引き剥がした。
「待ってくれ。彼を、少し借りても……」
「いいわけないでしょ。そもそも、あなたいったい誰なのよ」
玲を背中に庇いながら葛西が詰問する。周防は軽く頭を下げてから、端整な顔に王子の微笑を浮かべて言った。
「失礼。周防です。周防智之。このホテルの取締役をしている……」
「えっ!」
葛西は飛び上がり、慌てて周防の顔を確認する。
「あああ、すす、周防さん! まあ! ご、ごめんなさい。全然、気づかなくて……」
「いや」
気にしないでくださいと柔和な笑みを浮かべてみせた。
葛西が玲の前から身体をずらす。
「あの、玲ちゃん……、崎谷を連れていくのは構わないんですけど、崎谷は、周防さんに何をしたんですか?」
「何、とは……」
「一昨日も、連れていかれましたよね。何か、不始末があったなら……」
「そういう意味では、何も」
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