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【26】-5

 高二で拓馬が童貞を捨てた時には、確かにあれこれ下世話な話を聞かされた。しかし、「すごくよかった」だの「心も身体も満たされた」だの、ベタな感想など死んでも言う気はない。  それより、腰が痛い。  おお、とリアクションがあって、自分が声に出して言葉を発していたことに気づく。 「腰が。それで?」  もういいやと自棄(やけ)になって、正直な感想を伝える。 「尻が二つに割れた感じがする」 「なるほど……」  感心したように真顔で頷いた拓馬だが、次の瞬間「尻は元から二つに割れてるよな」と真顔のままで言った。  もういい。本当に、もういい。 「だけど、玲。いつの間にあいつとそういうことになったんだ?」 「話せば長いことになるんだけど……」 「適当に割愛していいぞ」  そうさせてもらう。  ザックリとかいつまんでケアンズでの出会いと記憶喪失の件とパーティーでの実際のあれこれを伝えた。周防の話と合わせれば、賢い拓馬には流れが掴めるはずだ。 「俺、何回も、トモを好きになるんだよ……」  ふんふんと頷きながら、拓馬は黙って聞いている。聞き手として、これ以上ないような完璧な態度だ。 「パーティーで女装してれば急にキスしてくるし、なんか手が早いやつだなって思ったし、役員の立場で人のことを部屋に呼びつけるし、ネックレスを盾に食事の約束を一方的に決めるし、そもそもそのネックレス自体、拓馬には返さないとかって意地悪言うし、拓馬のことを誤解して無理やりえっちなことしようとするし、なのに、その時は、結局してくれなかったし……、なんだか、何考えてるのかわかんなくて……、あんなやつ好きじゃない、嫌いだって、何度も思ったのに……」

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