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【26】-2

 二度目は、一度目よりも楽に周防を受け入れることができた。  さっきよりも明るくなった室内で、開いた脚の間を行き来する愛しい男を抱きしめていた。  玲を突く周防の動きに合わせて、甘い声が零れ落ちる。 「あ、あ、あ……」 「玲……」  周防の背中の傷に触れる。  左の脇腹寄り、肋骨の下あたりに引きつれた皮膚の歪みがある。綺麗な身体に一ヵ所だけできた大きな傷。 (あの時……)  フロントの前に立って、周防のシャツの裾を握らされていた。絶対にそばを離れてはいけないと言われていた。なのに、玲は離れた。  いつもポケットに入れていた蝶のマグネットを落としたことに気づいて。  それがロビーの反対側、入り口付近の床の上に落ちているのを見つけて。  外の日を浴びて光るマグネットを拾おうと、人の行きかうロビーの中を玲は小走りに横切った。玲が離れたことに気づいた周防が玲の名を呼んだ。その時、男が横から手を伸ばしてきて玲を抱えた。そのまま近くのドアから外に向かって走り始めた。  周防はすぐに追いかけてきた。男に追いつき、身体全部を使ってその男を倒し、玲を逃がし、そして……。  大きな男だった。長身の周防よりもさらに大きな、熊のような大男だった。道路には男のクルマが横付けされていた。ケアンズの駅前からずっと周防と玲の近くを走っていた赤いクルマが。

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