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【19】-1
テレビの情報がネットのものよりも数日遅れることがよくある。周防家が非公式なコメントで「これ以上騒ぐのはやめてほしい」と要望を出してからも、花嫁探しに関する報道は続いていた。
朝食のトーストをかじりながら、玲は無言で画面を眺めていた。
パーティーの時に撮られたものなのか、周防と歓談する女性たちの姿が映しだされ、何人かはその経歴も含めて詳しく紹介されていた。
「レイ」の姿はない。
一向に進展しないシンデレラ探しよりも、華やかな令嬢や著名人を特集するほうが面白みがあるのだろう。
この中の誰かが周防の心を射止めたのだ。「レイ」ではない誰かが……。
「レイ」になって会いに行く勇気もないくせに、「レイ」を待ち続けない周防の裏切りに腹が立った。
性格が悪くて、何を考えているのかわかりにくくて、意地悪なところがあって、「たらし」で、めんどうくさくて、へんな勘違いをする男。
玲にキスをして、本当に抱く気もないくせに自分のものになれと言う男。
全然、好きじゃない。
「大嫌いだ……」
「玲、大丈夫か?」
拓馬に聞かれて、テレビから視線を移す。
「何が……?」
「おまえ、泣いてるぞ。顔色もめっちゃ悪い……」
「え。泣いてないし……」
「疲れてるんだな」
眉間に皺を寄せた心配顔で頷かれた。
「最近、あんまり眠れてなかったろ。『サンドリヨンの微笑』のこととか、なんだかんだ、気になって」
「あ。そう言えば、ネックレスのこと、何か言ってきた?」
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