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 幸いと言うか、あまり深くツッコまれないので知らんふりをしていると拓馬は言った。  周防がほとんど姿を見せないせいもあるのか、ネックレスがどうなったのか、思ったほど話題にならず追及もされないのだそうだ。  同じように、消えたシンデレラの話題も宙に浮いたままだ。  睫毛を伏せたエレナと『サンドリヨンの微笑』のバストショットが画面に映しだされる。カタログの表紙やポスターと同じ構図の一場面だ。  静止画のように動きはないが、光が変化するたびにダイヤがきらきらと光り輝いた。 「綺麗だな……」  音の少ない静かなCMで、白っぽい画面の中でアイスブルーのドレスと金色の髪が淡く揺れる。青い目が開かれ、無数のダイヤモンドが光を集めて煌めいた。  本当に、とても綺麗だった。 「ロシア人モデルにしては、エレナは小柄なほうだからな。ネックレスとのバランスがちょうどいい」  玲は黙って頷いた。  あの日、パーティーに出たのがエレナだったら、周防がキスをしたのは自分ではなかったのかもしれない。  エレナは綺麗だ。無理やり化けた「レイ」などより、ずっと。  ほかの女性たちも、皆、美しい。  周防が探しているのは「花嫁」なのだ。玲が周防に会う前から、麗しの王子の花嫁探しは続いていた。世間の注目を集めて。  周防は、日本有数の資産家の跡取りで、結婚したい男ナバーワンに君臨する最優良物件で、いくらでも相手を選ぶことができる。  本社からの応援を通して、玲が休むことは伝えると拓馬が請け合った。しばらくの間は臨時シフトで対応することが昨日の段階で決まっている。大きな問題はないだろうという。  「少し休んで、もし余裕があったら、エレナの様子を見に行ってくれると助かる」  ずっとバタバタしていて、まだ一度も見舞いに行っていない、報道関係者が病院に迷惑をかけていないかも気になると、拓馬は言った。

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