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【16】-8

「二人で?」  また、頷く。 「今から、そこに帰るんだな」 「うん」  住所を言わなくてはと思うのだが、頭が上手く働かない。 「帰したくないと言ったら、どうする?」 「帰る……」 「……ネックレスを、返してほしくないか?」  ふっと眼が冴えた。  半分もたれかかっていた周防の身体から身を離し、じっと黒い目を見つめる。 「返してほしい。あれがないと、拓馬が困る……」 「篠田のために、返してほしいのか」 「そうだよ。拓馬に、返さないと……」 「篠田のためなら、なんでもすると?」  大きく頷いた。 「なんでもする。拓馬のためなら……」 「だったら……」  周防が暗い目を向けて言った。 「だったら、今夜……、僕のものになるか?」

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