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【15】-3

 ごく個人的な事情なので心配しないでほしいと言い、周防は玲に視線を移した。 「玲、荷物があれば持っておいで」  ごく親しげに言われて戸惑う。しかし、反論するほどのことでもない気がした。その元気もなかった。  ただ、どこに連れていかれるのか気になった。空腹で限界なのだ。  よろよろと事務所に向かいながら振り向くと、にこりと笑って周防は言った。 「食事に行こう」 「え……」 「お腹が空いているんだろう? 美味しいものを、ご馳走するよ」  着替えるという周防の後に従い、一昨日と同じ部屋に上がった。食べものに釣られたようで、少し情けない。  なぜかベッドルームまで連れていかれ、クローゼットで服を脱ぐ周防と会話を続ける。 「なんで、そんな格好してるんですか?」 「いろいろ理由はあるが、割愛する」  いや、そこは割愛するなよ。ガクッとこけていると、スラックスを替えた周防がクローゼットから顔を出した。 「簡単に言うと、ちょっとした内部調査みたいなものをしていた」  半裸の上半身が現れ、心臓が大きく跳ねる。 「古い組織には溜まった膿のようなものがある。それを出し切ってしまいたいと思ってね……」 「膿……?」 「機会があれば、話すよ」  言いながら、ドレスシャツに袖を通す。腕のラインが綺麗だと思った。  強く、それでいて重さを感じさせない引き締まった筋肉が美しい。広い胸と六つに割れた腹筋に見惚れる。  ドキドキしながら男の着替えを見ていると、ふいに周防が眉を寄せた。 「そんな目で見られると、自制心がぐらつく」 「え……」 「悪い子だ」  玲の前まで来てかがみこみ、視線を合わせて顎を掬った。  心臓が跳ねる。

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