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【24】-5
周防が目を見開く。
「その時の暴力を理由に、玲は退職願を書かされた。支配人ていうのが、周防家の親戚筋らしくて、セクハラのほうは組織ぐるみでもみ消されたよ」
おまえの会社がしたことだと、暗に拓馬は周防を責める。グラスの表面を見つめながら周防が言った。
「原武夫 という男か……」
「確か、そんな名前だったな」
「母の、従姉妹だ」
「へえ……」
親のいない瑤子を引き取り、養女として育てた家の息子だという。
「母には、そういう親戚が腐るほどいる」
父親のわからない私生児だった瑤子は、七歳で母親と死別している。親戚を転々とし、最終的に武夫の両親の家に落ち着いた。
瑤子の美貌に目を付けた里親は、幼い頃からモデルとして瑤子を働かせていた。女優としてデビューさせ、これからという時に、突然結婚するという話になった。
早すぎると、初めは反対したが、相手が周防の御曹司だと知ると一転して態度を変えた。瑤子は十六で女優になり、十八の時に当時の周防家御曹司の妻となっている。身分違いの恋は財産目当てだと批判を受けた。
玉の輿、シンデレラと騒がれながら、周防の一族には無視され、一方では顔も知らない「親戚」が後から後から現れるようになった。
「魑魅魍魎に取りつかれたようなものだ」
周防は言った。周防家というのはそういう家だと囁くように付け加える。
「そのうちの一人が、『ホテル周防インターナショナル』の総支配人だった男、原武夫だ」
「支配人、だった ?」
拓馬が耳ざとく言葉尻を捉える。
「今日、辞表を書かせた」
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