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【24】-6

 この一年半、周防は国内十九か所に散らばるグループのホテルを一つ一つ調べて回り、細かい改善を図ってきた。最後に残ったのが『ホテル周防インターナショナル・TOKYO』だった。周防の本丸、老舗中の老舗である。  二年の歳月をかけてリニューアルを進めていたが、外側を新しくしても中身は古いままだだった。改善点を上げても、ほかの支店より明らかに反応が鈍い。古参のスタッフは数人いるが、中堅が育っていなかった。  離職率が高く、結果として未熟で若いスタッフばかりに頼っていた。基本的なことは身につけているし大きなミスをすることはないが、全てマニュアル通り。それ以上のことに気を配る余裕がないし、改善策にも対応できない。しようとする気概もない。 「僕の知っているホテルマンは、バンケットホールでろくにものを口にしていないショップモデルに何杯もシャンパンを勧めたりしないし、監視の届きにくい屋上庭園に、億の値のつくネックレスを着けた女性を一人で送り出したりもしない」  もっと気を配る。周防の言葉に「その点は、俺も反省している」と拓馬が頷く。 「話が逸れたな」 「それで、スパイごっこをしてたんだ……」  玲が呟くと、周防は軽く頷いた。 「担当役員の目の前で、パワハラやセクハラをしてみせる人間はいないからね」  ポーターの前ではいたということだ。 「武夫には、今日、母からも、これ以上の便宜は図れない旨を告げてもらった。その上で、僕が調べたことを伝えて辞表を書かせたんだが……」  周防の顔が冷たい鬼のように、すっと表情を消す。背中がゾクリとした。 「あの男……、玲にまで……」  辞表など書かせず、殺せばよかったと唸る。せめて懲戒解雇にすべきだったと悔やんでいるが、公私混同はよくない。よくないが、止める気はない。殺人は、やめてほしい。 「ネックレスは、明るく人の多い安全な場所に戻る時に返すつもりでいた。なのに、また玲が、僕の前から消えた」 「だから……」

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