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【23】-6
「いい子だから、出ておいで」
顔が見たいと思った。周防の、トモの顔が見たかった。
細い隙間から差す一条の光に吸い寄せられ、ガランとした部屋を横切る。ドアの前に立つと、周防の声が外から聞こえた。
「開けるよ?」
無言で頷く。
リビングの明かりが四角い枠になって玲の部屋に流れ込んできた。
「玲……」
周防が玲を抱きしめた。
「え……っ、ちょ、な、なんなん……?」
慌てたのは拓馬だ。奇妙に裏返った声で周防にくってかかる。
「おまえ、玲に何を……」
けれど、抵抗しない玲を見て、拓馬はそれきり口を閉ざした。
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