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【20】-2

 そんな状況の中で、たとえ冗談だったにしても一夜をともにと誘った相手と食事をしたいというのは、いったいどういう了見だろう。 「……不誠実すぎない?」 『不誠実? 誰が?』  誰が、じゃないだろ。  玲はムッとした。  落ち着きを取り戻した周防は、上機嫌に話を続ける。 『調べていた問題の決着も着きそうだし、ちょうどいい機会だから紹介しておきたい人がいるんだ。ホテルの上のレストランで構わないかな?』 「勝手に話を進めないでよ」 『ネックレスも返すよ』  ごく軽い調子で付け加える。 「えっ!」  玲は大きな声を出してしまった。クルマと歩行者が行きかう往来で、隣を歩いていた人がぎょっとして飛び退く。  すみませんと頭を下げて、スマホを握り直した。 「本当に? 本当に、返してくれるの?」 『ああ。来てくれるかな?』 「行く! 行きます!」  玲の返事を聞くと、周防は満足そうにふっと笑った。その小さな吐息が耳に届いた途端、身体の中を甘い衝動が走り抜けた。  周防に触れられた時の記憶がよみがえる。切ないようなもどかしさとかすかな渇きが、端末を通して互いの間に共有される気配があった。  ドキドキと心臓がうるさい。 『玲に、会いたい。待っているよ』  甘い声で囁かれて、息が止まった。 「き、昨日の朝、別れたばかりだよ?」

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