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【18】-6

「シンデレラ、あの後どうなったかな……」 「花嫁探しで盛り上がって、良家の令嬢やらミスなんとかやらが、やたらとテレビに出てたけどな……」  億劫そうにタブレットを持ち上げ、拓馬が検索ワードを入れる。 「へえ……」  短い呟きを落とし、目で記事を読み始めた。 「何か、進展があったの?」  あるわけないだろ、という返事を無意識に期待していた。シンデレラは現れない。事態が変わるはずがない。  しかし、拓馬は「うん」と言い、「これを見ろよ」とタブレットを玲に向けてきた。 「どうやら、周防家は智之氏の花嫁を決めたらしいぜ」 「え……?」 「周防家のほうから、デリケートな時期なので、これ以上、シンデレラの件で騒ぐのはやめてほしいって話があったっぽいな」  どこかの記者が聞いたようだと拓馬は続ける。  花嫁は決まった?  だから、騒ぐな……? 「どこの記者が、聞いたの……?」 「そこまではわからない。ただ、一人や二人じゃないらしい。囲み取材か何かの中で出た発言じゃないか。これが本当なら、フィーバー状態のうちの売り上げもあと何日かでピークを過ぎそうだな。在庫の調整を含めて、どうやって展開するのが一番いいか、考えていかないと……」  拓馬の声を聞きながら、玲は頭の中で繰り返していた。  ――周防智之の花嫁が決まった。 (どういう、こと……?)  疲れ切った身体も頭も、ポンコツだ。いくら考えても、その言葉の意味がのみ込めない。 (あの人が、結婚するってこと……?)  ようやく答えにたどり着く。  どうして、と心の奥で誰かが聞いた。答えはわからない。  どうして……?   今朝、周防は、また玲を誘うと言った。  次は、もっと先に進みたいと。 (どうして……?)  周防は、玲を、揶揄(からか)っただけなのだろうか。

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