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【16】-1
「ハナヨシ?」
「ああ。うちのホテルにも入ってるだろう? あれの本店に席を用意させた。結構、美味い。和食は好きかな?」
周防自身がハンドルを握る白いメルセデスでホテルを出た。
「ハナヨシって……、あの『華よ志はなよし』?」
「ほかに、あるのか」
「し、知らないけど……。でも……」
『華よ志』と言えば、一人分の最低価格がジュニアスイートの一泊分くらいする高級料亭のはずだ。
「高いんじゃない……?」
「玲、誰を捕まえて言ってるんだ?」
せっかく美味しいものを食べさてやろうと張り切っているのに、おかしなところで水を差すなと窘められる。
「でも……」
「食事の値段など、気にしなくていい」
たいした額ではないと言う。確かにそうなのかもしれない。この男にとっては……。
よく桁のわからない総資産を有する日本屈指の資産家一族の跡取りで、噂では株の配当だけで毎年マンションが何十戸も買えるとか買えないとか聞く。
住む世界が違いすぎるのだ。
「誘ったのは、僕だ。余計な遠慮をして、恥をかかせないでほしい」
「はい……」
幹線道路から静かな住宅街に入り、杉の大和塀を巡らせた広い敷地の建物の前に出る。車寄せにメルセデスを着けると、法被を羽織った壮年の男性が現れ、周防は彼にキーを預けた。
奥から女将が現れて挨拶をする。
「いらっしゃいませ。いつもご贔屓にあずかり、ありがとうございます」
「急に、すまなかったね」
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