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【26】-6
周防が婚約すると知った時には、世界が凍り付くような気持になった。何も考えられなくなって、そこへきて昔のことを思い出してしまったので、めちゃくちゃ辛かったと、まだたった一日前の地獄を吐露する。
「なんだか、まだ悲しい」
「いや。今はうまくいったんだろ」
「うん」
「よかったな」
拓馬に二ッと笑われて、もう一度「うん」と頷く。
「うん……。よかった。うん」
それから拓馬は、「ちょっと周防氏と計画していることがあるんだ」と言って、ある話を玲に聞かせた。
「ザッとこういう感じで行こうと思う」
玲は眉を寄せた。
「それで、丸く収まるの?」
「収まるように、うまくやる。適当に土産話を持たせてやれば、たぶんなんとかなるはずだ」
「えー……」
どうだろうかと思うが、拓馬は自信満々である。
「まあ、見てろって」
「うーん……」
「とにかく、俺に、全部任せとけばいいから」
「俺、ドレス着るのやだよ?」
「わかってるよ」
ぐっと親指を立て、白い歯を見せる。かすかな不安を胸に残しながら、玲は拓馬の目を見て頷いた。
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