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【25】-2
周防がカードキーをかざすと厚いガラスの扉が開いた。中はこぢんまりしたロビーで、右手にエレベーターが一基、忠実な僕しもべのように待機していた。
キーをかざすと扉が開く。小さな箱には階数ボタンが二つだけで、数字は書いていなかった。
「このエレベーターは、専用の地下駐車場と最上階にしか止まらない」
二十四階建ての『周防レジデンス』は二十二階までが高価な賃貸物件になっている。二十三階はラウンジとフィットネス、二十四階は……。
「最上階って、何があるの?」
「僕の自宅だ」
玲の背中に手を回しながら周防が言った。
「ここに、住んでいるの?」
「ああ」
「でも、全然会ったこと、ないよ?」
自宅を特定されにくくするために、なるべく人と会わないような造りになっているのだと周防が説明した。
「物理的に距離が近くなるほど、顔を合わせにくいように動線が考えられている。同じ建物にいる人間が、一番、顔を合わせないんだ」
驚いて見上げていると、少し強く抱き寄せられた。心臓がきゅんと小さく音を立てた。
「ずっと、こんなに近くにいたなんて……」
エレベーターの扉が開き、広いホールが目の前に現れた。ホールに面してドアが三つあるが、中は一つの部屋なのだろう。フロア全部を使った贅沢な住居である。
さすが、周防の家だと思った。
(でも……)
赤い木の実の汁が染みついた服は水分を吸ってさらにみすぼらしい。顔も汚れている。
玲は首を振った。
「やだ。出直す」
「なぜ」
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