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【19】-5
「最終的に、実はシンデレラは男性でしたってオチでも、世間的には案外納得して面白がるのかもしれないなとは思ったんだけど、でも、それじゃあ、玲ちゃんが嫌だろうなぁって思って……」
嫌だ。
玲は正直に頷いた。
「途中から、なぜかセレブの花嫁候補さんたちに興味が移って、正直ほっとしたのよね」
「あ……、確かに」
消えたシンデレラへの興味が失われたはずはないだが、幸か不幸か、話題のフォーカスが微妙に逸れて、花嫁探しそのものに変わっていった。そのおかげで「レイ」の正体もバレずに済んだにかもしれない。
花嫁探しについては、周防という男は、以前は意外にも浮いた噂が少なく、周防の親戚筋や彼の母親が気を揉んでいたらしいと続ける。
「お母さんが?」
「そう。元女優の、原瑤子はらようこさん。すごい美人だったのよ」
結婚が早く、すぐに引退してしまったので世間的にはあまり名前を知られていないが、モデルとしても仕事をしていたこと、そしてもう一つのある理由から、伊藤は彼女をよく覚えているという。
ちなみに玲の母親のことも知っているそうだ。玲に目を着けたのは、もともとは玲の母親のことが頭にあったからだという。
「伊藤さんて、プロだ……」
「まあね。周防氏に関するネタは、適当に読み漁った週刊誌の受け売りも多いけど」
暇だったからね、とエレナと顔を見合わせて笑った。
伊藤によると、周防が『麗しの王子』などと騒がれ始めたのは今年の春ごろからで、それというのも、一向に恋愛に興味を示さなかった彼が、意中の人物の存在をほのめかしたのが発端だったようだという。
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