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【25】-6

「よけいなものはないほうがいい。玲には、こんなに可愛くて素敵なものが付いている」  くりっと小さな突起に触れる。鼻から甘えた声が零れた。 「あ、……」 「感じやすいのもいい」  可愛いよ、と囁いて胸元に唇を寄せた。舌で刺激されると、愉悦が身体中を走り抜ける。   「あの晩、玲に触れて……、僕は、ずっと玲が欲しかったのかもしれないと思った」  子どもだった玲に何かしようとは思わなかった。それは誓って本当だと言い、「だけど」と続ける。  キュランダに向かうゴンドラの中でで玲とキスをしながら、心のどこかで「いけない」と自分を制していた気がする。  薄紅色の飾りに舌を這わせながら、周防はそんなことを言った。  それは、理性や道徳観念が機能していたからにほかならず、裏を返せば、本能はすでに玲に触れたいと望んでいたのだと続ける。 「だから、あと五年遅く出会っていたら、おそらく待てなかった」 「じゅ、十五歳も……、あ……、十分、あ、ヤバイ、よ……」  は、は、と息を乱しながらも、ひと言ツッコむ。「それもそうだ」と周防は笑った。  たとえ本気で愛し合っていても、十歳という年齢差が周防を犯罪者にしてしまう。  年齢、性別、社会的な立場、ありとあらゆる「外側の条件」は、好きだという気持ちとは無関係だ。けれど、その「外側の条件」が簡単には無視できない。  たとえ魔法を使ってでも、シンデレラには馬車とドレスが必要だった。『ホテル周防インターナショナル』のロビーには、その場にふさわしい服装が求められる。  ただの動物だったらとっくに(つがい)になって自由に愛を交わしていたような場合でも、さまざまな社会からの圧力によって邪魔をされる。 「でも、今は、もうヤバくはないだろう?」  玲は頷いた。 「だが、本当は、もう少し段階を踏むべきかもしれない。紳士なら……」

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