66 / 191
【15】-3
ごく個人的な事情なので心配しないでほしいと言い、周防は玲に視線を移した。
「玲、荷物があれば持っておいで」
ごく親しげに言われて戸惑う。しかし、反論するほどのことでもない気がした。その元気もなかった。
ただ、どこに連れていかれるのか気になった。空腹で限界なのだ。
よろよろと事務所に向かいながら振り向くと、にこりと笑って周防は言った。
「食事に行こう」
「え……」
「お腹が空いているんだろう? 美味しいものを、ご馳走するよ」
着替えるという周防の後に従い、一昨日と同じ部屋に上がった。食べものに釣られたようで、少し情けない。
なぜかベッドルームまで連れていかれ、クローゼットで服を脱ぐ周防と会話を続ける。
「なんで、そんな格好してるんですか?」
「いろいろ理由はあるが、割愛する」
いや、そこは割愛するなよ。ガクッとこけていると、スラックスを替えた周防がクローゼットから顔を出した。
「簡単に言うと、ちょっとした内部調査みたいなものをしていた」
半裸の上半身が現れ、心臓が大きく跳ねる。
「古い組織には溜まった膿のようなものがある。それを出し切ってしまいたいと思ってね……」
「膿……?」
「機会があれば、話すよ」
言いながら、ドレスシャツに袖を通す。腕のラインが綺麗だと思った。
強く、それでいて重さを感じさせない引き締まった筋肉が美しい。広い胸と六つに割れた腹筋に見惚れる。
ドキドキしながら男の着替えを見ていると、ふいに周防が眉を寄せた。
「そんな目で見られると、自制心がぐらつく」
「え……」
「悪い子だ」
玲の前まで来てかがみこみ、視線を合わせて顎を掬った。
心臓が跳ねる。
ともだちにシェアしよう!