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【25】-3

「こんな格好で、おうちの人に会うの、やだよ」 「玲……」  周防が玲の頬を両手で包んだ。 「玲……、僕は、ここに一人で住んでいる」 「え……」 「誰もいない。そこに、玲を連れてきたんだ」  わかる? と目を合わせて聞いた。 「で……、でも、広すぎない?」 「それは、個人の感覚によると思うが……、と言うより、引っ掛かるポイントはそこなのか?」  とにかく入って、と中央の大きな扉を開ける。ダークブラウンと白を基調にしたシンプルな内装の広い空間に、玲は足を踏み入れた。  背後でドアが閉まる。  急に息が苦しくなった。 「トモ……」 「おいで」  軽く肘を支えるようにして、周防が正面の部屋に玲を導く。よく広さのわからないリビングルームが広がっていた。ほぼ全面がガラス張りの大きな窓は、晴れていれば星を蒔いたような夜景が一望できるのだろう。 「着替えて、先に何か食べるかい?」 「お腹、あんまり空いてない……」  泣きすぎて、胸がいっぱいだった。今もずっと心臓がドキドキしていて、食欲など感じている余裕がない。 「トモ……、あの……」 「うん?」 「あの……」  頬が熱くなる。周防が玲の正面に立った。

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