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【18】-5
秋口なのに、来店する客の服の色が、ブルー系が目立つのだ。中でもアイスブルーや淡い色合いのブルーが目につく。
その色の服でダイヤモンドを選ぶと、どうしても無色のDカラーに近いものが欲しくなる。
GIAの基準であるダイヤモンドの4つのCについては、宝石店で働く者でなくてもある程度知っているかもしれないが、そのうちの一つであるカラーにはDからZまでの評価があり、アルファベットの後ろの文字に行くほど黄色みや茶色みを帯びてくる。
無色透明な石はDだ。
ファンシーカラーと呼ばれる特殊なカラーを除き、無色に近いほど石の価値は上がる。値段も高くなる。
『サンドリヨンの微笑』がマンション一戸分に匹敵するほど高価なのは、石の内包物が少ないことやカットが優れていることとともに、その色がほとんど無色であることも大きい。
イメージカラーのアイスブルーは『サンドリヨンの微笑』の透明さを引き立てるための色だ。
そのイメージカラーを意識した装いの人が多いのだった。その結果……。
(高い石から売れていく……)
この日も『ジュエリーSHINODA・ホテル周防インターナショナル店』の売り上げは記録的な額になった。
嘘のような数字だ。『SHINODA』全体が、同様だという。これまで類のないほどの莫大な利益を『SHINODA』は上げている。
「図らずも……」
疲労と興奮の入り混じる声で、拓馬が呟く。
「とんでもない宣伝効果が、あったわけだな……」
そうだねと、声を出すのも億劫なほどの疲労を抱えて、玲は頷いた。
これと言って見たいテレビ番組もなく、二人でぐったりと、倒れるようにソファにもたれているところだった。
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